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海外ドラマの超常現象の兄弟(SD)を中心に、頭の中にほわほわ浮かぶ楽しいことをつぶやく日記です。 二次創作、BL等に流れることも多々ありますので嫌いな方は閲覧をご遠慮くださいませ。
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二次元、三次元問わず楽しいもの大好き。
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まだ赤ちゃんが来てます23本目(淡々同居)

定番展開になってきたぞー







「わあ」
サムが情けない声を上げる。しばらくためらってやっとオムツの中を確認すると、よじよじと一頻り身をよじった後のおむつの中身はなかなかすごいことになっていた。
「ほれ」
テーブルで様子を見ていたディーンが、赤ん坊用ウェットティッシュをぽい、と投げ渡してくる。ウェットティッシュを取り出したサムが、じたばたと動く足をなんとかそっと抑えようとして、はっと気が付いたようにディーンを振り向いた。
「ごめん、ちょっと荷物から手袋出して」
「手袋?」
「ラテックスの」
聞いたディーンの眼が半眼になり、対照的にサムの眉は情なさそうに下がる。
「お前な」
「だって手につきそうで」
ディーンに睨まれてティッシュでこわごわと拭くが、なるべく手を汚すまいと思うためかどうも手際が悪い。そして一枚目のティッシュの拭く面がなくなり、二枚目を取ろうとしてはっと危険ブツである一枚目を置く場所がないことに気付いて固まった。
アダムを連れてきて以来、一貫して非協力的だったディーンが、はーっと息をついてテーブルから立ち上がる。
「グズグズしてる間に、濡れたのほっとくと身体が冷えるだろうが」
言われてハッとするサムに、「くず入れにするポリ袋でも持って来い」と言いつけた。言われてサムは汚れたティッシュを持ったままバタバタと袋を探しに行き、ディーンはサムの持ってきた袋に使用済みのウェットティッシュをぽいぽい入れながら汚れた小さい尻を拭き、差し出された紙おむつを多少ぎこちなく履かせた。
はーっと二人して何となく息をつく。
「赤ん坊の世話って大変だね…」
「お兄様のありがたみが分かったか」

『誰がお前のおむつ替えてやったと思ってるんだ』
というのは耳がタコになるほど聞かされたセリフだが、聞き流してきた内容が俄然重みを増してくる。しかもいい大人ではなく兄の方も四歳とか五歳だ。いや、さすがに最初は父ジョンがしていたのだろうが。
厳しい顔と背中ばかりが思いだされる父が、四歳の兄をまとわりつかせながら不器用に自分のオムツ交換をしている姿を想像すると、何だか息が詰まりそうな気がする。
この想像が実際どうだったのか、父に確認する術はもう無い。いや、あるかもしれないがやらない。

追憶に浸りだしたサムの意識を現在に引き戻すように、サムの膝の上に転がっていたアダムがまた泣き声を上げた。
「え、今度は何?」
「またミルクじゃねえのか」
「あ、そっか」
横に置いていた哺乳瓶を取り上げ、口にあてがおうとするが顔を背ける。そしてまた身体をよじって泣き出した。
「ええええ?なんで?」
困惑するサムに、ディーンが「冷えたんだろ」と哺乳瓶を取り上げるとキッチンに持っていき、ざっと水道で洗うと再度ミルクを作って渡してくる。
「ありがと」
受け取ってからサムがはっと気づいたように顔を上げた。口をあけかけたアダムから慌てて哺乳瓶を離す。
「しばらく放置しちゃったけど、煮沸しなくて大丈夫なのかな」
「あのなあ」
ディーンがほとほと呆れた声を出した。
「さっきからお前の服やら椅子の足やらぺろぺろ舐めてんだろうが」
「あ」
育児は実に驚きに満ちている。
気を取り直してサムはアダムの口に哺乳瓶を咥えさせる。
やれやれ。
これで満腹してくれれば眠くなるのではないだろうか。そう思ったところに、再度先ほどの音が響いた。まさか、と思うが、それを裏付ける匂いが膝の上から漂いだす。
「………さっきあれだけ出したばっかりなのに何で!?!?」
叫んでみても現実は現実なのだった。


ミルクを飲み終わった後、げっぷと一緒に盛大にミルクを吹きだしたので服を全部取り替えると、アダムはようやく眠そうな様子になってきてくれた。
「育児ノイローゼになる人がいるっていうのも分かる気がする…」
今度からもう少し親切に対応できそうだよ、と呟くサムに「そーかよ」と返したディーンがふああ、と欠伸をする。
アダムは覗き込むサムの顔に、何が面白いのかしきりと手を伸ばいている。
「お前に懐いてんな」
「うん、なんかそうみたい。この年齢の子って人見知りするらしいんだけどね」
それもあって、頼まれたんだ。
小さい手に指を握らせながらサムが笑うのにふうん、とディーンが返す。

ベビーベッドが無い→安全に寝かすにはどうしたらいいか
でサムがぐるぐる思考を回した結果、二人のマットレスを床に下ろし、壁にぴったりと付けた後、赤ん坊を寝かせた両脇をサムとディーンでブロックしていた。
「………僕が寝惚けてこの子を潰したらどうしよう」
「そりゃ、寝ないことだ」
もっともだが無理だ。一週間の仕事+慣れない赤ん坊の世話でサムは既にぐったり疲れている。
「まあ、気を付けるよ…」
言った端から瞼が重くなる。視界が閉じる前にこちらを見るディーンが目に入った。仕方ないな、と今にも言いそうな顔に反論しようとして、もう眠くて口が動かず意識が途切れる。


あっという間に寝落ちた弟と、やっと寝付いた赤ん坊の顔を見ながらディーンはぼりぼりと頭を掻く。のんびりビールでも飲むかと思っていたのに散々だ。徹夜など珍しくもないが、狩りならともかく、良く分からん点数稼ぎのために明らかに当てにされてもそうそう都合よく手を貸してやる気にもなれず放っておいたが、サムがじたばたきーきー苦労する姿を見て少しばかり気が済んだ。
自分がサムのオムツを取り替えていたとき、あんなウェットティッシュを使っていただろうか。多分知らないのと経済的な理由からトイレットペーパーで拭いてたような気がする。

目の前に大きな弟と小さな赤ん坊がそろって同じような角度で目を閉じていて、ディーンは何となくおかしくなって笑った。緊張感がないとどうも本気で寝そうだが、時々寝相の悪いサムが本当に赤ん坊の上に転がったら止めないとまずいだろう。
変な週末になったが、狩りをしていたころに比べればどうということもない。
「アダム、か」
そう呟いて小さな顔を見つめる。
「たまたまだな」
そう言ってディーンも少し睡眠を取ろうと目を閉じた。




赤ん坊の世話くらい、と高をくくっていたサムはそんなわけで苦労したわけだが、赤ん坊の両親の方も子育て経験もない事務所の後輩に我が子を預けた無謀さが心配だったのだろう。
翌朝早々にサムの携帯に連絡が入り、朝のミルクすら飲まないうちに赤ん坊は両親に抱かれて家に帰った。
「………微妙だ」
同僚に貸しを作るつもりだったのに、何となく狙っていた方向に今一つ行かなかった気がする。ぶつぶつ言いながら玄関口で親子を乗せた車が走り去るのを見ていたサムに、ディーンが
「俺はシャワーして寝なおすぞ」
と声をかけた。
「うん、ありがとう」
結局あまり手は貸してくれなかったが、どうやら夜自分が寝てる間に赤ん坊を潰さないよう見張ってくれていたらしい兄に礼を言う。そしてバスルームに向かう背中を見ているうちにはっと思いだして声をかけた。
「ねえ、アダムって誰?」
そういうとディーンがピタリと止まる。空耳ではないはずだ。自分が眠りのふちでふらふらしている時、兄は自分と赤ん坊に視線を向けてそう呟いた。何か、深くわけがあるはずだと確信がある。
ディーンは数秒沈黙していたが、読みづらい表情で口を開いた。
「アダムってのは、親父のもう一人の子供だ」
「はああああ!???」
いきなり核弾頭が落ちてきたような衝撃に見舞われる。
「親父も知らなかったらしい。俺たちがまだガキで、親父が一人で狩をしてる頃、怪我をした時に手当してくれた看護師と数日だけ一緒にいたんだと。それっきりだったが何年か前に実は息子がいて、しかも何か変なものに狙われてるって連絡が来て、親父と俺で吹っ飛んで行ったんだ」
「それで?」
「駄目だった」
ディーンは首を振る。
「母子を狙ったのはグールで、仇は討ったけどな。もともと人伝の手紙だったから、親父に届くのにえらい時間がかかってた」
「…ほんとにダッドの子供だったの」
「わからん。手紙には息子としか書いてなかった。だがわざわざ親父に助けを求めて来たってところでそうに違いないって、親父は言ってた」
「……そう」
「ま、そこに同じ名前の赤ん坊だったからな」
「うん」
「まあ昨日のアダムは安全でリッチそうだ」
「まあね」
話は終わりだ、というように軽口を叩く兄に合わせて口の端を上げる。

自分が持ちこんだ話から、思いがけない事情を聞いてしまった。
顔を合わせることもなく消えてしまった弟の存在になんとなくざわざわするものを感じながらマットレスを敷いたままの部屋に戻ると、昨日の悪戦苦闘のあとが部屋中に転々と残っている。
追憶から現実に引き戻されて、サムは一つ息をついて苦笑した。


お、おわる。



Sさんごめん、絶対要望と違う者になったよ…









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