ディーンは雑木林の中を走っていた。
息が弾む。足がもつれる。この身体になってから鍛錬になりそうなことを一切していないので我ながら笑えるくらい身体が動かない。
追ってくるハンターはまだ若い。
人間を傷つけない限りは黙認する、というボビーを通じたハンター達との取り決めを知らないのか、知っていてあえて無視しているのか。
ちらりと後ろを見やる。馬鹿の一つ覚えのように、ただ追ってくるハンターを返り討ちにしようと思えばいくつか手は浮かんだ。だがそれはしない。誰かが自分を狩りに来た時には、大人しく首を差し出そうと思っていたのだから。
だけど今日は。
「早く帰るからね」
と言い置いて出ていった弟は、日が暮れかけた今でも帰らない。
「バレンタインだから何か買って帰るよ」
いつ終わりが来てもいいけれど、こんな別れはできれば避けたかった。
もだめだ!
文より前ふりの方が長いじゃないか。
しかしノックはこんな日もあるのだー
[23回]
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