数週間別居してたディーンがやっと帰ってきたので取りあえず浮かれるサム。
「ディーンがいない間、やってみたら22時には家に帰れたんだよ。今までの働き方反省した。これからも夜ちょっと話せるくらいの時間には帰れると思うんだ」
なんて本人としては殊勝に謝ってみたりしたんだけど、ディーンの方は「へえー」って感じの反応。
「なに、そのどうでも良さそうな言い方」
速攻でムッとする弁護士先生。だが、ディーンは物わかりわるいなてめーってな顔で、
「前から言ってるが、俺が『寂しいからもっと早く帰ってくれ』なんて言ったかよ」
と返す。
「言ってないけど…」
言われてないけど、自分が気になっているのでこだわり続けるサミーちゃん。
あー、やっぱり分かってねーなー、と思いつつも、それでもしょーがないと思って戻ったのを自覚しているディーンは前のようにムッとはしない。
ディーンが突っかからないとサムの方もちゃんとディーンが前に言ってたことを思い出す。
「でもさ、僕があれこれ買ってくるのは嫌なんだよね」
しょぼん、と絵に描いたような悲しい顔をされてちょっと困るディーン。
しばしムムムと考え込んだ後、「あのな、サミー」と向き直る。場所としてはリビングのソファーで、隣り合って座ってるということにしよう。
「お前、前に野菜のへ…パックに入ったスープとかやたらと買ってきただろ」
変な、という形容詞は辛うじて飲み込む。
「うん」
頷くサム。
「例えば俺がな、『この店のリブステーキは旨い』とか『このチーズバーガー旨い』とか『このフレンチフライさいこーだ』とか毎日お前の分も買ってきたらうれしいか?」
「そんな高脂肪食ばっかり身体に悪いよディーン」
「うれしいかって聞いてんだよ」
「気持ちは嬉しいけど困る」
「だろ」
「……野菜スープは胃にも体にも悪くないよ」
「困るかどうかで考えろよ」
「えー…」
「夜一人で健康スープ啜るなんて想像するだけでジジイになった気分だぞ」
肉体労働で疲れて帰った夜に、味があるんだか無いんだかわからないスープをレンジで温めて食べる姿を想像して、ディーンはそのわびしさに真剣に身震いした。
が、サムは別の方向に反応する。
「一人じゃなかったらいいの?」
「あ?」
「一人じゃなければ、野菜スープでも食べる?」
「……つーか、お前しょっちゅう作るし買ってくるじゃねーか」
そう、たまの休日に食事を作る時は、サムは勿論自分好みのものを断固としてメニューに並べている。そしてそう言うときにディーンは何のかんのと文句を言いながらも、全面拒否ということはせずにそれなりに食べるのだ。それは一緒に暮らす前、向かいに住む幼馴染だった時からもそうだ。
「そうか…そういうことか…」
「おい、サミー?」
手の中のグラスをちょっと浮いた感じの目で見つめながら、うんうんと一人合点し始めたサムの様子にディーンが不審そうな声をかける。が、不審がられていることは多分気づいていない晴れ晴れとした顔で、サムは不意にくるっとディーンに向き直った。
「つまりさ、何かディーンに買って帰りたいときは、一緒に食べるのを前提にすればいいんだ」
「……そうなるのか?」
「もちろん一緒に夕食が摂れるくらいに帰れたら一番だけど、そうでなければ週末用か朝食だよね」
「…なんか、話がずれてねえか?」
「ずれてないよ!僕は体に優しくて効率的な働き方を意識できるし、ディーンと過ごす時間も増えるし、ディーンは野菜をちゃんと食べるし、いいことずくめだ」
明日から頑張るね!
どうやら途中からほろ酔い状態だったらしいサムは、微妙な顔をしたディーンの様子を気にせず、一人で納得してニコニコ笑うとそのまま隣にもたれかかってくる。
「おい、サミー!」
顔は可愛くても重量級の物体にはしゃいで凭れられたので、グラスの中身がこぼれそうになったディーンは抗議する。が、肩に頭を乗せたサムが笑いながらキスをしてくるので、まあいいかとあれこれ追及するのは止めにしてグラスを傍のテーブルにそっと置いた。
とかとか
ああああ、また途中からネタのような文のような変な物体に。
でも手入れする気力ないのでこのまま上げます。あーがーーー
[33回]