お久しぶりでございます。
台風のおかげで湿度94%なんて表示を見てしまって、もうこんな日に仕事をしちゃだめだみんな!という気持ちでいっぱいになった今週でした。
また例によって停滞しておりますが、クレトムの素敵なお話を読んでムラッとしたのでクレトム小ネタ。えーと、まだバラバラに旅をしてる頃。
ルームナンバーを確認してドアを叩く。
「トム」
声をかけると即座にドアが開いて、その速さに驚く。どうも寝起きらしい恰好のトムも自分で驚いたらしく目を丸くしていた。
「……なんだ?」
気を取り直したように着崩れたシャツを直しながら言う相手に、
「夕飯行かないかと思って」
と目的を伝えると、ほっとしたように
「ああ」
と頷いてくれた。たまに顔を合わせる状態から、お互い行き先を伝えあうようになり、この頃では部屋や宿は別々でも街を出るときには声をかけるようになっている。
「何か、タイミングまずかった?」
尋ねると何となく呆然とした顔のままで「いや」と首を振る。
「もう朝になってお前がチェックアウトするって言いに来たのかと思った」
「ああ、だから」
言いつつ何となくじわじわと来るものがある。トムはのんびりしたところもあるが、基本的に他人に慎重だ。ドアをノックして声をかけても、魚眼などから確認する間が必ずあった。通常はだ。
それが今日は慌てた様子で即座にドアを開けた。自分が先に発ってしまうのではないかと思って。
いや、寝起きっていうのは深く考えず慌てがちなものじゃないか。
そう思っても何となく頬が緩むのを止められない。近づくな関わるなと言い続けているトムがだ。
落ち着け自分。クレイはそう自分を戒めていたが、
「…おい、行かないのか」
とっくに身支度を整えて、部屋の鍵も閉めて待っていたらしいトムに声をかけられるまで、自分の戒め思考に集中しすぎて停止した不審物になっていたのだった。
見なおしもせずに終わる。
旅の途中好き…
[29回]
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