実は今日私、何かこう、満たされない思いで悶々としていたんです。
さっきふーふ呪い書いて少し収まったので、もいっちょ行ってみよう。
今度は短めに行ってみよう。
「大丈夫だから、兄貴も帰って寝ろよ」
ディーンが白い顔で苦笑しながら言う。
「うん…」
サムとてここにいてもすることがないのは分かっている。医療スタッフもついているので、付き添いの必要がないことも。
それでも何というのか、ディーンがこの状態(自分の方を弟と思いこむ呪いだ)になって以来、こんな怪我をするのは初めてで、サムとしてはディーンの態度の違いに改めて戸惑っていた。
大人しい。実に普通の患者だ。そして痛そうだ。
思えば、もちろん兄が入院するような大けがをした時ともなれば、サムは当然心配するのだが、意識を失っていない限りディーン・ウィンチェスターという名の兄貴は、馬鹿なジョークを連発していたり、狩りのことでサムにあれこれ指示をしたり、耳をふさぎたくなるような悪態をついていたりと、サムの神経をあまり容体に集中させてくれないのだった。
それが今はサムの見ている前で黙って目をつぶり、ごそごそと寝る体勢を探している。運悪くどこか捻るかつるかしたらしく、「いてててて」と呻いた。
「大丈夫?」
大丈夫じゃないと分かりつつ、他に言いようもなくて覗き込むと、「うん…」と小さな声で答える。その顔に、思わずサムは手を伸ばした。
小さい子供にするような動作だったかもしれない。だが、サムが汗の浮いた額と髪を撫でるようにすると、ディーンはうっすらと目を開き、安心したように笑う。
衝撃。
ついに僕はこの境地に達した。
サムの脳内を描写するなら天地を切り裂く大稲妻だ。
ディーンのあの顔は、具合が悪いときに父ジョンやボビーなどに見せていた表情だ。
サムの心にドバドバと、父性本能だかなんだかがわいて出る。サムが「弟」であったなら何十年経とうとも見ることがかなわなかった類の顔だ。
結局サムはディーンが眠るまで何となく傍にいてからモーテルに戻ったのだが、ディーンを心配してきてくれたボビーに様子を訊かれて、うっかり父性本能の感動の方を先に語ってしまったためにかなり本気な拳で殴られたのだった。
終わり終わり。
短い文を書く才能がないぞ!!
[22回]
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