思いたったが吉日ですね。
日付も変わったしどうせもうこれから仕事はできないし、更新しちゃえーーー!
このような状態ですのにぱちぱちやお言葉ありがとうございます!!!!
お礼だけでも近日中にまた参りますーーー
幽霊、怪物、魔女もどきに半獣、呪いのアイテム。まさに手当たり次第だ。
リリスの手がかりが無い今なら別にいい、とサムは思う。狩があった方が二人でいても気づまりでないのは確かだったし、地獄での話を聞いた後だと、ディーンが人助けをすることで自分を肯定したがるのも無理ないと思えた。
そして単純な幽霊相手ならディーンを守り損ねることもまずない。
『今日は帰らない』
心臓の無い死体の件で狩りをした後、あやうく助けた被害者を送って行ったディーンからテキストが送られてきたのは真夜中近くだ。
『了解』
簡単に返して、帰らないならそろそろ寝るかと立ち上がる。
自分でも意外だったが、サムの中に嫉妬めいた気持ちはほとんど起きなかった。
助けられた被害者に感謝されて、照れくさそうに笑っていたディーンの様子を思いだすと、むしろ悪くない気分になる。
傷ついて失くした部分もあるが、昔のままのディーンもいる。サムがその丸ごとを守れればいい。
「まるで保護者みたいな顔してるわね」
扉が開いた気配はないのに、いつの間にか背後にほっそりした影が立ってる。サムは少し疎ましく思いながら振り返った。
今は小柄な女性の身体を使っているルビーは、眉をひそめてサムを見る。
「力が落ちてきてる。補充した方がいいわ」
「そうだな」
サムはあっさり頷く。
ディーンに知られ罵られた当初は、悪魔の血を飲み続けることに迷いもあったが、今はその必然性を感じている。
もっともっと圧倒的な力が必要だった。その力でリリスを殺し、ディーンを守るのだから。
アラステアという悪魔が現れた時、ディーンははっきりと怯えていた。
単に強力な敵と言うのとも違う。
そしてディーンの表情はあの悪魔と対峙するたびに暗さを増していく。
それも不思議はない。
ディーンは地獄にいる間、あの悪魔に拷問され、屈した。
そして話をそのまま信じるのであれば、地獄で悪魔の僕として人間を傷つける側になった。
責め苛まれている期間も合わせれば、あの悪魔がディーンを取りこんでいた時間は、サムと地上で過ごした時間よりも長い。
考えを進めていくにつれ、どろどろとした腹立ちが淀みのようにたまっていくのが分かる。
傲慢な天使たちでさえ、アラステアに力で叶わなかった。
だからサムには力がいる。
用意していたものを放ると、ルビーが顔をしかめた。
「なにこれ」
「好きな方を使ってくれ」
渡したのは採血用の注射器と血液保存用のパックだ。悪魔の血の必要性は感じていたが、その腕に吸い付く気分ではなかった。
「随分と変わり身が露骨じゃない?」
「用は足りるだろ」
「中身を入れ替える余地があったら、私が別のものを飲ませるとは思わないの」
ルビーが絡むのは嫉妬ではないのは分かっている。
人間に肩入れする変わり者だろうとなんだろうと、人の心を不快に突くのは悪魔の習性だ。
サムはため息をつくと注射器を手に取り、ルビーの腕を掴み寄せると血管を見もせず適当に針を刺して強引に血を吸い上げた。
「乱暴ね」
「良く言われる」
「まさか本気でデキちゃうとは思わなかったわ」
わざとらしいため息は無視する。見た目は魅力的な若い女性でも、実際のところは悪魔が死体に入りこんで動かしているだけだ。
「これでいつもの一回分に足りるか?」
軽口も無視して、8割ほど血の採れたシリンジを見せる。50CC程度だろうか。
「知らないわよ」
顔をしかめるのでその場で針を外し、口に流し込んだ。飲み込むと少し首をかしげる。
「…もう少し要るみたいだ」
そう言って注射器を出すと、ルビーはため息をつきながらもう一度腕を差し出した。サムは遠慮なくその腕に針を突きたてる。悪魔相手には消毒の必要も無いから簡単だ。もっと血がいる。それは感覚でわかる。
「私と寝たくなくなったのは愛しいお兄ちゃんへの操建て?」
「…」
少し違う、とサムは思う。
孤独のあまり何かに縋る必要がなくなっただけのことだ。
そんなことをディーンが求めていないことはわかっていたが、サムはそうしたかった。
「早く行けよ。ディーンが戻ってくる」
「今日は泊まりでしょ」
「帰るかもしれない」
どろりとした血を飲み下すと、頭の中核がクリアになり、充電するように力が手足に広がっていくのが分かる。
ディーンを守り、リリスを殺す。
「重症ね」
呆れたような声を残し、ルビーの姿が消えた。
悪魔の血の力なのか、眠気はきれいに消えている。
早くディーンが帰って来ればいい、立ち上がりながらサムは何となく考えた。