きょうもどんどこ!
リベンジというなの再録だからどんどこ!
サムは袋の中身を並べながら内心で冷汗をかいた。
調査は残念ながら大した収穫もなかった。そうなると宿に置いてきたディーンのことが気になって急いで帰ることにしたのだ。
だが、いざ何を買おうかと思うと大したものもない田舎町でも色々迷ってしまい、思いつくまま手当たり次第に買ったので、ばらばらなメニューでやたらと数が多くなった。
だが結局無言で食べ始めたディーンはごくあっさりしたサンドイッチを少量かじっただけで手を止め、サムはもしやと思いつつ買ってきた脂たっぷりの「本日のスペシャル・ポークリブサンド」や「オーナーいち押しチェダーチーズのボリュームバーガー」を一手に引き受けることになった。
ディーンはサムが大量すぎる食料に悪戦苦闘しているのを横目に、コーヒー片手にさっさとソファに移動していった。露骨に素っ気ないが、出ていかないだけましだ、とサムは自分を慰める。
会話のない部屋の中にはテレビの音だけが流れていて、サムはボリュームのあるサンドに苦戦しつつ、少し離れて座るディーンの顔を眺めた。ディーンがサムの方を見ようとしないので、逆に遠慮なく相手を見つめられる。
昼食と一緒に買ってきた新聞をめくりながら時々コーヒーを啜るディーンは不機嫌そうな顔だ。時々顔をしかめるのは身体がまだ痛いのかもしれない。濃いまつ毛が影を落とし、髭を当たった頬に窓からの光が当たっている。
あちこち痕が残る痛々しい顔なのに、罪悪感よりもやっぱり昨夜のことは夢じゃないという実感の方が強くて、サムは「確かに自分は変わったのかもしれない」とぼんやり考える。
結局触られもしなかったアップルパイのパックがテーブルの上に残っていて、その時だけサムは少し悲しくなった。
・・・
「今日はしないよ」
夜になり、あからさまに警戒の目を向けてくるディーンにサムは言った。
「当たり前だ」
むっつり答えられて言葉をつなぐ。
「怪我もしてるし、今したらまた動けなくなるから」
言外に怪我が治ったら、と告げておく。サムの意志は固まっているので、早いうちに宣言することにこしたことはない。
サムがモーテルに帰ってきた時、汚れたシーツは洗ってセットし直され、室内は何事もなかったような顔になっていた。
ディーンは昨日のことを勢いで起こった事故にしたいのかもしれなかったが、サムの方はそのつもりはない。
「遠慮するぜ。他を当たれ」
即座ににべもなく言われるが、不思議に堪えない。
「昨日言ったことは本気だから」
相手が聞きたいかどうかは気にせず、自分が言いたいことを躊躇わず口にする。
これもまた、確かに変化かもしれなかった。
「本気なら、相手が嫌だっつっても突っ込んでいいってか」
「昨日の怪我が治るまでは待つよ。次からは絶対怪我させない」
「意外だな。怪我がなければレイプにならないって論法か弁護士志望」
「レイプ?」
「腕ずくで突っ込めて満足してたろ」
思いきり平行線のままディーンは唐突に会話を打ち切ると、サムに背を向けて寝てしまう。予想通りの態度とはいえ、嬉しくはない。
一般的に本気で好きなら抱いていいのかと言われたら、もちろんよくない。良くはないがそうしたい。暖かいあの身体を腕に抱いて、キスをしたかった。
半日寝ていたので正直眠気はなかったが、ディーンはこれ以上サムと顔を合わせていたくなかった。目を閉じながら枕の下の銃とナイフの感触を確かめる。
加減が難しいのだ。敵が襲ってきたのならば戦える。アホな弟がのしかかってきたら、一発頭を殴ったあとに股蔵を蹴り上げてやる。そう、自分が本気になればできるはずだ。
なんで動けなくなったのか。思いだしたくもないが昨日のことを考える。
争っている間にふとサムの目が黒くなったような気がしたのだ。
それは多分錯覚だったのだが、確かにあの瞬間身体が恐怖にすくんだ。
ついこの間アラステアが地上に現れたこともあるだろう。生き返ってきたところで世界はつながっていて、自分が地獄で手を染めたくそったれなあれこれが無くなるわけもない。
這いつくばって悪魔のいいように何でもしていた時間が唐突に生々しく蘇ってきたあの感覚。
何も考えたくない。
サムのことも、自分のことも。
ディーンは枕の下でそっと銃に触れる。
固い感触。シンプルな道具。
ただ単純に、ハンターとして狩がしたかった。
つづく…
あらまずい。完全コピペもつまらないと思っていじったらなんかよれた…