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海外ドラマの超常現象の兄弟(SD)を中心に、頭の中にほわほわ浮かぶ楽しいことをつぶやく日記です。 二次創作、BL等に流れることも多々ありますので嫌いな方は閲覧をご遠慮くださいませ。
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人魚のおまけ(リハビリ)

停滞緩和企画なので、ペーパーの続きをこねこねしました。

蛇足です蛇足。人魚のサミーの尾っぽはそのまま鱗で、足だけ生えたような余計感満載。
やっぱりまとまりとかつじつまとか気にしないわ、というお心でご覧くださいませ。

停滞ブログにぱちぱちやコメントありがとうございますー!がんばる元気をいただきました。
あとでお礼に参ります!







小島で暮らすようになったディーンだが、その生活は最初から平穏無事というわけでもなかった。

もともと小さな漁村の中で、いつまでも独り立ちできずにいたディーンは、同年代の漁師たちと距離があった。成人するはずの年だというのに儀式も受けず、かといって村を出て行くわけでもなかった。年長の漁師達にくっついては海に出て、最近では怪しい商人達の片棒を担いでいたという噂もある。そこにもってきて失踪、十数年ぶりの父親の帰還と続く。改めて遅まきながら漁師の仲間入りをするのかと思えばそうでもないと来た。事情を知らぬ者からみれば胡散臭さ満載だ。
海を支配する人魚一族とのあれこれは、全ての漁師たちに事細かに伝えられるわけでもなかったから、村長たちの
「奴についてはいい。放っておけ」
という言葉だけでは納得できない連中などが出てくる。


そんなわけで、ある日漁に出ていたディーンは島へ帰る途中の海で、若い漁師たちの船に取り囲まれた。
「はみ出し者が大きな顔をするな」というわけだ。
理屈も何もない。大きな顔というのはこの場合、少し前にあった祭りで村の娘たちや町から呼んできた女たちと踊ったことを指す。
コソコソと掟やぶりをしている不届き者を放置するから当然のような顔をして村にも出入りし、祭りにも顔をだす。ちょっとばかり顔がいいとかで、祭が終わったあとも女たちは何かというとそいつの話をしている。
掟破りがいっぱしの男のように振る舞うのはおかしくないか?
好いた相手の手を引いて歩きながらため息をつかれる情けなさをなんで真っ当に漁をしている自分たちが味わうのか?
掟破り野郎を放置しておけるか?見逃したら、どんな災厄につながるかわからないし、示しもつかないではないか。


「掟破り」への憤慨と恋の恨みの私怨は分かりやすく一体化して、とりあえずその面をボコボコにさせろ、と詰め寄った。
取り囲んだはいいが、相手も大人しく殴られる筋合いはない。二、三人が逆に海に放り込まれたあたりで、漁師たちはそういえばこいつはガキの頃から喧嘩っ早かったなと思いだす。ついでにそう言えばこいつの父親は軍隊上りだったな、ということもだ。ここ十年以上黙りこくって年嵩の漁師たちを手伝う姿しか見ていなかったから忘れていた。
しかし、多数で取り囲んでおいて、すごすご帰ったでは面子に関わる。海に放り出された漁師たちはこうなったら船を壊してやれ、とてんでに周囲からディーンの船に取りついた。
「おい、お前ら」
その気配はディーンにも伝わり、さすがに顔色が変わる。なにせ漁師にとって船は命だ。船を守りたきゃ大人しく面を差し出せ、と言われたディーンは顔を思いきりしかめ、だが次の瞬間目を見開いた。
釣られてその視線の先を追った漁師たちは、いつの間にかすぐ後ろに、見知らぬ若い裸の男が寄ってきているのに驚いた。
「うわ、なんだお前」
そしてよく見ると水中にあるその体の半分が鱗に覆われていることに気付いてぎょっとする。人魚だ。知識として知ってはいても、実際に海の一族に会うことはそうそう無いのだ。皆、ディーンの船を放し、各々の船に慌てて乗り込む。
「人魚の住処にはまだ入ってないはずだろ」
「いや、あんた達には関係のない話なんだ」
「おい、供物持ってきてたはずだろ。出せよ」
人魚が住む島に近づくということで、万が一に備えて、季節ごとの儀式で用いる捧げものをくすねて船に積んできていた。祭壇も何もないが、震える手で差し出す。
と、若い男に見える人魚は不愉快そうに目を細めた。
「僕のものに手を出しておいてぬけぬけと」
そして人魚が顔をしかめて手を振ると、大量の鮫が海面に殺到した。叫ぶ人と舟をまとめてひっくり返すと港に押しやり、繋がれた他の漁船の上に放り投げてしまう。
「やり過ぎだ、サム」
陸の様子を見やりつつ、ディーンは眉を顰めて呟く。
「俺が売られた喧嘩だぞ」
「ここは僕の領海だし、あんたは僕のものだ。近づくのが悪い」
抗議は切って捨てられ、いつものことながら取りつく島もない返事に、ディーンは軽くため息をついた。
「大体供物なんて、祭事の時に挨拶として受け取るだけのものだ。無礼を働いておいて突き出せば勘弁されると思うのがおかしい」
見ると舟も本人たちも見事に陸地でひっくり返り、周囲に年嵩の漁師たちが集まってきている。打ち上げられた時に他の漁師の舟を壊したのだろう。えらい剣幕でどつかれている。


それでも少し前に例の商人たちと会った時よりは遥かに穏便だった。
ディーンが生きていると知った商人たちが、金を返せと迫ってきたとき、岸から離れようとしない商人たちを突然の大波が襲い、全員海に落とされた。ディーンも無論一緒に落ちたのだが、即座にサムの長い腕と尾に捕まれる。
そして水中でもがく人間たちの隣に、女が二人、ゆらりと浮かび上がってきた。
ブロンドとブルネット、どちらも顔、スタイルとも申し分ない美人だ。女好きの性で、ディーンは反射的にチェックしてしまうが、下半身を見るまでもなくどちらも人魚だ。
「どうぞ。姉上たち」
サムがそう言うと美女人魚二人はにっこり笑う。
「ありがとう、サム」
次の瞬間、女たちの口がそれこそ鯨か鮫のごとく開いて男たちを頭から飲みこんでしまい、ディーンは思わずサムの腕にしがみついた。
「ににに人魚って人を食うのか!?」
「まさか」
「だってあれ」
「姉上たちは出産間近なんだ」
いや、それは理由になってない。
「普通は海に落ちた人間になんか興味ないよ。掟があるから漁師にも構わないし。魚たちはそれぞれだけど」
「でも今」
「鮫に食わせても良かったけど、ちょうど姉上たちが居られたからね」
文字通り血の気が引いてしまったディーンを見て、サムがおかしそうに笑う。
「なんだ。怖がりだな」
抗議しようとした声は、サムが妙に機嫌よくディーンを抱えたまま勢いよく海に潜ったので途切れてしまった。
光る小さな魚や、陽の光に透ける海藻の間を通り、イルカの群れに混じって泳ぐ。今度は何だと神経を尖らせていたディーンは、
「怖いのは収まったか?」
あやすように背中を叩きながら尋ねるサムの言葉にため息をついた。


何度かそんなことを繰り返しているうちに、ようよう周囲は静かになってきたといえる。


「ふむ、少し見ない間に、しきたりを軽視する若いのが増えてるようだな」
たまの親子団らんで、ジョンは嘆かわしいと言いたげに首を振るが、先日海底宮殿に魚雷を打ちこんだ自分のことはさっくりと除外されている。
「人間を?出産前に?」
オムレツを作りながら呆れた声を出したのは、メアリーだ。
「違うの」
「私はくれるって言われてもいらないわね」
「そっか」
「他に牛でも豚でも羊でも、面倒無しに取れるものがいくらでもあるもの」
何となくその発言が怖い気もしたものの、自分やサムを産む前に母が誰かを栄養補給に飲みこんでいなくてほっとした。ディーンは安堵の息をつき、棚に置かれた小さな帆船をそっといじる。
小さい割に精密に作られたそれは、父が異国から持って帰ってきた13歳の息子のための土産だった。さすがにもう玩具で遊ぶ年ではないが、父が自分のために買ってきてくれたのが嬉しくて、ディーンは両親の家に来るたびに、ついこの船を触ってしまう。
「持っていくか」
その様子を見ていたジョンが声をかけるが、ディーンは苦笑して
「いや、いいよ」
と首を振る。サムはあの島に物が増えるのを嫌がるから、有無を言わさず壊されるかもしれない。


「するわけないだろう」
むっつりとサムが言う。繋がりを解いた後、背中から抱えられて海面から月を見上げながらの会話だ。
だるくてうとうとしていたディーンはちらりとサムを振り返った。何となく自分の家族はみんな自分を棚上げするところがある。
「あんた、帆船が好きなのか?」
唐突にサムが尋ねる。
「ん?まあ見るのはな」
昔父に連れられて、大きな港にたくさんの帆船が泊まっているのを見たことがある。父の大きな手の感触と、青い空と。
「また父親か」
話の中の何が気に障ったのか、サムの声が不機嫌になって、その手がディーンの両手を捕える。
父の手とは違う、細くて長い指。あの日の空とは違う月の夜。
「今度、見に連れて行ってやる」
「帆船を?」
「たくさん沈んでる所がある」
「………いらねえよ」
思い出の中の青い空が消えそうになるではないか。


だがその言い方が気に食わなかったのか、サムはムッとしたようにディーンを抱えたまま急潜水する。やっと離れた体をまた繋がれたディーンは、勘弁しろというように沈みながらサムの髪を引っ張った。


 


 おわりだよん

なくてもなくてもいいおまけでした。
いいの、とにかく書くリハビリだから…
あ、サムの姉上たちはリリスとベラです。丸呑みしてもウェストは何故かほっそりしてるにちがいない。


 

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