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海外ドラマの超常現象の兄弟(SD)を中心に、頭の中にほわほわ浮かぶ楽しいことをつぶやく日記です。 二次創作、BL等に流れることも多々ありますので嫌いな方は閲覧をご遠慮くださいませ。
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穴埋め過去ペーパー(淡々同居で獣耳)

わあーん。
エイプリルフールもとっくにすぎてもう四月も上旬が終わろうというのにさっぱりぴったりでございます。いかん。

更新したいのに諸々バタバタしております。キー悔しい。3月は見たい映画もいっぱいあったのに大分逃してしまいました…

今日ももう終わっちゃいそうなので非常食料的に過去ペーパーです。
前にも上げてたらすみません。もはや自分でも確認できない…

このとき何を考えていたのか「淡々兄弟」で「獣耳」です。古典的SD本でつっかかってイロモノ書きたかったんだな…あ、30日チャレンジこれでいいじゃん。







引退したディーンがサムの部屋に暮らすようになってしばらく経つが、相変わらず互いの生活には不干渉だった。
ディーンがたまの狩りで怪我をしようとも、サムが訴訟でしくじって電話攻撃を受けていようとも、相手の仕事に口は出さない。そもそも畑が違いすぎて何もできないし、結局のところ自分の仕事の面倒は、自分でみられたからだ。
だが、その不文律をちょっと脇におかざるを得ない事態が起こった。

「…なにそれ」
「気にするな」
そうは言われても気にならないわけがない。げっそりぐったり疲れて帰宅した若手弁護士であってもだ。なぜならばテーブルに座ってデリをつつくディーンの頭には、人間のものにかわって白黒毛の生えた三角の耳がついている。そっと椅子の下をのぞくとふさふさとした尻尾も見えてサムはわあ、と声を上げ、次いで思わず呟いた。
「…アラスカンマラミュート?」
「ああ?」
「いやなんでも」
つい判定心が燃えてしまった。子供の頃犬が無性に飼いたくて、図書館で図鑑を読みふけっていたのを思い出してしまう。
「狩りだったの?」
「いや」
しかし通常の生活で、耳が犬に変わることはほとんどあり得ない。疑いの思いが顔に出たのだろう。ディーンが少し決まり悪げに続ける。
「仕事だ。今日片付けを頼まれた家に妙なグッズだらけの部屋があったから、そこで触ったんだろう」
「何でそんな部屋に無防備に入ったのさ」
つい説教がましい口調になると、ディーンの耳が不満そうにピクピク動く。ディーンの今の職場は何でも屋だから、オーナーが引き受けた現場に下調べも無く行ったのだろう。
「仕方ねえだろ。住人が死んだとかならともかく、本人ピンピンしてて単なる引っ越しだぞ」
アイテム部屋を見つけた後は、他のやつらとは分散したから、多分大丈夫だと思うけどな。
ぶつぶつ言うしかめ面のわりに、少しばかり耳が倒れてきたから心配になっているのかもしれない。
「ま、ボビーに聞いてみたら、ほっときゃ二三日で戻るらしいからいいさ。『風邪』でしばらく休む」
そう言っている間に、耳がピンと立ってきた。本当に気を取り直しているらしい。顔は一貫してやや不機嫌なだけなので、内心の起伏だとしたらなかなか面白い。
「まあ、ならいいけどね」
サムもほっとして呟き、突っ立ったままぶら下げていた荷物をテーブルに置き、買い込んできた食事を出した。今日はかなりくさくさするとこがあり、景気付けに張り込んだので質も量も豪華だ。
正直今の犬耳に驚いて、くさくさ気分も既にかなり薄れてしまった。所詮一般市民としての身に降りかかる不幸は、金銭的損失や人からの評価程度だ。呪いのアイテムで身体が腐ったり、グールに生きながら内蔵を食われる危険を承知で廃屋に乗り込んでいた昔を考えたら温い。温水プール並だ。
「まだ食べられたら付き合ってよ」
みればすぐわかるが、なんとなく二人前買ってきたのだ。
「すげえな」
視線を上げると、ディーンの耳がピンと立ち、しっぽが猛烈な勢いで振られているので思わず顔がほころんでしまった。ディーンの顔は平静でなので余計におかしい。
「でしょ」
いきなり興奮がこみ上げてきて、声がひっくりそうな危険を感じる。ちょっと着替えてくるよ、とリビングを出る。足早に自室に入り扉を閉めたとたんサムは無言でベッドに突進し、声が漏れないように枕を押し当てながら握りこぶしを何度もボスンボスンとベッドに振り下ろした。
そう、そうだった、僕は犬が大好きだったんだ。大型犬なんか特に好きだ。なんで忘れてたんだろう。まさかこの年になって自宅でアニマルセラピーが体感できるとは。とは。
まさか兄相手にはできないので堪えたが、大型犬の頭の代わりに枕をわしゃわしゃとなで回し、もうひとしきりバンバンとクッションを叩いて興奮をおさめてから部屋を出る。
「しまった」
部屋を出た瞬間に、肝心の着替えをしていないことに気づいて無言でUターンした。


「…で、いきなり失敗を僕のせいにしてくるから、たまんないよ」
「ふうん」
豪華なデリを突きながらぶつぶつ続くサムの愚痴を、ディーンは一応夕食の代分、と言わんばかりに聞いている。
見るからに他人事モードで聞き流されているのだが、その方がサムも却って気が楽だった。
話の内容に関係なく、パタパタと楽し気なリズムで動いている尻尾や、包みのなかにパイを見つけてピンと立った後、あまり好きでないキドニーパイと気づいた瞬間耳が垂れる動きのほうが次第に気になってくる。
(ああ、やっぱり大型犬っていいなあ)


大量の食料もあらかた消費された頃、サムの肘が当たって、缶ビールがカーペットに落ちた。
「あ、やっちゃった」
コロコロと転がる缶を拾いながら、しばらくは開けられないな、と思ったサムは視界に入ったディーンの耳がピコピコと興奮したように動いているのをみて固まった。
そうっとディーンを見上げると、今度は自覚があるのか、明らかにむっつりとした顔で見つめ返される。
サムはごくりと唾をのみ、そうっと尋ねた。
「…遊ぶ?」
ボールはないが、貰い物で台座から取り外せるスノーボウルがある。リビングの脇のボードにおいてあるので、これまたそうっと手に持つと差し出して、どうする?と手の中で動かして見せた。
ディーンの顔は文字通り苦虫を噛み潰したようになるが、尻尾はきらきらと光るスノーボウルをみた瞬間、早く早くと言わんばかりにパタパタしている。
 ということは今はディーンの感情とは別に、犬っぽい本能のようなものが発生しているということなのだろうか。
「……遊んでやってもいいが、この忌々しいもんが取れたら、お前が寝てるところ狙って油性マジックで髭かいてやるぞ」
「ちぇ」
やるといったらディーンはやるだろう。しかも多分平日の出勤前を狙う。洒落にならない犯罪予告をされて諦めるが、ここまでで十分アニマルセラピーの効果ありで、今日の持ち帰りストレスはあらかた消えたので良しとした。


「ディーン、犬飼いたいんだけどどう思う?」
 数日後、パソコンを熱心に覗き込むサムから急に尋ねられてディーンは眉間に皺を寄せた。
「散歩も飯も自分でやるんならいいんじゃねえか?」
「ディーンは…」
「俺は動物に興味ねえんだよ」
 素っ気なく返されてちぇ、と口を尖らせる。
「そもそもこの部屋、動物飼えるのかよ」
 そう言われて、「あ」とサムは目を見開いた。
「オーナーから訴えられて勝てるのか弁護士さん」
 うぬぬぬぬ、と詰まったサムが反撃を探して口を開くが、『風邪』がやっと治って出勤するディーンは反論を待たずに行ってしまう。


「僕は建設的に考えることにしたんだ」
 数日後、またくさくさすることがあったらしいサムが、何杯目かのウィスキーを干した後、すっくと立ち上がって宣言した。
「へー」
 対するディーンはソファに寝転がって雑誌をめくっている。明らかに聞いていないのだが、酔ったサムは気にしない。


「僕は絶対に頑張ってあの上司の酷使を乗り越え給料を上げる!そして戸建ての家を買う!そして大型犬を飼い、毎日毎晩遊べる生活を送るんだ」
「へー」
「ディーンはどの辺りの地区に住みたい?」
「別にどこでもいいぜ。人里離れたとこでなけりゃ」
「よし!」
 宣言が終わるとサムは満足したように寝室に行ってしまう。ソファに転がっていたディーンは雑誌の下からその背を見送り、一戸建てを構えてもまだ兄を住ませる気でいる言葉に少し笑った。


おわる



 


 



 


 


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