「報われないよ」
水晶玉を覗いていた占い師は言った。
「あんたの恋は、成就したと思った瞬間に消える」
そうだろうな、とディーンは口を歪めた。
今のサムの人格は、呪いによって生まれたまがい物だ。報われることなどもともと望んでもいない。
だが。
「そんなことない」
隣にいたサムがきっぱりした口調で言った。ディーンは苦笑する。呪いにかかった弟の言葉は、いわば夢うつつで口にしているうわごとのようなものだ。
「今僕は報われている」
サムは言葉を続ける。
「消えるときが来たとしても、今僕が報われている事実は変わらない」
迷いなく言いきれるのも呪いが判断力を鈍らせているからなのか。
「占われてるのはお前じゃない。邪魔すんな」
口の端を無理矢理引き上げて笑ってみせる。迷いのないサムの言葉が、呪われているからと思ってもやりきれなかった。
140文字こえましたすんません
なんで占い師てるかとか訊いちゃだめです。
脳内ビジョンです。
[29回]
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