頑張っております。頑張っております。
ムパラが迫ってくるのにあらぶー以外何も書いてないのが困りものですが、この波を逃すと終わり損ねるから走ります!
はしるーはしるー、おれーたーち。
誓って言いますが、今朝の通勤電車時点で書けてたのは最初の10行だったもんね。
今日も書けたことは自分をほめよう!質より進行だ!!←問題発言
ひっきりなしに何やらまくしたてているのは、先ほどディーンをこの部屋に入れた男の声のような気もしたが、通路で反響しているのと複数の声が入り混じっていて、何を言っているのかはわからない。
覗き窓から覗いた男と目が合い、きしむような音をたてて扉が開くと数人が入ってきた。一瞬ぎょっとするが、出ろという身振りをされるので警戒しながら小部屋から足を踏み出す。と、扉のすぐ外にこれまで見たことがないほど険しい表情のサムが立っていた。
「無事か」
短く聞かれて頷く。これまたとっさの時というのはなかなか声が出ないものらしい。サムの余りの形相に助かった確信が持てなくなってくるが、次の瞬間に馬鹿力で抱きすくめられた。密着するといつもの数倍早い気がするサムの動悸が伝わってきて、どうやら大丈夫らしいとほっと息をついた。
「君が私に連絡したのは適切だった」
横から声がするので顔を向けるとカスティエルが立っている。
「助かった」
「感謝は殿下にしろ」
言われて腕の中からサムを見上げる。だが眉間にたて皺をよせた顔を見ていると、困ったことにカスティエルに向けたような素直な言葉が引っ込んでしまった。
「お前への態度が不敬だそうだ」
「命じたのは僕じゃない」
「だろうな」
そう言うとサムの表情が少し和らぐ。
「お前に手をかけたのはどの者だ」
サムが訊ねると周囲の男たちがざわめいた。少し迷うがここは庇っても仕方がないので数人の男と携帯を持ってきた女を指す。
「ただ、殴る蹴るがあったわけじゃないぞ」
「僕の物に僕に無断で手をかけて閉じ込め、殺すと脅したなら十分だ」
何に十分なのかは知りたくもないが、いずれにせよ誰かの命令だったのは明らかだ。
「来い、ディーン」
サムはそのままディーンの手をつかむと、また部屋に逆戻りする。さすがにもう一度帰るとごねる気にもならず、大人しく部屋について行った。
部屋に入ったところで足が自然に止まる。
出ていった時と同じ景色の中に、数時間前には無かった二つの影が、ゆうらりと黒く立っていた。
(うわ、出た)
精神的に疲労困憊しつつも、ディーンは急いで貴人への礼を取る。
またも手を繋いだ状態だが、不可抗力だ。
「お帰り我が君」
「ごきげんよう我が君」
「お前たちどういうつもりだ」
挨拶の声を遮って、サムがお妃達に厳しい声を出す。
(ああやっぱり)
ディーンは横で頭を下げ続けながら、心の中で呟く。一応サムの愛妾であるディーンを宮殿内で牢屋もどきに放り込むのだから、サムと同等か上の人間の命令だとは思っていた。
サムの低い声にもお妃方は動じた様子はない。
「その者をお連れにするようだからね」
「悪いつながりが無いかは確かめないとね」
怒りも笑いも感じ取れない、ゆったりした口調は詩でも朗読しているかのように、不思議な抑揚がついている。
「そんな必要は無い」
「我が君がする必要はないよ」
「情深く疑いを知らない方だからね」
「命の瀬戸際でもその者は我が君の他に頼るものはないようだからね」
「よかったこと」
サムの抗議を、お妃達はあやすように受け流してしまう。
怖い。やっぱり怖い。
何やら脅しをかけつつ試されて、何とか潜り抜けたようだが、これからもこんなことが続くなら本当に神経が持たない気がする。
「言っておくが、今後どんな理由を付けようが、ディーンに一切手出しは無用だ。何かあった時には僕が対処する」
「お優しいこと」
「僕のものに二度と手を出すな。妃であってもだ。分かったか、返事は!」
「そんなに心配はいらないよサミー」
「その者におかしな係累はできていないようだからね」
「遠い国から攫われて来て宮殿の外で何年も経つのにね」
「一途だこと」
ふふふ、とおかしそうに笑い合う声を頭の上に聞きながら、ディーンは一途じゃなくてがんじがらめだっただけだ、と心の中で突っ込むが、もちろん口には怖くて出せなかった。
「さて、ではお暇しようか。我が君も夜中にお疲れだろうし」
結局サムの詰問にはっきりした答えを返すことなく、お妃達は別れの礼をした。サムも期待はしていないらしく言い募りはしない。
出口に向かって歩きながら、ふとルシファーが振り返る。
「先日の兄君のお怪我は事故ではないよ我が君」
「…分かっている」
サムの声が、ふと平らなものになる。
「その者を『お連れ』にするなら、私たちは構わないよ」
「その者なら子も産まないし」
「今度の式にお連れになるといいよ」
ではお休み、言い残して黒い影はするりと廊下に出ていく。後ろに従うお付き達も、仕込まれているのかほとんど足音をたてなかった。
「……怖い思いをさせたな」
深く息をついてから、サムがやっと頭を上げたディーンを振り返った。
「…なんだったんだ結局」
先ほどの会話から状況は分かるような分からないようなだ。
「ディーンが僕に敵意を持って、知らないうちに僕と対抗するような味方を作っていないかを確かめたんだ。あれ達なりには穏便に」
「はあ…」
「部屋も牢獄めかして作ってはあるが、設備は整っている」
「ああ、まあなるほどな」
確かに冷たくも湿ってもいない壁や床ではあったが、地下で冷えないように壁に温水パイプまで巡らしてあるそうだ。
「だが仮に俺がアメリカの知人に電話をかけたりしていたらどうなったんだ」
そう言うと握ったままのサムの手に力が入る。
「…分からない。だからあんたがキャスを選んで本当に良かった」
そう言ってもう一度背中に腕を回してくる。
さっきのような馬鹿力ではないが、深々と安心したように息をつくサムの様子からすると、やはり単なる脅しでは終わらない可能性もあったらしい。
「この件は終わったと思っていいのか?」
抱え込まれたままサムを見上げて聞くと、サムが目元で笑って、
「大丈夫だ」
と額に唇を落としてくる。
「俺は元通りの生活に戻っても?」
「大丈夫だ、心配ない」
言いながら髪を撫でられた。何をさっきから子ども扱いするんだと頭の片隅で思ったが、ふと気が付くと身体が細かく震えていて、なるほどと少しおかしくなる。ついでに両脇にたらしたままだった腕を持ち上げてサムの背にしがみつくと、サムの腕にさらに力がこもった。
しばらくそうしていると気分も落ち着いてきたので、腕を放して顔を上げる。
「今、何時だ?」
「なに」
サムが怪訝そうな顔をする。時計を確認すると真夜中は過ぎているが夜明けにはまだ遠い時間だ。
「やっぱりここで寝かせてくれ。部屋に戻ってから出勤すると寝る暇がなくなりそうだ」
気が抜けると一気に疲れが出てくる。ふわあ、と欠伸をかみ殺した。
「…アメリカ人は会社に行かないと具合が悪くなる遺伝子でもあるのか」
サムがため息まじりに呟くのに、
「俺はな」
だから今日は何もしないで寝かせてくれ、と笑った。
もうちっとだけ続きます
サムは『叱責』を使った!
お妃には効果が無いようだ
サムは『どなりごえ』と『こわいかお』を唱えた!
お妃はおどっている。
お妃は逃げてしまった。
…メタルスライムのような防御力の高いお妃さま方です
サムのパーティのディーンはお妃の一撃でとっくに戦闘不能だな。