「素敵な週末だったみたいね」
週明け、同僚にそうからかうような口調で言われたディーンは目を丸くする。
「へ? なんもないぜ。家でDVD観てたくらいだ」
「あらそう」
だが全く本気にしていない顔で相手は行ってしまう。
なんなんだ、とディーンはぼやきつつ商品を棚に並べ直した。
「ディーン、いる?」
サムが店に立ち寄ったのは夕方だ。レジ番をしていたディーンは振り返る。
「なんだ、お前遅いんじゃなかったのか」
だから今日は夕食もいらない予定だったのだが。言うとサムはひょい、と肩をすくめる。
「そうなんだけど、予定より早く終わったからさ」
そろそろ上り?と訊かれて時計を見る。
「あと十五分くらいだな」
「待ってていい?」
「別に、帰ってりゃいいだろ」
「家に何もないから、どっかで食べて帰ろうよ」
まあ、ディーンとてその予定ではあったのだが。
「…店ん中にいると邪魔だから、車で待ってろ。裏に駐車場あんだろう」
「了解。じゃあ、あとでね」
「おう」
軽く手を上げてコート姿のサムが出ていく。希望していた法律関係の仕事に就いているからか、スーツ姿も板についてきた。
何となくむずむずした気分でレジのチェックをしていると、配送分の荷物を運びだしながら副店長が、
「あんまり店でいちゃつくなよ」
と聞き捨てならないセリフを吐いて通り過ぎて行く。
「何がだ!?」
飯の話をしただけだし、ものの一分も話していない。
「気にしなさんな、彼氏がいい男だし、幸せそうな人みてやっかんでるだけだから」
遅番の同僚がフォローを入れてくるが、根本的に違う。確かに久々にすっきりはしたが、勘ぐられてるようなもんじゃない。
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