①揉めるケース
めっきり危険度が減った(当社比)と評判のロボサム社長。そんなある日にどっかの女社長とわりとまともに会話をしてる。「パートナーってあちらにいる彼?」とか訊かれて秘書の方にちらっと視線をやる社長。
「ええ」
「ハンサムね」
「まあ」
「時々こちらを見てるわ。気にさせてるかしら」
「秘書だから当然だ」
てなこともいいつつ仕事の話。わりとパキパキ物をいう女性ということで。
で、ボビーやキャスなんかはこの辺で頭痛を感じ始めるんだけど、
社長が女性と普通に話す→秘書の言動がややおかしくなる→社長が覿面にイライラする
というのが定番パターン。
その日の夜なんか部屋に帰ると、ディーンは少し口数が少ない(いつも別にそんなに多くないけど)。で、あんまりロボを見ない。
「メシだメシだ」
とかボソボソ言って、食事の準備したりする。(ハウスキーパーさんが作ってくれてるのを出すだけだけど)
で、ロボの方もいつものことなのですぐに爆発はしない。無表情にディーンの様子を見てる。
ディーンが何を考えてるかと言うと、別に浮気を疑ってるわけではなく、でも気の合った女性ができてくっつくなら絶対その方が良いんだよなあ、とかサムの立場を考えてしまっていると。
「君はいっそこう考えてみるといいと思う」
社長がブリブリ放電してるある日にキャスがもんもんぐるぐるしてるディーンに話しかける。
「君が考えている通り、サムは他の女性とも付き合える状態になってきた。なので社内外になるべく悪い影響を出さずに、有益な女性をサムのパートナーの位置に持ってくる方法を提案してくれ」
「え」
考えるのを吹っ飛ばしてぐるぐるした方向の具体案を出せと言われて固まるディーン。
と、その固まった顔をキャスがスマホでパシャッと撮ってどこかに送信する。
「………何やってんだ」
目をほそーくしてディーンがキャスに訊くと、
「社長に、君は別れることを考えただけでこんな顔をするから大丈夫だと教えている」
「何だそりゃ!?止めろよ!」
「君の心情を考慮している余裕はない。周囲のためだ」
ぎゃあぎゃあ揉めてるとキャスの携帯にサムからの着信。
『すぐに来い』
短い文なんだけど剣呑な雰囲気満々。覗き込んだディーンが、
「俺が行こうか」
とか思わず心配になっちゃうくらいなんだけど、キャスは無表情に
「余計こじれる」
とか言って行っちゃう。その後姿は自分から危険な場所に踏み込んでいっちゃう『無事で帰れなさそうフラグ』立ちまくり。
「おいキャス…」
呼びかけるディーンにボビーが、
「お前はこっちを手伝え」
とか仕事を振る。しばらくすると無表情にキャスは帰ってくるんだけど、無表情にダメージを受けてるのが分かる顔。
「キャス」
心配になって近づくディーンに、キャスが、
「サムのところに行け」
とか低く言う。ボビーも目線で促すので、早足で社長室に入るディーン。振り向いたサムが近づいてきて腕を掴む。
「何を言われた」
で、さっきの話をするディーン。サムが目を眇めて
「キャスの話と一致する」
とか言う。
「当たり前だ」
とディーンが顔をしかめると、サムは冷たーい視線で見下ろす。
「あんたがまた飽きもせず似たようなことを考えるから面倒なことになる」
「具体的には何もしてない。考えることまでお前にあれこれ言われたかねえな」
「だろうね」
サムが頷いて、腕を回してくる。
「おいよせ」
職場でくっつくのがやっぱり抵抗がある秘書がよけようとするんだけど、ロボは譲らない。
「どうせあんたは分かんないんだから、2,3分じっとしてなよ」
といいながらぐいぐいソファに引っ張っていく。並んで座らされて、取りあえず何度かキスされてちらっと時計見たらまだ30秒しか経ってないので焦る秘書。
「2,3分は無しだ」
と押しのける。
「行きたいなら、あんたからしなよ」
というロボに、昼間っからあほかお前は、とか言いながら軽くキスしてやって秘書スペースに帰るディーン。
「大丈夫そうだな」
とか先輩たちに言われて、うーん、良く分からんがすまん、と謝る秘書。
とかとか。
あれ?あんまり揉めてないっすね。そして揉めない方の蛇足に行く前に力尽きてしまった
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