昨日の夜中に、
「なんで淡々同居兄弟の話のはずなのに、ジョーのセリフの方が多いんですか」
というコメントをいただく夢を見て、朝から気になって仕方がありません。(注:実在のコメントではありませんのよ)
私の脳内のSDコメンテーターさんは、昨日の更新に納得がいかないらしい。
そうか!
…というわけで自分の脳内突っ込みに押されて、朝っぱらから補足です。
オフの朝から汗だらだら流しながらなにやってるのかしら…
レストランを出てジョーの車を見送ると、サムは兄を振り返った。
「帰る?」
「ああ」
先ほどジョーの前で身体の鈍り具合をくそみそに(事実ではあるが)言われたことについて、もしかして何か言うかな?と思ったが、ディーンはこちらを見ず、他のことを考えているようだった。
(まあいいけど、事実だし)
そう思いながら自分の車に乗り込む。エンジンをかけながら兄の方を見ると、なぜかまだインパラに乗り込んでいなかった。
「ディーン?」
呼びかけると気が付いたように顔を上げる。そしてしばらく見なかった表情の読めない顔で口を開いた。
「悪い、ちょっと出かけてくる」
「あ、うん」
もともといつも一緒に行動しているわけではない。サムは深く考えず街の外の方に向かうインパラを見送った。
分かっていたはずだった。
特に目的もなくインパラを走らせながら、ディーンは自分に言い聞かせる。
狩の頻度が減った自分でさえ、ピーク時に比べれば鈍くなった。大学に入って以来普通の暮らしをしていた弟が、戦い方を忘れていても何の不思議もなかった。
だがそれでも。
先ほどジョーを傷つけずに抑えようと苦労する姿を見て、波だった神経がなかなか収まらない。もしも、何かに襲われたら、今のサムはひとたまりもないだろう。ごく普通の、一般人並に。
(落ち着け)
車の多い街を抜け、少しスピードを上げる。
サムは今、ハンターのように鍛錬をする必要はない。父が一番懸念していた企みも、あの黄色い目の悪魔を倒したことで消えた。
むしろ必要もないのに鍛錬をすることで、自分から危険に近づく可能性もある。それこそジョーのように。ディーンは数十分前に別れた少女の顔を思いだして、小さく息をついた。
どうしようもなく大きな危険は排除した。それで良しとしたはずだ。
どんな人間にも危険はある。全ての危険から誰かを守るなど不可能だし、サムも望んでいないだろう。
酷く久しぶりに、父に会いたいと思った。
「なにやってんだ?」
しばらく後の週末の朝、ディーンがキッチンにいると、何故かサムが外から帰ってきた。汗でびっしょりTシャツが濡れている。ものも言わずにフリッジを開けると、ミネラルウオーターのボトルを取り出して一気に飲み干した。
「……ジョギング」
はーはーいう息の下から絞り出されたそれが、さっきのディーンの言葉への返事だと分かったのは数秒後だ。
「………鈍ってるなあ」
「そうだな」
即答したので何か言い返すかと思ったが、サムは黙ってシャワーを浴びに行ってしまった。
ディーンは忘れていたが、ウィンチェスター家の次男は凝り性だった。
そして弁護士の生活にハンター的な鍛錬は不必要だが、ほどよく鍛えた身体はエリートにとって節制した生活のアピール手段でもあった。
そんなわけでディーンはそれ以来、何かというと家のリビングや台所でゼーゼーはーはー言いながら筋トレをしている弟の姿を見かけることになり、どうも筋肉のつきやすい体質だったらしい弟はみるみるうちにがっちりしてきた。ついにはある朝、
「あ、ワイシャツの襟がきつい…」
と言いながらネクタイを締めている姿を見ながら、
「ほどほどにした方がいいんじゃねえか」
と呟くことになるのだった。
終わる
また良く分かんないけど兄弟の出番を増やしたからいいのだ!
[28回]
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