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海外ドラマの超常現象の兄弟(SD)を中心に、頭の中にほわほわ浮かぶ楽しいことをつぶやく日記です。 二次創作、BL等に流れることも多々ありますので嫌いな方は閲覧をご遠慮くださいませ。
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(私の)夏休み企画 無配ペーパー〈兄弟酒場)

むーぎわーら帽子はー、もうきーええたーーー♪
…いきなり年のわかる懐メロですが、夏休みで数日ネット落ちしますので、ムパラ25のペーパーを携帯食料的更新ネタにいたします。
いや、ノック時ならともかく、今の状態なら休みが終わってから更新しても全然気付かれない程度なんですけども。
そして明日から何回かムパラのペーパーをタイマー設定してまいります。
さて、無事にアップされますでしょうか?

…ここで、「細工は流々仕上げを御覧じろ」と言いたくなったんですが、そんなにいうほどの細工はしてないので諦めました。しょぼーん。






さて、何度も繰り返すようだが、ハンター生活を引退したウィンチェスター兄弟の、今後の人生についての大きな方針は次の二つだ。

一つ、もうこれ以上天使だの悪魔だのに付き合わない。(聖書に兄弟の黙示録だか福音書だか作られたらしいが知りたくない)
二つ、今後の人間社会で生活を送る上で、できる限り法に触れる行為はしない。(なにせサムは今、念願の弁護士だ)

しかし、迷惑がられても近づくのが悪魔というものだし、相手の境遇が変われば、ちゃんとその新しい弱みを狙ってくるのも正しい悪魔だ。

・・・


「私がその在庫の山、どうにかしてあげましょうか?」
赤い目をした女が微笑んで言った。
「…恐ろしい誘惑だね」
「そうだな」
 発注ミスで山のように届いた食材を目の前に、どうするかで揉めていた兄弟は囁き合う。生きるか死ぬかの戦の中では「○○を生き返らせてやる」が主力商品だった悪魔の誘惑も、偽造カードが使えない今は運営面での誘惑の方が確かにぐらっとくる。ちなみに今日の悪魔はクロスロードで呼び出したわけではもちろんなく、飛び込み営業だ。配送のおばちゃんに憑依したらしく、受け取り伝票にサインをしろとボードを差し出している途中で目の色が変わった。何事にも待っているだけでなく積極的に売り込みをかけようという姿勢と熱意には感心するといってもいい。迷惑ではあるが。
 どうするかなあ、としばし顔を見合わせた兄弟は、目と目で意思疎通をすると頷き合い、入っておいでと入り口を開けておばちゃんを中に招き入れた。
おばちゃん(悪魔在中)から伝票のボードを受け取った弟は、サインをするかと思いきや、そそくさと部屋の隅のパソコンに移動して荷物を受け取らずに済む方法を調べ始める。
「ちょっと!」
と抗議の声を上げて追いかけようとした悪魔だが、例によって例のごとく酒場の床にも天井にも悪魔封じのサークルが仕込んであったので、一歩入ったところからぴくりとも動けなかった。
「話を聞きなさいよ」「助けてあげるって言ってるのよ」等々続く声を聞き流しながら弟が調べ物を続ける横で、開店準備中だった兄は携帯端末を取り出すとボタンを押して掃除に戻る。流れだしてきたのは録音してある悪魔祓いの呪文だった。生朗読ではないけれど、ちゃんと効いておばちゃんはゴフゴフし始め口から煙が漏れてくる。
「その、ふざけた、態度は、なんなのよ、あんた、たち!」
切迫感の足りない悪魔祓いを罵るが、悪魔封じのサークルの外の兄弟はどちらも勝手なことをしていて、ちらりと視線を向ける以外は携帯端末任せだ。
せっかく苦労して地の底からやって来たというのに、こんなマニュアル対応並の扱いをされて、しかもちゃんと祓われてしまうなんてこんな理不尽があっていいのか!?
約十分後、飛び込み営業の悪魔は無念の声を上げつつ、黒い煙になって地獄に戻った。


悪魔の文句など聞き流していた兄弟だが、煙を吐いた後きょとんとしたおばちゃんには丁寧に対応した。めでたいことに憑依されたのもついさっきらしく、おばちゃんの配送仕事にも影響はでていない。さらにサムが法律上の知識を総動員して無事に受け取り拒否の方法を見つけだしたので、おばちゃんにはチップをはずんで荷物ごと帰ってもらう。
「俺たちも丸くなったよなあ」
「うん。改めてみると悪魔祓いってすごく平和的だと思う」
「すっかり器ごと殺す癖がついてたもんな」
「それが、帰してやるだけだもんね」
兄弟は伝票を渡して送りだしながらしみじみと感慨にふけり、
「ウィンチェスターに絡んで殺されないとはな」
「引退したってのは本気なのかもしれん」
送り返されてきたお仲間をみた悪魔たちは地獄でささやき合った。




悪魔にも恐れられる兄弟だが、人間界ではぜんぜん恐れられていないし知名度も低い。
その日、カウンターの中にいるディーンは不機嫌だった。
むっつりとした表情で、棚の端から黙々とグラスを磨いている。グラス類が尽きても不機嫌が収まらなかったらしく、蛇口や取っ手も磨き出す。
開店前の店はまだテーブルに椅子が上げてある状態で、サムは隅において事務所用に使っている大きめの四角いテーブルから兄の方を見ながら苦笑を噛み殺した。
ディーンの不機嫌のわけは分かっている。昨夜珍しくカウンターに妙齢の美人が来て、むさいハンターとムキムキのソッチ系に囲まれた毎日にうんざりしていたディーンは
「遂に綺麗なおねーちゃんが来た!」
と大いに浮かれた。だが、やはりというか、こんなむさ苦しい客が溢れるバーに普通のおねーちゃんがふらっと来るわけもなく、おねーちゃんは実はおにーちゃんであったのだ。もともとはサムが弁護士で、訳ありの顧客を色々受けているという噂を聞いたのが来店のきっかけだったらしい。
ディーンとしては女にかけては百戦錬磨(自称)の自分がコロリと騙されて、さらにかねてより用意していた「きれーなおねーちゃんが来たらするサービス」を今こそ、とやりかけたのが悔しくて仕方ないらしい。
「いいじゃないか、綺麗なことは確かだったし」
「うるさい黙れ」
「言っとくけど、また来ても追い出すなよ。お客に変わりはないんだからね」
普段、ソッチ系の客の対応を一手に引き受けているサムがじろりと睨むと、ディーンは不機嫌な顔のままで
「そんなこた分かってる」
と返してきた。今やウィンチェスターのファミリービジネスは変化し、兄弟は酒を一杯二杯とコツコツ稼ぐ小市民だ。偽造カードを使わない生活では、稼がないと使えない。


 


小さな酒場は昼間は使っていないので、少し前から弁護士資格を取ったサムが事務所にしていた。もともとのターゲット層はまともな事務所に行きづらいハンター達だったのだが、次第に他の客もぽつぽつ来るようになっている。
「で、相談なんだけどね」
ある日珍しくディーンに外でランチを奢りながら(正確に言えば財布は一つなのだが)サムが言った。
「ディーンが暇だったら、昼間の電話だけ受けてくれないかな」
「なんだ、お前宛の電話良く転送してるけど結局とってねーのか」
「だって裁判中も接客中も取れないし」
「かけ直しじゃだめなのか。携帯に履歴残ってんだろ」
「うーん、やっぱりあまり痕跡残したくない連中もいるからさ、できれば人間が取れた方がいいんだよね」
「受付のねーちゃん雇うか、代行サービスでも使えよ」
「それができる財力があればね」
「おー…まーな」
何せ財布は一つなので財政状況は良く知っている。まともな市民生活はなかなか厳しいのだ。弁護士というのはみんなざくざくと儲かるのかと思っていたが、成功報酬契約だったりすると裁判が終わるまで収入が無かったりするし、負ければパアだ。しかもメイン顧客がハンターなもんだから、訴訟の途中で狩が失敗したのか消息不明になる奴も時々いる。前後の話から狩の対象の見当がついたとしても、追いかけていけば確実に弁護士の仕事からハンターに逆戻りなので、せいぜいお仲間に情報を伝えてやるだけで、帰りを待つしかない案件が複数あるのだった。
「出かけるときに大体の予定を伝えていくから、かけ直してもらうように伝えたり、こっちがかけてもいいから相手の連絡先を聞いてほしいんだ」
「めんどくせえ…」
「ディーン、電話がつながれば六分単位で相談料が請求できるんだよ」
「まじか」
「うん」
「だけど、そのためには相手の身元をしっかり訊いておかないといけない。兄貴ならそういうの得意だろ」
「んなわけねーだろ。受付事務なんかしたことないぞ」
「FBIとか新聞記者とか何度もやってきたじゃないか」
「…ああ、それか」
 確かに狩のために身分詐称して色々なことをやってきた。FBIの捜査員は多かったが、自然保護観察官、雑誌記者、学生、神父等々、電話受付くらいどうということもないといえる。だが、
「身分詐称じゃねえのって落ち着かねえな…」
「………それはハンターの職業病だよ」
わかるけどリハビリして社会復帰しようよ。兄の呟きに弟は眉を顰める。

そんなやり取りをした数日後、兄弟の酒場に珍しくハンターでもなければボディビル系でもない客がやってきた。二人連れの安っぽいスーツを着た男は、一番安いビールを頼んで一口飲むと、ぐいいっとカウンターから身を乗り出してきた。
「ちょっと聞きたいんだけど、この男見たことないかな」
差し出された写真をちらりと見て、ディーンは首をふる。
「さあ、わからないな。顔はあんまり見ないんでね」
(口には出さないが、今まで聞き込みをしてきた数多くの酒場の親父の言い方から厳選した渋い言い方を再現している)
素っ気ない返事にも平気な顔で、男は名刺を取り出した。
「もし見かけたら連絡くれる?従兄弟なんだ」
そう言って出ていく男を見送りつつ、兄弟はひそひそ囁き合う。
「…ものすごく下手な聞き込みだね。…FBIかな」
「浮いてたなあ。なんかケツがモゾモゾしたぜ」
((もっとましな聞き込みのやり方を教えてやりたい))
 十年以上、聞き込みをしまくってきた引退兄弟の心は、その時多分一つだった。

そしてどうなったかというと、結局ディーンは弟の頼みを引き受けた。電話の相談でも金になるだの、あの下手糞な聞き込みで給料がもらえるなら、俺たちはもっと稼いでいいはずだだの理由は色々あるが、単純に昼間が暇だったこともある。遊ぶにも金がいるのだ。まっとうな市民生活は厳しい。弟は兄の状況をよく分かっていた。


 
 ちなみに兄弟の酒場には、その後「びっくりはしてたけどマスターがすっごく優しいのよ!」というおにーさんなおねーさんの口コミ効果で、華やかなお客が増え、カオス度はさらに増した。しかしおにーさんなおねーさんは結構金払いもよかったので兄弟の笑顔にも少しばかり本気が入り、結果店はますます普通の綺麗なおねーさんと遠い方向に発展していくのだった。


というわけで平和な引退生活を望んで終わる。

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