ロボサムと兄貴の新刊サンプルでーす。
狩りの途中で記憶を失くしちゃった兄貴とロボサムの話
「それで俺のところか」
ディーンをソファーに座らせて、ボビーが呆れたように言った。
「全く全部忘れてるんだボビー」
サムがそう言うと、ディーンも頷く。
「このまま狩に連れていっても役に立たないし、妙に警戒心がなくて、誰にでもついて行きかねない。かといって一から教えてる暇はない」
「なんだそれ」
ディーンの疑問と抗議は無視される。
「暇はいくらでもあるだろう」
「僕には向かない」
サムが言い切り、ボビーはまた顔をしかめる。
「それに、どこまで教えるべきかも正直わからない。僕は教えるとなったら事実を全部伝える以外思い付かないし。だからボビーに預けた方がいいかと思ってさ」
その言葉にはボビーも頷いた。
「確かにな」
そして固い顔で二人の会話を聞いているディーンを見やって続けた。
「いっそのこと、例の母子のところへ帰らせたらどうだ。狩のことを一切忘れてるなら却って落ち着いて暮らせるだろう」
座るディーンを見下ろしながらボビーが提案すると、サムは言下に否定する。
「あそこはだめだ。少し前に彼女とは切れたと言ってたし、ディーンが忘れていても悪魔の方は忘れてないから巻き込むだけだよ」
「悪魔?」
「長くなるからボビーに聞いて」
言いながらサムは荷物をまとめ始める。
「おい」
サムの背にディーンは声をかけた。
「さっぱり話が見えないが、要は俺はお前と組んでたが、使い物にならなくなったから厄介払いされた、って認識でいいのか?」
サムは振り返ってディーンの肩を軽く叩く。
「馬鹿だな。怪我をしてるんだから療養期間だよディーン。そのうち迎えに来るから、ゆっくり身体を治しなよ」
そう言って出ていく背中を見送りながら、ディーンは
「…記憶がなくても、今のセリフがすっげえ白々しいのは分かるぞ」
とボソボソ呟いた。ボビーは宥めるように声をかける。
「だが奴にしては、今のお前をここに置いて行くのは真っ当な判断だ。サムは確かにお前の弟だが、事情があって今は人を思いやるってことができん。下手に一緒にいて、何かあれば咄嗟にお前を切り捨てかねない。色々混乱してるだろうが、とにかくまず休め」
ボビーの言葉に、ディーンは車に乗り込むサムの姿から目を離し、微かに頷いた。
・・・・・・
こんな感じの記憶喪失兄貴です。ロボは相変わらずです。
[17回]
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