昨日の引退ネタでのサミ登場をリテークしようかなあと思いながら通勤電車に乗ってたのですが、帰ってから見なおしたらリテークかけずに続きにしちゃってもいいかな、となりました。
なんか書いちゃ消しの創作ノートをネット上でやってるようで恐縮ですが、停滞よりはいいやの精神で更新です。
「じゃあまた」
野菜だらけのヌードルを片付けたサムがひょいと立ち上がったので、ディーンは驚いた。
「おい、どこに行く」
「なんか疑ってるみたいだから一回出直すよ」
悪魔でも化け物でも何でも来いと思っていたが、こういう行動は予想外だ。
「出直すってどこへ」
「電話するから」
サムはこちらの話を聞いているようで聞いていない。
兄貴のナンバー教えて、と携帯を取り出して勝手に両方にナンバーを登録している。
「銀のナイフとか聖水とか用意しておくといいよ」
「……」
もちろんそうするが、わざわざ言われると悪魔とシェイプシフター以外のものかとつい考えてしまうのは元ハンターの性だ。
「別に出直すことないぞ。俺のとこに来ればいい」
そして怪しいと思いながらつい引き留めてしまうのは兄の性だ。だってサムだ。
だがサムはあまり見たことがない表情でにやっと笑うと、出ていってしまった。ディーンも勘定をテーブルに投げだして後を追うが、サムの姿はすでに人通りに紛れている。
「なんだよ、彼氏か?」
「じゃねえのか」
店の中では勝手な会話が交わされている。並んで歩いているだけでゲイに間違われる妙な感覚も久しぶりだった。
次の週末、ディーンは聖水と銀のナイフと木の杭などを用意した。
サムが登録した番号にかけてみたが留守電ばかりで、ディーンは結局メッセージを入れなかった。
・・・
しくじった。
路地のゴミ箱に凭れながら、ディーンは呻いた。
自分が引退したところで、魔物の側に関係ないのは当たり前で、まして知性のある化け物の恨みを買っていれば恰好の獲物になる。分かっていたのにサムに会ってからもまだ対策を怠っていた。
ヴァンパイアに噛み裂かれた首元からは血が流れ続けている。
だがもっと恐ろしいのは地面に倒れ込んだあと顔に垂らされた液体だ。ヴァンパイアの血かもしれないと思いついて死に物狂いで顔を横に向けてはみたが、喉の奥に何かが一筋流れ落ちていく。
冗談じゃねえ。
吐きださなければと思うが、そもそも身体が動かない。地面で芋虫のようにもがくディーンを見下ろして化け物は嘲笑い、何とかうつ伏せになりかけたディーンを足でひっくり返した。
仰向けに転がったディーンは、喉に感じていた液体が既にそこにないことに絶望する。
畜生。
サムを失ってから全てがぼんやりしていた世界で、久しぶりに激しい感情だった。
とどめを刺さずに立ち去っていく化け物の足音を感じながら、ディーンの視界は暗転した。
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あ、やだまた肝心なシーンに行きつかないで時間切れが…
[13回]
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