えー、これまた唐突なタイトルですが、neotenyの咬さんがムパラ後に日記でネタ募集をしてらしたんですよー。そんでわたくし、以前に読んだ咬さんの悪落ちネタがちょーーーーーー好きだったので書いて書いてとリクエストしたわけです。
そうしたら「悪落ちどんなかなー、どんなかなーー」と楽しみにするあまり、自分の脳内にも悪落ちイメージがモワモワ浮かんできたんですね。
残念ながら咬さんのように悪落ち、かつ兄弟ラブ!みたいな色気のある風景は浮かんでこないんですが、脳内のモワモワは出してしまわないと次が続かないので小ネタ(?)メモです。
温いですが苦手な人はご注意くださいませ。
S3の後、兄貴復活せず地獄にいたまんま、サミーが魔王になったなら
地獄に落ちたディーン・ウィンチェスターが念入りな待遇を受けた末に悪魔の軍門に下り、魔王解放のために第一の封印を解いたのは随分と昔のことだった。
役目を終えた人間の残骸は檻の中に放置され、ぐずぐずと形を失くしたそれを時折気が向いた悪魔が暇つぶしに嬲った。地獄に何万と蠢く魂のなれの果てと同様に。
一方で 数千年をかけた計画は成就し、運命の子は悪魔たちの新しい指導者となった。
地上を焼き尽くしての戦いが済んだ後、魔王は地の底の玉座へと降りてくる。
だが大半の悪魔の予想と期待に反して、人の子は魔王の器になるだけでなく、サム・ウィンチェスターの人格と記憶を残していた。
「兄はどこだ」
降りてきたサムの第一声はそれだった。
言を左右する悪魔たちを振り払い、アラステアの城の一角にうずくまる黒い塊を見つける。
手もなく足も無く顔すらない。軟体動物のような黒いものは地獄に文字通り溢れている。
「ディーン」
呼ぶとそれは低く悲鳴を上げて地を這った。嫌だ寄るなと毒づきながら近づいてくる手を避けようとする。
「ディーン、僕だよ」
サムは、ずるずると逃れようとするそれをたやすく捕まえて持ち上げた。
自分の名前も忘れた魂のなれの果ては、しばらくの間持ち上げた手から逃れようと蠢いていたが、やがてどうやら久しぶりに刻まれるわけではないと察して大人しくなった。
玉座に群がる悪魔たちの注視の中で、サムは黒くうごめく塊を膝に乗せてそっと撫でた。
次に行われたのは粛清だった。
「ディーン、どいつにやられた?」
(ここにいる奴全部)
どよめく悪魔たちにちらりと目を向け、サムは兄を撫でる手を持ち上げると軽く振る。
魔王の兄を刻んだ悪魔たちは、大も小も関わりなく火に焼かれて消えた。
人の形と記憶は無くしても、地獄でなぶられた記憶には事欠かない塊はゲラゲラと笑い声を上げる。
サムは微かに眉を顰めたが、膝に乗せた兄を撫でる手を止めはしなかった。
しばらく刻まれない時を過ごすうちに、ディーンは少しずつブヨブヨとした塊から、人の姿をとるようになってきた。
「何か思いだした?」
だがサムが尋ねても首を振る。髪を撫でると、怯えたように身体を引いた。
「ディーン?」
今頃どうしたのかと少し驚いてサムはディーンを見つめる。
だが、サムの様子を伺いつつ、人の形を留めようかどうか迷う様子を見ていてふと目を細めた。
「そうか、その姿でいると酷い目に会うんだね」
そしてまたサムは「どいつ?」と尋ね、ディーンの指さす悪魔が大量に焼かれた。
悪魔が焼かれると手を叩いて笑うディーンだったが、新しい魂が墜ちてくる時は反応せずそっぽを向く。
人格と記憶は戻っていなかったが、少しずつ表情は出てきた。
「大事なものがあったんだ」
がらんとした広間で、玉座の下にうずくまりながらディーンは呟く。
大事なもの、大事なもの、大事なものがあった。
そう繰り返すディーンをサムは覗き込む。
「僕だよ」
「違う」
こんなに強くて大きいものじゃない。小さくて、柔らかくて、違うもの。
そう言いきる兄を見つめてサムは微かに笑う。
「まあいい。時間はある」
争いはとうに終わり、愛した人たちは皆天に去った。
憎んだあれこれも踏み潰し消し去った。
あとの日々は愛も憎もない。
どうでもいいもの達が蠢くのを見ているだけだ。
要るものはすべてここにある。
サムは膝をついてこちらを見上げるディーンの髪を撫でる。
奉仕の促しかと思ったのか、にじり寄って開きかけた唇を、苦笑してサムは止めた。
てな感じ。
兄貴の形態が黒いスライムっぽいイメージなので、某スライムチャレンジに投稿しようかと思ったけれど、筋も何もないので止めました。
きっともうしばらく経つと膝に抱えられた格好で
「あれ?」
とか正気付いた兄貴が、
「なんてこった何百年もこんなざまを」
とかぼーぜんとすることでしょう。
そのころにはもう地獄の悪魔も全部代替わりしてるので、新人悪魔たちには「王様と兄上(膝指定席)」は当たり前風景でだれもからかわないので余計いたたまれない。
あ、今さらですがルシファーの人格(?)はまるっと忘れてサミー=魔王で貫こうと思います。