試験勉強しなくちゃと思うと、ゲームやマンガが普段以上に面白く感じたりしませんでしょうか。
今、むっぱら用の原稿しなくちゃと思い詰めていましたら、前回のアンソロジーで没ったMOLのアニバーサリーネタが書きたくなりました。
これもリハビリの一環ということで、書いてみましたら見事に冒頭で突っかかりました。
うーん、やっぱり難しいなMOL。
どうか皆様もどんどんMOL書いてくださいまし。見たいよーMOLの兄弟…
続きがかければ予告になるし、
書けなければそのうちなんちゃって小ネタで粗筋だけアップするし、どちらにせよ停滞の緩和になるしなので、かけたとこまでのせまーす。
冒頭です冒頭。
書き殴りなら、
「アバダンを何とか死なずに封じたヘンリーじいちゃんが、兄弟の制止もきかず過去に帰っちゃいます」
の、一行で済む部分です。
とりあえずではあったが、時空を越えて賢人の生き残りを追ってきた悪魔を封じることに成功した後、ヘンリー・ウィンチェスターがそう言い出すのはごく当然のことだった。
サムとディーンにとっては動かしがたい過去でも、数十年前から来たヘンリーにとっては本来の世界だ。わざわざ幼い息子を一人残し、賢人の知恵を何一つ知らぬまま無知なハンターとして死なせる道を選ぶわけもない。
「だがそうしたら俺たちのこの世界は」
「…消える、かもしれないね」
兄弟は顔を見合わせる。以前にも天使が兄弟の存在を消そうと、過去に干渉しようとしたことがあったが、起こることはそれと同じだろう。
「この数日見聞きした限りでは変えたくないほど素晴らしい未来とも思えないが」
ヘンリーは孫たちの動揺に対してそう呟く。
その言葉にサムは固まり、ディーンは声を荒げた。
「息子も孫も粗野なハンターになっててがっかりだよな。それでもこれが俺たちの現実だ。あんたたち賢人とやらが悪魔に蹴散らかされて消えても、悪魔や天使どものちょっかいを退けて続いてる」
「では、この世界を保つために私を殺すか?」
返されてディーンが詰まる。
ヘンリーが生きて過去に帰れば、恐らく歴史も変わる。だが、悪魔でも魔物でもない人間に手をかけるなど論外だ。
「とにかく、私は息子を守る」
ヘンリーはすい、とテーブル上に手をかざす。見ればいつの間にか小さな魔法陣が描かれていた。ハンターの反射神経とはかけ離れた運動能力の祖父だが、こういう作業をさりげなくするのはさすがだ。口の中で何か小さく呟くと魔法陣が強い光を放ちだす。
「おい!?」
誰何するうちにも炎の輪が勢いよく立ち上り、それが消えた時には若い祖父のひょろりとした姿はなかった。
「…どーなるんだおい」
仮にも祖父を(しかも自分を魔物のエサにしたわけでもない)殺す気など毛頭なかったとはいえ、自分の根本に関わる歴史が変わる瞬間に立ち会ってしまったディーンは呆然と呟く。それでも父を捨てたと思っていた祖父の事情を知り、ほっとした部分があるのも確かだ。
「ヘンリー、…祖父が帰ったことで、ここと別の世界が生まれるのかもしれないね」
「…」
そう聞いてディーンは昔見た終末後の未来を思い出した。
荒廃した街。
悪魔の器になり果てた弟。
ただの人間になった天使。
あの時未来の自分は、過去に戻ってその世界を変えてしまえと言っていた。リセットを望んでいた。
あの世界では自分もキャスも死に、弟もある意味死んだようなものだから、むしろ消えたと思いたい。
サムが不意にディーンの手をつかむ。
「ディーン、消えるかもしれないから言っておくけど、僕は何回も間違えた。みんなを守ろうとしたのに事態を悪くしたし、兄貴を失望させた。何回も」
「おい、なんだよ懺悔か?」
ディーンの茶化すような声にもサムは取り合わない。
「そうだよ。歴史が変わって、もし僕らがまた生まれてもこんな僕みたいな間違いもしないですんで、そのほうが結果的には良いのかもしれないけど、だけど」
残った時間がわからなくて、早口にまくしたてる。
こんな呪われた自分が消えてしまうのはいいのかもしれない。世界にとっても、兄にとっても。
だけど。
強い力で手を掴み返されて、思わず視線を上げた。緊張に顔を強張らせ、だが口の端を上げてみせるディーンの顔がある。
「俺は、今のままのお前でいいぞサミー」
意外すぎる言葉に、目が丸くなったのが分かる。ディーンの表情がしてやったりと言った笑顔に変わる。
「じゃあ…」
そこで彼らの世界は途切れた。