断末魔の悲鳴
流れる血
痙攣する手足
生々しい映像に飛び起きたサムは、暗い部屋の中で汗びっしょりになって飛び起きた。息をはずませ、しばらく暗い空間を見つめる。
ちらりとはめたままの腕時計を見ると夜中を少し過ぎたところだ。
少しためらってから携帯を手に取る。普通の知り合いになら絶対にかけない非常識な時間だが、逆に昼にかけるほうが熟睡中だったりもする相手なので仕方がない。
『どうした』
予想通りワンコールで出た相手の声はクリアで、まだ寝ていなかったことがすぐわかる。
「またビジョンだ、ディーン」
『話せ』
冷静に、かつ真剣に聞いてくる声にふと体の震えが収まってくる。
まったく、こんな突拍子もない話を夜中にまじめに聞いてくれる相手がいるとおもうだけで随分と違うものだ。
サムは頭を押さえつつ、先ほどの映像の中で見た人の外見と周囲の様子、聞こえたやり取りを伝えた。
『お前はそいつらに見覚えないのか』
「…ない」
飛び起きた頭で必死に脳内を検索するが、大学でもバイト先でも見た覚えはない顔だ。
『…じゃあわかんねえな。たぶんまた悪魔に絡むなんかなんだろうけどな』
唐突にそっけなくなった声に鼻白む。
「なんだよその言い方」
『しょうがねえだろうが、俺にはその映像みえねーんだし、お前も見覚えないんじゃ打つ手がねえだろ。名前と場所がわかりゃまだしもどこにいるかもわからん奴じゃな』
そう言われて詰まる。確かにもっともだった。
『だがまあ、お前が予知夢見だすときってのは、悪魔どもが何かしら動く時が多いからな。おい、聖水とサークル確認しとけよ』
「わかってる。夜中にごめん、遅いとは思ったんだけど」
結局のところ兄にとっては何の益もない話だったのを改めて実感し、なんとなく面目なさに声が沈む。だが、
『同じことを何度も言わすな。関係なさそうだと思っても、全部すぐに言え』
びしりとした声に逆になだめられたような気になる。
「うん」
いろいろな意味で気が抜けたせいか、ふわあ、とあくびが出た。
『なんだ、おねむかよサミーちゃんは』
途端にからかうようになる声にも反論できないほど、急に飛んでいたはずの疲れと眠気が戻ってくる。
「ごめん…なんか気が抜けて」
『…ま、いいんじゃねえのか。眠れるんならよ』
「うん…」
それっぽい奴見かけたら連絡するから、さっさと寝ろよ。そう言う声に寝かしつけられるようにベッドに体を倒す。
「ディーンは、何か調査中?」
『まあな』
「なにか手伝う?」
『時間あるのかよ大学生』
「あしたの夜20時以降なら」
『…じゃあメールする』
「うん」
汗で少し冷えたシーツも気にならない。少し前まではもっとひどいモーテルで昼も夜もなく調べ物をしたり狩りをしたりするのが当たり前だった。安い洗剤で洗われたくたびれたシーツや、マットレスに染みついたすえた臭い。
ディーンは今もそこにいる。
「ありがとうディーン」
寝ぼけた恐ろしさで、ぽろりと唐突な言葉が口をつく。ディーンの返事はなかったが、なぜか携帯の向こうでじっと聞いていることはわかった。
「…狩が終わったら一度こっちに来てよ。ステーキおごる」
もごもごと言うと、
『バーカ』
と笑った声がして電話が切れた。
暗い部屋の中でサムはうん、と手足を伸ばす。
アザゼルは死んだというのに、悪魔の血の影響は消える様子を見せない。それでも普通の生活に少しでも戻れる可能性があるのなら、やってみたかったのだ。だから地獄の門から地上に飛び出してきた悪魔たちをある程度送り返したところで、サムは休学していた大学に戻ってきた。
ディーンは来なかった。
もう敵も討ちおわったというのに、狩りに固執する必要はないのに。
明日の20時までには課題を終わらせないと、そう思いながらサムは今度こそ眠りに戻っていった。
とかとか。
あれ?あれ?おかしいな。別居は別居なんだけどツンツン度が足りないぞ。まだ学生のせいかな。なんだこの遠隔寝かしつけ話。しかし心はつんつん別居です。しかしさみちゃんは考えてみたら悪魔の血在中ですからちょーのーりょくある状態です。将来はミラクル弁護士だね!どの方面のニーズにもはまりそうもないけど楽しかったからいいや。昨日よりは元気が出てきたので、今日も早寝します。拍手ぱちぱちありがとうございました!またお礼にまいりまーす!!\(^o^)/
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