いやー、ついにこれでペーパー分が終わります。
なので明日からはまた唐突なネタひねりになるでしょう。
いや、もちろんアラブの続きが流れるように出てきたら書きます(最初はそのつもりだったし)が、別のものが載ってたら、
ああ、出なかったんだなと思ってやってくださいませ。
週末には拍手コメントへのお礼もしたいと思っておりまーす。
・・・・・
一方のディーンはそんなやり取りなぞもちろん知らず『愛妾』という肩書きを半分忘れかけながら仕事に励んでいた。
ディーンが言わずとも相手が肩書きに一応の礼を払うのはどうしようもなかったが、こちらからは一切言わない。サムがいかに『妃』だなんだといおうと、実益も権力もありはしないのだ。
「君に権力など誰も期待していない。殿下の持ち物を粗末に扱うのを控えているだけの話だ」
「ものものうるせえよ」
例によって陰気な侍従がぼそぼそと説教をするのに憎まれ口を返す。ディーンとしては営業姿勢の話をしているのだが、どうも話がずれる。
最初は『仕事など分かりもしない厄介な預かりもの』的にあしらっていた上司や社員が、最近は態度を変えつつある。上司から徐々に任される仕事が増えていくのは気分が良かった。こういうモードに入り出すと仕事が面白くて仕方がない。雰囲気にもそれが出るらしく、休日の茶会でマディソンとルビーに
「いやあねギラギラして」
「そのへんの男みたい」
と眉をひそめられた。
そのへんの男みたいじゃないという方が問題だと思うのだが。
「なんでダメなんだよ」
「君は王子のものなのだから、不特定多数と関わるような行為は慎め」
「仕事にならんだろうが!」
「傍にいる社員のを使え」
そしてディーンにあてがわれた部屋では、ある日押し問答が交わされていた。
何の話かというと携帯端末だ。身分証がないディーンは一人では契約ができず、金は払うから支給しろと何度依頼しても通らない。ならばと使い捨て端末を買おうとしたらまた黒装束の男達に捕まり、車で窓のない小部屋に連れ込まれさすがに肝が冷えた。どこからともなく現れた陰気な侍従が止めなかったらどんな目に合ったか分からない。
「事情は想像はつくが、君のこの国での身分は王の愛人だ忘れるな」
ならば店で「王の愛人だ」と名乗ったら端末を売れとディーンは思う。
「…もうずっと顔も見てないんだが、まだそうなのか?」
だが、うんざりしたぼやきにカスティエルがふと真剣な声で尋ねてきた。
「何か月になる?」
「…部屋借りてからだから、十か月くらいか」
それを聞いた侍従は珍しくはっきりと顔色を変えた。
「まずい。なるべく早く王子に会え」
「なんで。悪いがスケジュールはかなり一杯だ」
「空けろ。一年間指一本触れられなかった愛妾は処分される決まりだ」
「はああ!?」
いきなり爆弾を落とされて声がでんぐり返る。
「ちょっと待て、なんだそりゃ、人権は」
「愛妾になった時点で、その者は人ではなく王家の持ち物だ」
「国外追放とかにならないか?」
「経費節減なのに国費を使ってどうする」
もっともな意見だが、根幹が滅茶苦茶だ。ディーンは顔をひきつらせながらスケジュール帖をめくる。
と、ふと先日行った新しい店でマディソン達が、
『明後日の夜パーティは久しぶりにサムと会うわ』
『たまには顔見ないとね』
と笑っていたのを思いだした。
「おい、このパーティ、サムは出席予定か?」
そしてその大規模なパーティ会場で、サムは出会った頃のように綺麗な笑みを浮かべて近づいてきたディーンを見て驚いた。
「ディーン」
「お久しぶりです、殿下」
思わずその顔に触れると、驚いたように目を見開きふと微笑む。人ごみのなかでやり取りはそれだけだったが、帰宅したサムは陰気な侍従に尋ねた。
「今日のことで、ディーンは何か言っていたか?」
「これで次の十一月まで大丈夫だと、手帳に書き込んでいましたが」
「…ああ、なるほど」
切実な事情ではあるが、味もそっけもない。
遠慮のなさすぎる侍従の言葉にサムは顔をしかめた。
続く…はず
はい、ラブにも繁盛にも行きついてませんが、ペーパーはここまでだったんですねー。
なのでこの続きを書きたかったんですが、さすがに5回連続してあらぶーしたら多少疲れてきたので明日からは脳みその走る方向に任せます~
本当のサミーは嫌がる人を攫ったりしないし!←当たり前だ