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海外ドラマの超常現象の兄弟(SD)を中心に、頭の中にほわほわ浮かぶ楽しいことをつぶやく日記です。 二次創作、BL等に流れることも多々ありますので嫌いな方は閲覧をご遠慮くださいませ。
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アラブ太腕繁盛記2(アラブサムとスミス部長)

えー、やっつけ適当ペーパーに暖かい拍手やコメントありがとうございますー!(^^)!
ペーパー再録の強みで、今日も行きます。いえーい。







「担当のディーン・スミスです」
 手を差し出すと相手の表情が改まり、握手の代わりに深々と頭を下げられる。
「存じております。何卒よしなに」
「………こちらこそ」
 どうも勝手が違う。ディーンはこのまま待っていても握手はしてもらえそうもないので宙に浮いた手を引っ込めた。
 渋るサムに「別れて帰国したい」と粘ったものの結局出国は許可されず(なにせ拉致同然だったのでパスポートもないし、この国には大使館もないのでサムの同意がないと何ともできない)、代わりに「ぶらぶらしているのに飽きた」と言った部分が拾われて『国内でなら仕事をしてもよし』という約束を取り付けた。外に出られるだけでもまだましだ。
しかし、さて求職活動をしようとしたら、「とんでもない!」と侍従たちに止められて、「この企業なら働いてよし」という中から一社を選ぶことになった。面接もへったくれもない。陰気な顔の侍従に付き添われて社長室に行き、いきなり社長と上司に引き合わされた。
「この方だ」
「お引き受けいたします」
それで入社は決定だ。
(なんだこりゃ)
印象としては噂に聞く強力なコネで無理矢理入った入社のような感じだ。というよりもそのものかもしれない。なんというのか、退屈しのぎの趣味扱い感満載だった。

だか、いざ始めてみると良くも悪くもそこまで甘い話ではなかった。何せ身一つで浚われてきたのでスーツもなにもない。サムはビラビラした部屋着だの、チャラチャラした外出着は山ほど寄越していたが、仕事に使えそうなものは一着もなかった。陰気な顔をしたお目付け役の侍従が間に入り、取り敢えず最低限のものは揃えたが、いわゆる王室会計からの借金扱いで、今後の給料からがっつり差し引かれることになっている。
「分割にしてくれ」
ディーンが最初にした交渉は、それだった。
仕事の相手企業にしてもディーンに対しての態度は恭しいが、交渉が特に楽と言うこともない。むしろこの国の風土なのか、抜け目無くて気が抜けない。しかしまあ、そこはむしろ特別扱いされない方が良かった。


「すごい光景だね」
久しぶりにディーンの部屋に来たサムが目を丸くした。
「ああ。すまんな、ちょっと調べもので」
資料を捲りながらディーンは少しサムを振り返る。テーブルからベッド、毛足の長いカーペットの敷き詰められた床まで、部屋一面に資料や本が拡げられている。
茶でも飲みながらひたすらサムを待つ生活には広すぎた部屋も、仕事をするとなるとそのスペースが有り難い。
仕事に就いたはいいが、欧米型の常識が通じないことも多く、ディーンは今現地の慣習やシステムをひたすら頭に叩き込んでいるところだった。
座る場所を探して部屋を見回すサムに、「そこが空いているぞ」とカウチを指す。
気が付けば最後にサムの顔を見てから10日以上経っていることに気付き、何となく胸がすく思いがした。もしも何一つすることが無く、サムの訪れを待つだけの生活だとしたら、この10日は酷く長かっただろう。サムに腹を立てながらも縋りつきたくなったかもしれない。だが今咄嗟に自分の胸に浮かんだ思考は、「サムの用件はどのくらいかかるだろう」というものだった。
だが、サムが微かに不快そうな顔をするのを見てとったディーンはしばらくの中断はやむを得ないと諦めてカウチ前の低いテーブルから書類を取りのけた。
当然のような顔をして足を組んだサムが、女官に合図をして茶器と軽いつまみを運ばせる。
「何をしてるの、こんなに広げて」
「下準備だ。お前の会社とのやり取りはしてたが、この国内での常識や慣例は分からないことが多いからな」
「ふうん」
サムは資料の一枚を手に取ってみると、興味なさげに戻す。サムにとっては目新しくもないのだから当然ではあった。
しかしそれがわかってないと仕事の成果も上がらないし、給料ももちろん上がらない。さっさと借金を返済して自分用の通信機器やパソコンが欲しかったし、何よりも部屋を借りたかった。

「ここから通えば良いだろう」
怪訝そうに言うサムをじろりと見やる。
「ここは市街地から遠い。それに外国人の男めかけにいつまでもこんな部屋や人手を使うのは、それこそ無駄遣いだろうが」
そう言うとサムが微かに目を見開いた。
「誰がそんなことを言った?」
「ガキじゃないんだ、調べりゃわかる。この国は確かに一夫多妻だが、同性婚は認められていないし、拉致してきた外国人を何の手続きもなしに王族に入れるほどいい加減な国でもない」
「まあね」
ばれてるんじゃ仕方がない。サムは悪びれずに肩をすくめる。
「でも、后と同様に扱え、と周囲に言っているのは事実だよ。男に部屋を与えるのは初めてだったし、しかも外国人だったから、そうでもしないとディーンの安全が分からなかったからね」
「恩着せがましく言うもんだ」
ふん、と鼻で笑うとサムが顔をしかめる。だが、ディーンの安全を言うのなら、攫わなければいいだけの話だ。視線を逸らさずにいると、サムもそれ思い浮かべたのだろう、仕方なさそうに言葉を続けた。
「そんなに宮殿を出たいならいいだろう。会社から遠すぎない所に部屋を探させよう」
「自分で探す」
即座に返した言葉を、だが今度はサムが強い口調で切り捨てる。
「愛妾に部屋を与えるのは主人の義務だ」
にらみ返す視線がぶつかった。
「なら、高い部屋はやめてくれ。いずれは俺の給料で払える範囲にしたい」
「ディーン」
サムがここに来い、というようにカウチの隣を軽く叩くがディーンは無視した。立ったままサムを見下ろして話を続ける。
「俺はお前と確かに寝たが、所有物になったつもりはない。この国でどうかは知らないが、俺の国や社会の価値観がある。同性と付き合ったり、客としてもてなされるのは構わんが、ベッドの代償に養われるなんてのは最低最悪なんだよ」
「…『拗ねた』で許される範囲を、越えかけているぞディーン」
サムの目がすっと細くなり、声が一段低くなる。が、ディーンは冷笑した。
「『拗ねた』んじゃねえよ、『冷めた』んだ」
瞬間、サムの平手がディーンの頬を打った。
「口を慎め」
だが慎むわけもない。
「誘拐犯が偉そうなことを抜かすんじゃねえよ」
いいざま、長衣に隠れた足の向こう脛辺りを狙って思い切り蹴る。サムがよろめいたところで、今度は腹に一発お見舞いしたが、これは腹筋のせいかさほど堪えたようでもなかった。だが、物音が多少は響いたようで、足音をたてて警備を連れた侍従が入ってくる。
「何事ですか殿下」
「良い、ディーンに少し言い聞かせていただけだ」
サムが手を振り、衛兵を下がらせた。
「そうなのか、ディーン」
じろりと侍従がディーンの赤くなった頬を見やる。
「この国の王子は特殊な趣味をお持ちだな」
ディーンが皮肉な口調で返すと、黒づくめの侍従は、
「高貴な方の趣味は、庶民には分からぬものだ」
とむっつり返した。


まだ続く


恋物語どころか喧嘩を始めました。
しょーがないですね、飽きたところからですから。
というか恋に行きつくのだろうか。



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