最近洋画が色々おもしろいですねー。
先日観た「ドリーム」は正統派というかもう誰にでも胸を張って「良いから観て!」と伝えたい映画でした。天才数学者の女性が主人公なので、見てると
「あああ、数学の快感が分かったら世界が違っただろうなあ」
と思ってしまいますが、これは野球を見ながら
「ああ子供の頃からランニングと素振り500回していれば」
と同レベルの感覚ですわね。
一方で昨日はまーべるの最新作を見てきました。
兄貴はああいうのどうかな、好きかな…以外に古典っぽいの好きだから、見るけど「前作見てないと分からないネタが多すぎる」とか文句言いそうな気もします。
バッ/トマンレベルになると兄弟二人とも無条件に好きそうですが。
あ!BGMがえらくかっこいいぜと思ってたら、超々有名なグループの超有名な曲でした。兄貴が聞いたら「馬鹿じゃねえのか!!」と憤慨しそうです。でも知らなかったんだモーン。
まあそんなこと言いつつ続きです。
荒い息と短いうめき声をもらした後、ディーンは少しよろけながらベッドから立ち上がった。
「ディーン」
とっさに腕を掴んだサムの手をだるそうに見下ろす。
「なんだよ。もう一度か?」
「そうじゃなくて」
「なら放せ」
手を振り払うと、隣のベッドに移る。ご丁寧に壁の方を向いて転がり、
「あー、やれやれ」
とうんざりしたような声を上げたと思ったらあっという間に寝息を立てだした。
サムはその背中を見ながらため息をつく。
「ディーンが好きなんだ」
引き倒すたびにサムは毎回繰り返したが、それは徹底的に無視されている。
無理強いをしておいて言えた立場ではないのは十分承知だが、それでもサムとしては行為の後こんな風に離れるのではなく、朝まで一緒に眠りたかった。
引き留めに成功する日もあったが、大体においてディーンは一人でもう一つのベッドに移り、やれやれと言わんばかりに背を向ける。一度など事後の方が揉めて強烈な一撃をくらったこともある。それはサムにとってなかなかに凹む事態だった。
「するのはいいのに、なんで一緒に眠るのがそんなに嫌なの」
珍しく一緒に寝るのに成功した夜、サムはそっぽを向くディーンを背中からすっぽり抱きながら尋ねた。狩りの直後に行為に雪崩れ込んだので、まさに疲労困憊したディーンがうんざりしたような声を返す。
「…出すもん出して、まだ不満かよ」
「好きな人と一緒に寝たいのは普通だろ」
「…」
その夜のディーンはいつもと同じように素っ気ない口調でも、何となく話ができる雰囲気だった。沈黙も拒絶ではなく考え込んでいるようだったのでサムは急かさずにじっと待つ。
「……地獄の夢を見るから嫌なんだ」
やがてディーンがポツリと呟いた。
「僕と寝ると?」
「………」
それには答えが返らない。
「僕のせいで見るの?」
「……うるさい」
腹の前で組まれたサムの手に少し力が入る。眠りの淵に落ちかけながらディーンは、
(ああこれでまたこいつがむきになってもう一ラウンド始まったら最悪だな)
とぼんやり考えた。だがサムは拗ねた時の癖でスン、と小さく息をすると、後ろ頭に顔を押し付けてきただけだ。ディーンはほっとしつつ思わず出そうなため息を押し殺す。
弟と言うのは実に勝手で厄介な生き物だ。偉そうに力を誇示してみたかと思えば、自分が小さくて可愛らしかった頃を思い出せと言わんばかりに甘ったれたことをする。
実際のところはサムと寝ようが一人で眠ろうが夢は見る。
いつも地獄で切り刻まれて、泣き叫んでいる時のことだ。
夢を見ながら自分がなにを口走っているのかわからない。大声は出していないと思っていたが、至近距離で眠れば自分が上げていた情けない悲鳴を聞かれてしまうかもしれない。
同じ部屋に寝泊まりしている上にこんな状態で今さら恥も面子もない気もしたが、それでもあの時の自分の悲鳴をサムに聞かれるのは嫌だった。