今日はソファに転がる前に更新しようと決めて有言実行です。
切れ切れ小ネタでもないよりまし、が合言葉。
「サム、悪いが5番と6番を手伝ってくれ」
カウンターにカップ類を下げに来たら急にそう言われ、サムは驚いて目を丸くした。
「いいけど、彼は?」
そのテーブルは例の新入りの担当だ。ウェイターの収入の大半は客からのチップで、つまり持ち場のテーブル数は収入に直結する。
「グループ客の注文が一気に入って、他のテーブルに手が回ってない」
「ああ、了解」
後から入った客のオーダーがなかなか取りに行けなくて待たせているらしい。サムの担当テーブルの客は注文を出し終わったところで、しばらくは余裕がありそうだった。
「5,6番入るよ」
通りすがりに声をかける。金が絡むと後から揉めるのは御免だったからだ。
幸い相手も承知のことらしく、
「悪い、頼む」
と頷いてきた。
「お待たせしました」
と注文を取りに行くと、
「やっと来た」
とイライラした声で言われる。なるほど、オーナーは苦情になる際どいところを見て取ったらしい。
幸い注文はシンプルで、さっさとオーダーを通して注文を運んでいくと客はあっさり機嫌を直してくれた。
ちらりと同僚の方を見やると、追加オーダーや訂正があるらしく、随分と忙しそうにしている。あちらが落ち着くまでは今のテーブルもサムが見ておいた方がよさそうだ。当然その間のチップはサムが受け取ることになるが。
「さっきは悪いな、助かった」
やっと客がはけ、食器を盆に下げながらダークブロンドの新入りが笑って礼を言った。
「いや、いいけど」
どうやら後で絡まれる心配はなさそうなので、サムも安心して笑い返す。
「ホイップがどうのソイミルクがどーの、そんな細かいもんあるかよと思ったら、あったんだな」
店長の面からいって、コーヒー一本かと思ってたのに。
ブツブツ言う内容が、実のところサムもそう思っていたことだったりしたので、思わず頷いてしまうと、相手がニカリと笑った。
(あ、意外と感じがいい)
短いダークブロンドの新入りは、いかにもモデルかなにかしていそうな顔立ちで、正直サムは少し苦手意識を持っていたのだが、最初の印象よりずっと感じが良い。
「僕はサム」
そう言って手を出す。
「ディーンだ」
お互いテーブルにちらちらと目をやりながら軽く握手を交わした。
その時二人はもちろんこの先お互いがどんな存在になるかなど、知るわけもなかったのだ。
・・・・
なーんて感じで。
そのうちどこかの片隅でひそひそやったりするようになるんですね。店長が風紀の乱れを嘆きますね。
[13回]
PR