飛ぶ日があっても停滞よりは続いてるからましですね。
みじん切りのような小ネタも見てくださってありがとうございます!
二日ほど前までにお言葉下さった方にお礼をしております。お礼したのにお知らせを忘れてた…
他にも書きたいネタは浮かびつつありますが、SDと言いつつ状況説明ばかりのギャルソンネタをどうにかしよう…
Hよこさん、風紀の乱れを見守っていてね!←私信
仕事は楽な方がいいが、暇すぎても辛いものだ。
客がさっぱり来ないというのはベニーの店では余りなかったが、天気の悪い日などはやはり客足は落ちる。そんなときは掃除をしたり在庫のチェックをしたりグラス類を磨いたりと、何かしら仕事を見つけるようにしてはいたが、30分も担当テーブルが空いていると、いつもサムは時間が惜しくてそわそわしてしまう。
店長のベニーは顔の割に鷹揚だが、さすがに仕事中に本を読むわけにもいかない。
だがしかし。いまは暇な時間が苦ではなかった。
「向こうに新しくできた店、行ったか?」
「いや。看板見たけど無茶苦茶高かったし」
「運が良いぞ、ぜったいやめとけ。こないだデートで行きたいってねだられたら、すっくねえランチで何十ドルも飛んだ」
「ご愁傷さま。でも彼女は喜んだんじゃないの」
「コーヒーがまずいってよ」
「悲惨だね」
「だろ?」
新しく店に入ったディーンは、出身がサムと同じカンザスだということが分かり、何となくよく話すようになっている。
サムのような学生バイトとは違いほぼ毎日シフトに入っているディーンは、元々要領も良い方なのだろう、サム達が教えることは早々になくなり、むしろ店の中のことはサムよりも把握してるような感じになっていた。店長からこの間のようにキッチン内の仕事を振られることもあるのだろう。しかし他のバイトにちょっと話を向けてみても、それほど気に留めているものはなく、サムは自分が神経質なのかもしれないと思ってみたりもする。
「よう」
「おはよう」
午前番のサムが店に着くと、モーニングから勤務しているらしいディーンが目を丸くする。
「随分早くねえか?」
「うん、半端に早く着いちゃった」
朝の空気が気持ちよくて、少し回り道でサイクリングでもと思ったのだが、気が付いたら週間で真っ直ぐ来てしまったのだ。
「まだ15分以上あるし、コーヒー一杯飲もうかな。いい?店長」
カウンターの奥でなにかしているベニーに声をかけると、「勤務前なんだから好きにしろ」と声が返ってくる。
「ちゃんと払うから」
と背中に声をかけていると、ディーンが「一杯くらい、いいんじゃねえの?」と呟いた。
「そういうわけにはいかないだろ」
と見返すと、碧の目が面白がっているようにニヤリと笑う。
「へえ、じゃあまあ『いらっしゃいませ』だな。ご注文は?」
急に澄ました顔で接客されるのがおかしくて、
「お勧めは何かな」
と訊いてみる。
「朝食なら焼きたてのベーグルサンド。もっとしっかり食いたいなら、朝っぱらからパスタって手もあるぞ。食う前にお前仕事時間だけど」
からかわれているのが良く分かるので遠慮なく返す。
「飲み物だってば」
「なら、お勧めはオリジナルブレンドだな」
「おすすめポイントは?」
「もうポットに入ってるから俺が楽だ」
「ひどいな」
サムの苦情をものともせず(ついでに注文の確定もあやふやに)コーヒーが注がれてカップが置かれる。
「うまいね」
「だろう」
店長の腕を揃ってほめていたのだが、
「おい、そろそろ準備しろ」
と当の本人の声に止められる。20分以上あった余裕時間があっという間だった。
いちゃいちゃまでいかないね
[16回]
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