ディーンは誰にも新しい電話番号を教えていなかったが、ハンターたちから時たま連絡が入っても驚きはしなかった。人探しが得意な奴は結構いるものだ。
そんなときディーンはカード履歴やGPSなどを追って捜し物をするのが得意だった弟を思い出して息苦しくなる。
ハンターの用件は大抵手を貸してくれという頼み事だったが、ディーンは相手にしなかった。
だが面白いもので、そんな風に暮らしていても、次第に目につく顔というのはできてくる。
例えば少し変わり者の神父だったり、お守りを作るのがうまい店の女店主だったり、昼間からふらふらして何をしているのかいまいちわからない男だったりだ。
最初ディーンはそういう住民と関わりができそうになるたびにその町を出ていた。
だがどういうわけか場所を変えてもしばらくすると似たような人間が多かれ少なかれ見えてくる。
どういうことだろう、としばらくディーンは考え、結論として自分のような偽造IDしか使えない輩が部屋と仕事にありつける場所は、そうした連中もいつきやすいのだろうと思うようになった。
偽造カードをなるべく使うまいと思うと、そうそう気軽に転居もできない。
同業者は匂いでわかるのか、ディーンが元ハンターであることもなんとなく察せられているようだったが、顔なじみのハンター達と違って特に構われることもなかった。
ある時ディーンはダイナーに居るとき自分を指して、
「ああいう奴らはそっとしておいたほうがいい」
と言われているのを聞いた。その時自分と一括にされていたのは退役軍人と元警察官だったので、なるほどそんな風に見えるものかとなんだかおかしくなった。
ふと自分の前の皿を見下ろす。のっているのは本日のスペシャルのベーコンとポークチョップとフレンチフライだ。
『身体に悪いぞ、野菜を食えよ』
懐かしい声が耳の中に蘇る。
「うるせーよサミー」
誰にも聞こえないように小さな声で呟き、ベーコンにフォークを突き刺した。
・・・・・・・・・
なかなか進まない。
狩もしないけど一般人になじみもせずに、でも生きてる兄貴。
いや、サミもそのうちきっと出るはず