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海外ドラマの超常現象の兄弟(SD)を中心に、頭の中にほわほわ浮かぶ楽しいことをつぶやく日記です。 二次創作、BL等に流れることも多々ありますので嫌いな方は閲覧をご遠慮くださいませ。
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レッツクッキング!(静かな生活)

うわーんまたもご無沙汰しております。月刊ブログだこりゃ。
拍手やメールでいただいたお言葉を死ぬほど読み返しているくせにお礼が遅れていて申し訳ありません。でも構って下さる方がいらっしゃるのでまだ廃墟にはしません絶対に!

相変わらず年度末で胃がキリキリしておりますが、昨日は休日だったのでちょっと冷凍のパイシートを使ったりいたしておりました。
珍しいこと、新しいことをすると、ついネタを考えるのはオタクの性です(多分)

パイ→兄貴が好き→サミが作ったらすごい→サミが兄貴のために作ったりしたらもっとすごい

という謎のシナプス連結により、ちょっと小ネタです。

どの設定のサミが作ったっていいようなもんなんですが、ロボ社長やアラブやCLASSICALのサミは作らない。
一番作りそうなのが静かな生活設定(引退後くっついた兄弟)だったのでその設定で。







サムがその日曜日の朝、料理をしようと思ったのにはいくつか理由がある。
一つには食事当番だったから、
一つにはこの辺りで買える既製品が、どうにも質が悪く添加物てんこ盛りで食べる気がしないから、
そしてもう一つは週の半ばにどうでもいいことで喧嘩をして以来、ろくに口をきいていないディーンとの間を何とかしたかったからだ。

二人の関係がただの兄弟から変わっても、やはり喧嘩は発生する。
考えてみれば当たり前だ。世の恋人たちも喧嘩をするし、夫婦喧嘩もそこら中にある。さすがにもう「ベッドの上で物を食うな」といったネタではなかったが、相変わらず傍から見ればどうでもいいようなことが引き金になっていた。


身体を交わすようになっても、二人の関係は大して変わらなかったが、こういうときの心境は変わった、とサムは思う。
昔のサムは喧嘩をした時、自分から折れようなどとさらさら思わなかった。
大体において、より腹を立てているのは自分の方だったし、勝手で高圧的なのはディーンの方だった。
そして何よりも二人がぶつかった時、狩が絡むこと以外では、最後にはディーンが譲るのがお決まりだったのだ。
今になってみるとそれは、「家族を捨てて家を出る」という前科持ちのサムが、また同じように狩りを放棄して去ることをディーンが恐れていたからだったのだろう。振り返ればディーンは常に不安だったのだと思う。そして自分は長年そこに存分に付け込んできた。


だが二人の狩が終わり、サムがディーンをパートナーとして求めたことで、ディーンは安心したのかもしれない。
それは何となくサムの中をこそばゆく温めることでもあったが、困ったことに今のように喧嘩をした時の優位を失くすことでもあった。
つまりはサムの方が先に相手に機嫌を直してほしくてソワソワしてしまうのだ。
かといって全面的に謝るつもりもない。そのあたりは普通の兄弟だった時の意地が残っているともいえるだろう。


 


休日のディーンはいつも起きるのが遅い。サムが起きだしてからも、ディーンの部屋からは物音ひとつせず、簡単な料理をする時間は十分にありそうだった。


冷蔵庫を開けると、金曜日の帰宅ついでに買っておいた材料を取り出す。
作るのは朝食用のソーセージパイだ。なぜパイかといえばディーンの好物だからだ。
(ああ、僕は今ディーンの機嫌を取ろうとしている)
何となくしみじみしながらパイシートとソーセージを並べるとフェンネルとチーズをかけ、簡単に巻いた。料理と言うより粘土工作でもしているような形になったが、溶き卵を塗って適当な長さで切ったものを焼いたらなんとかそれっぽくできる。
こんがり焼けた成果物を皿に盛って眺めた。
「…」
台にまく小麦粉から、照りに使う卵まで、無添加、オーガニックで徹底したので、はっきり言って材料費だけでその辺の店で買うパンの5倍以上かかっている。
「……まだかな」
使った器具を片付けてしまうとサムはソワソワしだした。
さっきまではディーンに起きてくれるなと思っていたのだが、準備が整ってしまうと途端に正反対の心境に襲われる。
焼きたてのパイが冷める前に見せたい。
だが、気持ちよく朝寝をしているディーンを無理に起こせば、仲直りの代わりに新たな喧嘩が勃発するだろう。
サムは耐えた。もう10歳ではないのだ。
「兄ちゃん見てみて」
などと絶対言わない。だがもったいない。万が一昼まで寝ていたらどうしよう。


 


「よう」
「おはよう」
狙いが当たってディーンが起きてきた。
サムは落としたばかりのコーヒーを、ついでのような顔をしてディーンのマグに注ぐ。
オーガニックの焙煎豆を電動ミルで挽き、換気扇を止めてディーンの部屋に近い方で淹れた甲斐があった。今朝のためにかけたコストを思わず計算してしまう頭にストップをかける。


「飲む?」
「ああ」
差し出したマグをあっさり受け取られるだけで少しホッとする。
本当に、自分はここのところおかしい。
だが、そんな突っ込みもディーンの視線がテーブルの上の皿に向けられていると霧消してしまう。


「……なんか作ったのか」
「わかる?」
出来合いと思われたら大問題の大抗議なのだが、白々しく訊き返すとディーンが少し部屋の中を見回すそぶりをした。
「部屋の中がすげえバターくさい」
「ああ、ごめん。換気扇つけるよ」
換気扇をつけてテーブルに戻る。


「まだ食ってないのか」
聞かれて瞬きする。そういえば味見もしていなかった。
「そういえばそうだ。コーヒー淹れてるうちに忘れてた」
「すげえな」
しげしげと皿を見ながら、ディーンがえらくストレートに褒めるので照れる。
「味がまだ分からないんだけどね」
するとディーンが焼けたパイに手を伸ばし、でかい口でかじった。二三回咀嚼して飲みこむと、真面目な顔でサムを見る。
「旨いぞ」
「そう?」
パイ生地とソーセージを焼いただけなのだから、そうそう変な味には成りようもないのは分かっていたが、それでも胸をなでおろしながら自分も一つとる。


シャクリ、と音を立てるパイ生地がまだ温かいのに満足した。
向かいであっという間に三個ほど食べてしまったディーンが、
「店で売ったらいいんじゃねえのか」
と本気のような声で言う。
「…毎日はちょっとね」
「そりゃそうだな」
「だろ」
ディーンはあっさりと納得して次の一つを手に取るのを見つつ、バターと脂で満腹しだしたサムはサラダに切り替えた。
毎日仕事としてする気はしないのももちろんだが、売るには単価が高すぎるのは言わないでおく。


「どこで覚えたんだよこんなん」
6つ目を頬張りながらディーンが尋ねるのに、
「ネット動画だよ」
と嘘でない範囲で答える。自分にも作れて、ディーンが好きそうで、朝食向きのメニューを真剣に探した数時間のことはもちろん秘密だ。


とにかくせっかくの日曜を気まずく過ごさなくて良さそうな流れに、サムはホッとしてグリルしたアスパラガスにフォークを突きさした。


収拾付かないまま終わる。

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