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海外ドラマの超常現象の兄弟(SD)を中心に、頭の中にほわほわ浮かぶ楽しいことをつぶやく日記です。 二次創作、BL等に流れることも多々ありますので嫌いな方は閲覧をご遠慮くださいませ。
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同居クレトムサンプル

ぜいぜい。
な、なんとかクレトム本入稿しました。17pからなんとか見なおして40pくらい行ったかな…

えーと、ブログで書いていたのを下敷きにしていますが、Transient:Reの続きで書いているので、全体的にトーンを合わせた感じです。
よろしくお願いいたしまーす。

以下サンプルです。うだうだ言ってましたが、書きだしはこんな感じになりました。







・・・・・・・・

外が暗くなってきた。街灯が少しずつ点きだしている。
トムは木枠がガタガタいいそうな窓から表の通りを見下ろした。
見渡す限りの視界は全て人工物だ。新しいのと古いのが入り混じった建物が密集し、見下ろす道も車がひっきりなしに行きかっている。
トムが育った山の中の炭鉱とはまるで違った。クレイと長いこと旅してきた砂漠地帯の田舎とも。
クレイのバイクはまだ見えなかった。いつもより帰りは遅いようだ。昼間は暑かったが、陽が落ちると、さすがに風が冷たくなってきた。
 
『人の多い街の方が、僕らみたいなのがいても目立たないんじゃないかと思うんだ』
そう言ったクレイの言葉は当たっていて、都会の人間は田舎に比べて確かに他人への関心が薄かった。出自の知れない人間は珍しくもなく、この街に住んで数か月が過ぎても、二人に関心を向ける者はいない。それでも、少しずつ顔と名前を覚えられる相手は増えていて、トムとしては神経がピリピリすることも多い。
今日も近くの店に買いだしに行ったら、店の女主人から、
「今日はジャガイモが安いわよ」
とやたらと勧められた。それはいいのだが、
「この間彼氏が粉末のマッシュポテトがまずいって言ってたでしょ」
と続けられてぎょっとする。店でのちょっとした話も記憶されているということだ。
(定住する怖さだな)
トムは下の道を眺めながらぼんやり考える。暗くなってきた道を、急ぎ足のスーツ姿の男が通り過ぎた。
(今日はいつもより随分帰りが遅い)
かなりぼうっとしている自覚のある自分でさえも、通行人の顔を覚えてしまうのだ。改めて同じ場所に、同じ名前で留まり続けていることのリスクを思うと、少し腹の奥がざわつく気がした。
(だが、まだ今は大丈夫だ)
 自分に言い聞かせて、軽く頭を振る。事件の後、トムはほとんどの時間、田舎町を転々として過ごしてきたが、こうして街の中に身を置くと、あふれる情報の量と勢いが違うのを実感する。
直接の被害者でも加害者でもない人間にとっては、「血のバレンタイン」も「13日の金曜日事件」も、とっくの昔に数ある古い事件の一つになっていた。何年かに一度、テレビ番組で取り上げられたときに思いだされる程度だ。

厚手の鍋を火にかけ、油を垂らすと刻んだニンニクとエシャロットを入れる。少量のひき肉を炒めた後、蓋を開けたトマト缶の中身をそのままあけた。煮えるのを待ちながらレシピで次の手順を見なおすと、缶詰の豆は加える前に水煮しろと書いてあるが、まあ今日はいいことにする。
クレイと暮らし始めるまでの生活で、トムは一切料理をしたことがない。生家では家事は女の仕事とはっきり分けられていたし、療養所では出されるものを口に運ぶだけだった。その後の逃亡生活では料理どころではない。
料理をするようになった理由の一つは暇潰し、二つ目はコストだ。この街に留まることにしたとき、クレイとの取り決めでトムは自分名義の口座からの引き出しを止めた。手元の資金をネット取引で回してはいるが、外食や惣菜を多用すると金が持たない。
コスト、という単語に昔のことを思い出す。父の会社の会計士が、よく帳面をしかめつらしく示しては、コストがコストがと言っていた。
クレイはトムがこの部屋に閉じこもりっきりだと気にするが、療養所よりよほど自由だしネット環境もある。移動が無い暮らしは実はそれほど苦ではなかった。
母はとうに亡くなったが、もし今トムの姿を見たら驚くだろうか。それともハニガー家の男が台所に立つなんてと嘆くだろうか。


何となく考え込んでいると、鍋が焦げそうになって慌てて止める。
「しまった」
いかに何を食べても「旨い」しか言わないクレイでも黒焦げはまずい。水を足すべきかと中身をつついていると、聞きなれたエンジン音がした。クレイだ。
ブラインドを閉めていなかった窓から外を見ると、バイクを停めたクレイがバイクから降り、ヘルメットを取るところだった。ひょいと上を向き、見下ろすトムに気付くと軽く手を振る。反射的に手を振り返しながら、こういうやり取りは自分にはおかしい気がしてちょっと悩んだ。しかし、一度上げた手を今さら下ろすのもさらにおかしい。
暮らし方の変化もだが、クレイとの関係も最近大きく変わった。大の男が窓越しに手を振り合う図というのはトムの感覚としてはおかしいが、恋人同士のやりとりとしてはおかしくない。
今この手を振るべきか、振らざるべきか。それが問題だった。


 



 


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