いわゆる「捜査上の必要性」という奴だった。
最初にカップルと間違われた時、例によって調子のいいディーンが否定せずにへらへらしていたので、今さら兄弟ですとも新聞記者ですとももちろんFBIですとも言いだせない。
「じゃあ、行くかこの『お勧めのデートスポット』って奴に」
ディーンの言葉にサムは顔をしかめる。
「手でもつなぐの?」
「馬鹿いえ」
被害者が出ているスポットの一つなので、調査にはちょうどいい。
しかしながらデートのフリというのは今さらながらに難しかった。
「おしゃれでもして来いやサミーちゃん」
「兄貴がでれでれした顔で歩けばいいんじゃないの」
インパラを降りてもデートらしい演出を思いつかず、周囲の人眼を気にしながら悪口を言い合って調査を進める。
肩も組まず、笑い合ったりもせず、もちろん手をつなぐこともない。
「もういいよ、デートしてるようには見えなかったカップルで」
「だな」
開き直ってあちこち見て回り、観光客の雑談を装って聞き込みをする。もう途中からは兄弟どちらもデート設定のことは忘れていたが、数日後に再訪すると昼食を取ったダイナーのお姉さんから、
「あの日デートしてたお二人よね」
と記憶されていたことに驚愕し、さらに
「あの日一緒だった娘と、『仲いいわよね』って言ってたの」
と言われて沈黙した。
『……で、どう思う?』
その夜遅くにディーンからそんな電話を受けたボビーは、黙って通話を叩き切ったという。
終わる
うう、調子が出ないが書いただけいいや。
[30回]
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