またも間が空きましたー!
年末は色々ありますねええええ。
しかしクリスマスだし一つくらい更新しよう。
先日書きかけてとまったふーふSD(久しぶりだなあ)をクリスマス版にします。
「冷えるな。ヒーター壊れてるんじゃねえのか」
「隙間風だろ」
「酒があればなあ」
クリスマスだというのにツリーやターキーどころか普通の食料も無い。
「随分とおせえな」
「先に一杯やって帰る気じゃないだろうな」
果たして日付が変わる前に情報と食料は届けられるのか、夜が更けていくにつれて、室内にはざわざわした空気が広がりつつあった。
冗談半分の愚痴を聞き流しながら、ディーンは黙々と周辺の地図を睨んでいた。
「おい、なにか気になることがあるのか」
「いや、何となくだ」
「ほんとかよ」
「俺は最近地図マニアなんだ」
覗き込んできたハンターを受け流し、地図に視線を戻す。
実際のところ地図に何か問題があるわけではなかった。気になっているのは調査班と一緒に出かけているサムだ。
もう慣れきってしまって忘れていたのだが、今のサムは自分をディーンの配偶者と思い込む「夫」状態だ。
思い込み以外はごく普通なので、さっきまですっかり忘れていた。
だが、考えてみると今日はクリスマスだ。
そして「夫」状態のサムはちょっと引くほどイベント好きだ。
そもそも狩の真っ最中だし、他のハンターの目もあるから、何もないと信じたいのだが、もう少し早く思いだしていたらディーンは絶対にこんなタイミングで集合場所に戻らなかった。
調査と買いだしで街のクリスマスデコレーションを見たサムが、何を考えて何を買い込んでくるか。
(大丈夫だ、きっと大丈夫だ大丈夫だ)
地図を睨みつけながらディーンが思い悩んでいるのは、魔物の奇襲ではなくて実に緊張感がなく、それだけに実現したら後々までハンター達の笑い話になりそうな危険だった。
「お、やっと戻ってきたぞ」
扉の開く音にゴロゴロしていた待機組が立ち上がった。
「やっと戻ったか」
「どうだった」
口々に尋ねるハンター達に、固い表情で応えていたサムが、近づくディーンを見つけてぱっと笑顔になる。
「ディーン!いつ戻ってきたの?」
「昨日だ。早く片が付いたんでな」
天使が絡む案件だったので、懇意にしている天使がいるディーンは少人数の別行動をしていた。
別行動はそう珍しくもないが、やはり無事な姿を確認するとほっとする。そしてサムが何も妙なものを買い込んでいないのにもホッとした。そーか、俺が帰っているの自体が想定外だったか。よしよし。
だが。
満面の笑みで近づいてくる弟を見て、ふと嫌な予感に襲われる。ほっとして頷き合い、それで終わりでよいのだがサムは近づきながら両手を不吉に開きかけている。
果たして、
「無事でよかった」
「お、おう」
熱烈なハグにディーンは顔が引きつる。
「お前もな」
腕を回して背中をぽんと軽く叩く。耳元に湿った感触とリップ音がしたが一瞬だったしきっと気のせいだ。
誰も気にしていないだろうなと周囲を見回すと、残念なことに部屋の中にいる全ハンターの視線がこちらに向いていた。
ディーンはハグを振り解きたい衝動と、見てんじゃねえと周囲に怒鳴り散らしたい衝動をまとめて噛み潰した。
そして強いて意識を狩に戻す。
「で、どうだったんだ」
「もうちょっと補給させて」
(なにをだ)
即座に思ったが尋ねたりはしない。恥の上塗りだ。
「顔が見れて嬉しいよ。クリスマスは一人だと思ってたから」
尋ねないのにサムはディーンをぎゅうぎゅうと抱きしめたままでいらんことを呟く。
それから不意に室内の状況に気付いたようで、少し腕を緩めて周囲にちらりと目を向けた。
「“兄貴”の顔をね」
「……」
口を開けば開くほどドツボなこの状況をどうしたらいいだろう。
ディーンが黙ってサムから腕一本分離れると、二人から視線を逸らせて食料接種を始めていたハンター達が、
「まあ、こっちのことは気にすんなよ」
「お前ら、隣の部屋に移るか?」
「ほれ、食い物」
などと取り分けようとする。
そしてまた間に受けてサムが、
「どうするディーン?」
などと訊いてくるので、ディーンは様々な突っ込みを再び噛み潰し、黙ってアホなことを言う弟の頭を拳で殴った。
あんまりイチャイチャしないで終わっちゃった。
皆様メリークリスマース