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海外ドラマの超常現象の兄弟(SD)を中心に、頭の中にほわほわ浮かぶ楽しいことをつぶやく日記です。 二次創作、BL等に流れることも多々ありますので嫌いな方は閲覧をご遠慮くださいませ。
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アラブ太腕繁盛記9

年の瀬ですねー。
本日は掃除をしたり料理をしたくないとウロウロしたりしながら、片手間にアラブの続きを書きました。本当は見なおした方がいいんだろうけど、気力ナッシング。
あとで見かねたところや、前に書いたところと激しい矛盾があったら直しに来ます。たとえストーリーに大きく関わるところであっても←おい
だってアラブ―はてきとーないい加減な話なんですものーーーー!
そんな寛容なお心もちでよろしくお願いいたします。






仕事仲間と一杯やりながらテレビでスポーツ観戦などというのは、実に良くある話だと思う。だが、国が違えば一杯の内容も違う。この国ではアルコールは違法ではないが、公の場で酔った姿を見せるのは感心されない。
なのでディーンが同じマンションに住む同僚の部屋で、サッカーの試合を見ながら飲んでいるのはもっぱらコーヒーだった。地元の言葉で交わされる雑談にもさすがに大分慣れた。仕事の場以外での付き合いが、多少なりともできるようになったのは結構なことだったが、周囲はやはり気楽な付き合いとは言い難い様子だった。

夜21時が近づくと、周囲がそわそわしだす。
「おい、そろそろ帰れ」
と率直すぎる声をかけるのは、大概家主のベニーだ。
「ああ」
気付いたディーンも座っていたクッションから腰を上げる。前にゲームがいいところだったのでつい長居をしてしまったらえらいことになったのだ。
夜は冷えるが、なにせ同じマンションで階が違うだけなのできっちり上着を着るほどのこともない。
「じゃあな」
と居残る同僚たちに声をかけ、ドアを開けたところでぎょっとした。見慣れてしまった黒服たちと相変わらずしけた顔の侍従が、突入待機完了といわんばかりに玄関前の廊下に並んでいる。
「遅くまで他人の家で過ごすのは感心しない」
「遅いって、まだ子供でも外にいる時間だぞ」
「君は子供ではなく、殿下の物だ」
「…そーかよ」
いつもながららちが明かない。
横を通り過ぎて自分の部屋に戻るべくエレベーターに向かうと、侍従が口を開いた。
「殿下に何かお伝えすることはあるか」
振り向くが、そのいつも同じようににしょぼくれた顔からは感情が読み取れない。
ディーンは少し迷ったが結局、
「いや、別に」
と答えてエレベーターの扉を閉めた。

早いものでまた一年が経とうとする時期だが、ディーンはサムへの面会の申込みをできずにいた。サムとはたまにすれ違うが、特に声をかけない限り、オーナーであるサムと、平の職員であるディーンではせいぜい挨拶程度で、接触する機会はなかった。
そして前回の件から触れる=寝る、という図式が頭のなかにできてしまい、どうにも申し込みづらく日が過ぎている。
仕事の合間はなしだというのは決定事項だが、ではどうするということだ。侍従を通じて面会を申込み、場所は相手に合わせるというのが常道ではあるが、できれば王宮には近づきたくなかった。
まあ、まだ日はある。
そう思いつつ、ディーンはまたその問題を保留の項目に入れた。

 


カスティエルが主人の部屋に報告に行くと、サムは珍しく日常着のままだった。
「ディーンは」
「部屋に戻るよう伝え、確認して参りました」
「何か言っていたか」
「いえ」
応える言葉にサムは顔をしかめ苛立たしげに息をつく。その顔をちらりと見やってカスティエルは続けた。


「殿下が気になさることではございません。彼は期限のことは承知のはず」
「ふうん」
「期限が来ましたら、適切に対処いたします」
頭を下げて辞去する。主の顔は見なかった。


 


廊下を戻っていると、同輩であるクラウリーがふと隣を歩いていた。いつものことだが、気配を消して近づくのが迷惑なほど上手い。
「意外だな」
ひそりと囁かれてちらと横を見た。
「なんのことだ」
「あのアメリカ人だ。期限まであと2月、だが殿下は来週には海外に立たれる」
「そうだな」
「今度こそ処分かもしれんな。すっきりする」
「ふむ」
廊下を歩きながら周囲に聞こえない程度の声で会話を交わす。
「てっきりお前は庇うかと思ったが」
「まさか。殿下はご自分のものに干渉されるのはお嫌いだ」
「それはそうだな。とばっちりはたまらん」
「……」
通路が二手に分かれたところで、侍従たちも左右に別れる。夜は更けたがまだ互いにすることはたんまりと残っていた。


 


昼は容赦なく暑いが、陽が落ちると途端に気温が下がる。会社近くの店で簡単に夕食を済ませたディーンは、一歩外に出てブルリと身体を震わせた。普段は会社の車を借りているが、今日は他に使うとかで足がない。
(歩くか)
そう思って足を踏み出しかけてふと止まった。店の前に停められた車から、背の高い人影が降りた。まさか、と思う間にも近づいてくる。
「サム」
「何故面会を求めない。死にたいのか」
いきなりきつい声で低く叱咤され、面食らう。
「まだ、期限じゃないだろう」
「僕は明後日には出張で海外だ。しばらく戻らない」
言われてぎょっとした。
「キャスから何も聞いてないのか」
問われて首を振る。会うたびに伝言の有無は訊かれていたが、サムの予定に関することはこれまでも一切教えられたことはない。サムは「それはそうか」と呟く。
「来い」
いきなり言われてぎょっとした。後ろに停まる車とサムを見比べる。まさに命の瀬戸際だ、四の五の言っている暇はない。そう動きたくないと強張る足を叱咤する。と、視線に気付いたサムが苛立たし気に舌打ちした。
「違う。ここへ来いと言ってる」
軽く広げられた腕にやっと気づいた。
「ああ」
そっちか、と口には出さなかったが、顔に出たのだろう。
「僕だって暇はない。この後すぐ戻るんだ。早くしろ」
さらに急いた口調に腹が立たなかったのは、サムが本気で時間がないのが何となくわかったからだ。二三歩の距離を詰め、サムの前に立つ。また、この前と同じく嬲られるかと思う間もなく長い腕に抱きすくめられた。
「サム」
馬鹿力に抗議しようと口を開く間もなく、抱擁は解かれる。そしてあっという間に背を向けた。
「戻る」
「サム!」
呼んでどうしようというのでもない、ただ口が動いた。車に乗り込む直前の背が、一度だけ振り向く。
「生きて、好き勝手したいならするべきことはしろ。僕に手間をかけさせるな」
そう言って侍従の開けた車に乗り込む。あっという間に走り去る車体を呆気にとられて見送った。

何が好き勝手だ。誰のせいでこんな場所でこんな不自由なことに。


言いたいことは山ほどあったが、既に相手はいない。
そして出てきたばかりの店内から、興味津々の顔をした同僚たちがわらわらと出てくる。
ああ、そういえばサムの持ち物云々という触れ込みでも、人の目につくところでこんな風に接触したのは初めてだ。
細かい事情はさておいて、わざわざ王族が会いに来たという一点で興奮しきった同僚たちから、部屋まで送ってやるという申し出を山ほど受けてディーンはそのごしばらく店の前で閉口することになった。


アラブ―はどこへ行くのか。ハピエンになる日は来るのか。
ね、年内に終わらすのはちょっと無理かも。年越しかえ…??


 


 

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