なんかもう、こんな時期に何をやってるんだと思いますが、脳みそが他に向かないから仕方がない!
拍手やコメントありがとうございますーー
もはや前のものは読み返せません。つじつまは後で合わせる、もしくは忘れる。ゴーゴー自分。
明日は明日の風が吹く。
・・・
式典があるというのは前々から聞いていたが、準備に来い、と言われたのは初めてだ。
仕事が忙しくなってきたディーンは、呼び出しに頷きつつも少しわずらわしさを覚える。成り行きとどさくさで獲得した「宣伝部長」のポストだったが、役職があるというのは素晴らしくて、仕事に関係する部分については閲覧できる資料やデータが格段に増えた。
そして、久しぶりに名刺を作った。他愛ないと自分で思うが、何となく嬉しくてつい見返してしまう。
表面的名目としての肩書。
そして人脈としてのサムとの繋がり。
二つ揃えて上手く使うと、かなりなことができるのではないか。
(待て、落ち着け)
集めた資料を見ながらどんどんテンションが上がりそうになるのを自分で宥めた。
外部への随行が始まって以来、社内でディーンは控えめにいってもちやほやされている。それに奢りすぎると後日の反動がでかい。
(着実にだ。サムの七光り効果があるうちに、実績を上げて地盤を固める)
もう一度自分に確認して、ディーンは一つ息をついた。
「衣装合わせ?」
宮殿に着くと、ぞろぞろ出てきた見慣れない女官たちに取り囲まれた。初めて入る小部屋であれやこれやと大仰な衣装を被せられる。
(なんなんだ)
着る服を指示されるのはいつものことだったが、これは初めてだ。
帯の色だの装飾品の石だの、細かいことをわいわい頭の下で言い交わす女官たちに、右を向け左を向け歩け振り返れ屈んでみろ等々こづき回されて、ようよう解放されたのは夕方近い。
今回も個別の部屋はあてがわれず、サムの部屋に送り届けられたが、部屋の主はいなかった。少し迷ったが窓際の長椅子に転がる。慣れないことをすると立っているだけでも疲労した。
うとうとし始めたころにサムが部屋に入ってきた。
「終わったか」
「多分な」
声をかけられるのに長椅子にひっくり返ったままなげやりな返事をする。我が物顔に髪に触れてくる指がうっとうしく、手で払った。
「もう一度って言われても御免だ」
女官の群れの真ん中にいたが、正直終わったのかわからない。本人たちはしばらくすると、「さあこれから支度が大変だわ」とかなんとか言いつつディーンを置いて自分たちの仕事場に戻ってしまったからだ。
「なるほどな」
愚痴混じりのディーンの話を聞くと、サムは小さく笑った。そして椅子はいくらでもあるのに、ディーンの転がる長椅子に座らせろと肘掛けに乗せた足を軽く叩く。
「何だよ」
「話がある」
珍しい言葉を聞いて、ディーンは顔の前に組んでいた手を退けて長椅子の前に立つサムを見た。見つめ返してくる顔を凝視しながらゆっくりと半身を起こす。
「………なんだ」
不穏だ。
アメリカならば一日に何回聞いても不思議の無い言葉だが、「主人」「持ち主」という態度になってからのサムから「命令」ではなく「話」と言ったことなど考えても咄嗟に思いだせない。
マディソン達の話が頭に浮かんで、どうしても警戒気味になるが、隣に座ってくるサムは気にした様子もない。
「ルシファーとあんたのことを話した」
いきなり怖い話をされてディーンは長椅子に倒れこんだ。
目立ちたくないのに、何をするのだこのバカ王子は。
「しばらく時間はかかったが話はついた。だからこれから話すことはあれ達も了承している」
倒れたディーンをそのままに頭の上で言葉を続けたサムは、そこで言葉を切って、ディーンの手に触れた。
「急に冷たくなったな」
苦笑されても何もいう気になれず、ディーンはサムを見返す。
サムはディーンを見下ろしながら言葉を続ける。
「今度の式は王室のものだ。今までの外部の催しとは意味合いが違う」
「…公式なのか」
「公式だ」
ごくり、と喉が鳴ったのが自分でわかった。
マディソン達の言っていた話と状況がつながってくる。ずっと倒れていたかったが、サムが手を離さないので諦めて座り直す。
「俺がそこでお前に随行すると、どうなるんだ」
今月、あるいは今年のお気に入り、と関係者に公言することになるのか。いつぞやのようにテレビで放送されたりするのか。
だが、サムの返事はもう少し酷かった。
「公式な席に同伴するのは妃達だけだ」
「というと?」
「三人目として公に知らせるということになる」
「…」
思わず目が半眼になる。
「…外国人や男は対象外だったはずだ」
最初にこの国に足止めされた時に調べていたことだ。サムは頷く。
「だから、完全に正式にというわけにはいかない」
いや、いかなくていい。
「だが、僕は継承順位がそれほど高くないからそういった決まりも厳密じゃない。『妃』ならばあれ達もこの間のように勝手なことはできなくなる」
「そうなのか?」
「そうだ。愛妾は僕の『モノ』だが、『妃』は配偶者だ」
そしてもう一度改めて手を取られた。
「僕はあんたを無理矢理この国に連れてきた。だからこれから言うことを拒否されても無理はないと思っている」
「拒否権なんてあるのか」
「ある。どうしても嫌ならな」
「…」
「だがその上で頼む」
そこでサムは一度言葉を切る。珍しくためらうように言い淀み、もう一度口を開いた。
「受けてくれ。あんたに傍にいてほしい」
続く
あと一回!今度こそ終わる!
それにしても今月あらぶ9本目じゃん。ばかだな自分。しかし波ってこういうものよね。
思うに任せんなあ…