書こうかなーと思いつつかけなかったアラブ―さむの昔話。
ディーンとサムがくっついた後、庭の散歩をしてると東屋があって、サムがあそこで休もうという。黒くて怖い正妃たちと遭遇したのを覚えてるディーンは、
「お妃方の場所なんだろう」
と嫌がるけど、サムは、
「あんたもあの時と違って正妃だから問題ない」
とかいって、引っ張りこむ。茶を持ってこさせると、ソファに並んで座ってたのが、ディーンの膝にごろりと頭を乗せて転がる。
「うわ」
と驚き、「重いからどけ」というディーン。
「妃なのに冷たいぞ」
とサムに言われても、「重いモノは重い」と冷たい。
しかし無理やり放り出すと妃でもまずいので、仕方なく乗せたまんま外を見て、第一第二正妃に見つからないといいなあと思ってる。
で、
「なんでお前ここにこだわるんだ」
と訊くと、
「昔の嫌な記憶を消したい」
と膝の上で目を閉じたまんまサムが言う。
で、昔話になる。
サムはとても小さいころに婚約したので、昔から二人が自分のお妃になるというのは聞いていた。時々庭で会うこともあって、宮殿内でも一目置かれている二人だったので、もうそう言うものだと思っていたし、二人も一応サムには優しい言葉をかけていた。
で、実際に結婚したのが13歳くらいの時。
結婚の儀式は、本当に夫婦になったかどうか証明するために証人たちの前でベッドを共にする。でも、サムよりも二人の方が余りにも色々年上だったので、二人にサムが次々に乗っかられるような儀式だったと(あまりにむごいので回りも口にしない光景)。
結婚後は二人はしばらくの間サムに「蜜月期間」を要求したため、サムは宮殿のあっちこっちで乗っかられ、お妃二人がお気に入りだったのがこの東屋であったと。
「……それは悲惨だな」
ディーンも思わず呟いてしまう。よくそんな状況に耐えられたなあ。というと、「それしか知らなかったからな」とサムがむすっとした顔で返す。
「だから、外に出るようになって他の女を知った時は衝撃だった…」
「……だろうな」
でも、宮殿の中には若い侍女もいただろうが、とかディーンが訊くと、
「次女は次女という生き物で、妻にする相手ではないと思っていた」
と返ってくる。実際はお妃に対して気を使った宮殿が、あまり若い侍女をサムの周りに配属しなかったり、王子に色目を使ったら本当に命が危ないぞとよくよく言い含められたりしていたので、そんな雰囲気が全然なかったらしい。
「だから、今でもこの東屋が目に入ると気分が悪い」
「なら壊しちまえばいいのに」
ディーンがそう言うと、サムがふと笑う。
「そうだな。それもいい。あれ達の反応が気になるが」
「いや、やっぱり無しだ。お妃方の思いでのお気に入りの場所を壊しちゃいかん。もってのほかだ」
「いい考えなのに」
「俺は自分の身がかわいい」
サムがどんなに隠しても、あのお妃達には話の出所が絶対にばれる。根拠はないが実績がある。
「まあな、場所自体はいいんだ」
それほど本気でもなかったような声でサムが呟く。
まあ、確かにな、とディーンも思う。
庭の植木や花の角度もいいし、陽は暗くない程度に遮り、風通しもいい。ソファに横になって転寝したら気持ちがよさそうだった。
ディーンはちょっと最近自宅に持ちかえりの仕事も多かったのと、ネットゲームにはまって夜更かしが多かったので睡眠不足気味だったこともあって、サムを膝に乗せたまま二人して少し昼寝をしてしまう。
一緒に寝こけてるのを侍女に起こされて、風邪をひいちゃいけないと引き上げるんだけど、ディーンはその後正妃二人と会った時に、
「私たちの東屋で昼寝をしていたのだって?」
「あそこは気持ちのいい場所だからね」
と速攻言われて震えあがったのでしたとさと。
というサムのかわいそーな昔の情景を本編に入れよ―かなーと思ったけど、入れるとぷかぷか浮きそうで断念したのでした、と。
ううう、そろそろ時間切れかな。
[32回]
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