考えてみたら昨日は前夜祭だったわけです。
当日に何一つ更新がないというのはいかがなものか。
いかがも何もないわいな、という声はまあおいて、ちょこっと浮かんだ幼馴染のおまけ。
玄関の扉が開く音に、ふと意識が浮上する。
(ああ、帰ったのか)
真夜中には少し早いが、夜はとっぷり更けている。今日は飛び込み修理の客が多くて忙しかったディーンは、サムの帰宅を待たずに自室でベッドに入っていた。
どさり、とソファに腰かけるような気配がする。テレビのスイッチを点けると途端に響く音に驚いたように「うわ」と小さな声がして、音量が絞られた。
音が大きいのは少し前までテレビを見ていたディーンのせいだからそんなに気にしなくてもいいのだが。ディーンは意識だけで笑う。
隣のサムの部屋に入る気配、シャワーの音、キッチンを歩きまわりフリッジを開ける。
サムの気配。
例えそれぞれの生活がすれ違いだったとしても、確かに一緒に暮らしていれば毎日その気配を感じることができる。そしてそれで心の結構な部分が満たされるのはサムとの暮らしに戻ってから知った。
枯れたのかもしれないし、逆にガキ臭いのかもしれない。どちらでも別にいい。
ぼんやりとした幸福感の中で、また意識は眠りのなかに沈んでいく。
と、今度はもう少し近くで扉がそっと開く音がして、慣れた気配がそっと近づいてくるのを感じた。
(おいおいかんべんしろよ)
正直今日は本気で疲れている。意識は半分くらいあるのだが、起きる元気があるのなら、サムが帰ったところで水を飲むふりでもしてキッチンへ行っていた。
だがサムの気配は覆いかぶさってくるわけでもなく、ベッドの横に留まっている。
「ディーン」
ごくごく小さい声は、囁きというより口の中でそっと呟かれたのだろう。そして起こさないようにしているのがまるわかりの慎重さで、頭にそっとキスをされたのがわかった。
(うわ)
サムの体温は数秒とどまり、触れたときの慎重さと同じようにそっと離れる。扉が閉まり、サムが自分の部屋に入る気配がした。
もしもこれが夢ならば。
ディーンは動く気配を感じなくなった家で、今度こそ眠りに落ちつつ考えた。
俺の頭はティーンエイジャー並のお花畑になってるのに違いない。寝顔にキスをされて幸せだなんてどこのお嬢ちゃんだ。
夢でなくても幸せだと思ったところでアウトな気もしたが、それは置いておく、と思ったところで意識は途切れた。
「おはよう」
「おう」
朝のシャワーを浴びて髭を剃っていると、寝癖のついた頭でサムが起きてきた。
「えへへ」
突然へらりと顔を崩すので、
「なんだよ」
鏡ごしにじろりと見ると、
「やっぱり一緒にいるといいよね」
と笑う。
「まあ、確かにな」
ディーンがそう返すともう一度ニコリと笑ってバスルームへ消えた。
また一週間は始まったばかりで、のんびり過ごせる週末は遠い。
それでも一日の始まりと終わりにはサムの姿があるのは結構なことだった。
終わる。
ほほほ。昨日はぴば更新が終わったと思いこんでいるであろうKさんとsさんおめでとう~しつこく4回目よ~おほほほほほ(既にお祝いと違うものになってきた気もするけど気のせい気のせい)
[33回]
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