忍者ブログ
海外ドラマの超常現象の兄弟(SD)を中心に、頭の中にほわほわ浮かぶ楽しいことをつぶやく日記です。 二次創作、BL等に流れることも多々ありますので嫌いな方は閲覧をご遠慮くださいませ。
カレンダー
07 2025/08 09
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カウンター
アクセス解析
プロフィール
HN:
おくら
性別:
非公開
自己紹介:
二次元、三次元問わず楽しいもの大好き。
常に読むものが無いと苦しい活字依存症。
ブログ内検索
P R
バーコード
アクセス解析
[541]  [540]  [539]  [538]  [537]  [536]  [535]  [534]  [533]  [532]  [531

兄弟酒場(インテペーパー)

えー、絶賛停滞中、&絶賛原稿行き詰まり中です。
書きだすと毎回ですが、ぜんっぜん面白くないネタに思えてくる。あの、書きたいなーと思った萌えは蜃気楼のようにどこに消えちゃったのかしら…

まだまだこれからが原稿は踏ん張り期間ですが、ちょっと穴埋めネタ。
先日、インテで無配させていただいたペーパーです。ノック中にいただいたコメントで発火したネタ。
これまたかなり突貫です。そしてお手入れなしでほぼそのままです。








《開店のいきさつ》
さて、長年にわたるハンター生活を引退したウィンチェスター兄弟は、今後について相談し、大枠での重要方針を決めた。

1つ、もうこれ以上天使だの悪魔だのに付き合いたくない。どのみち何十年後かにはどちらかが偉そうにふんぞり返っている所に行くことになるのだ。

2つ、今後の人間社会で生活を送る上で、できる限り法に触れる行為はしない。(法の道を目指していた弟としては指一本触れないとしたいところだったが、兄弟どちらの経歴もボロボロ過ぎてスタート地点に立つ上では全くというわけにはいかなかった)


人間をこの世ならざるものから密かに守るという、気高い稼業に長年従事し、天国地獄煉獄を股にかけて悪魔どころか天使もバンバン殺し、死神を友達扱いして呼びつける等、人外にはその名を轟かせた兄弟だが、肝心の人間界ではさっぱり潰しがきかなかった。
なにせ家がない、学がない、職歴もない、ないないづくしだ。
考えだすと滅入るので、まあとりあえず長年の疲れをとろうじゃないかと、とあるうらぶれたモーテルでゴロゴロしていた兄弟は、ちょうどつけた警察ドラマが、父親から狩しか教えられずに世間から孤立して育った兄弟が連続殺人犯だったという落ちになったのを見ながら無言になった。
「このタイミングでこれを見るはめになったのは、天使か悪魔の嫌がらせじゃないのか」
と兄弟揃って部屋に護符を書き出したのは長年の家業で染みついた職業病と思って間違いない。

兄は自分達のプロフィールが一般人に与える印象にストレートに憮然としたが、弟は明るい面も見つけ出した。いわく、犯人兄弟は人間狩が大好きで、通りすがりの善男善女を鹿がわりにしたので話の終わりに二人とも撃ち殺されるという悲惨な結末になったが、そうでなければ単なる兄弟経営の小さな店を営む市民だった。
「つまりこれだよ」
弟はモーテルのテレビの前にすっくと立って言う。
「僕もディーンも経歴に穴が多すぎて、いきなり雇ってくれるところなんてそう無い。だから、まずは何か自営の仕事をしようよ」
「自営ってなんだよ。探偵か?」
兄がそう言ったのには深い意味はなく、次に始まった番組が探偵ドラマだっただけのことだ。だが弟は真面目にキリッと答える。
「いや、探偵だと怪しい事件の調査を頼まれて、魔物を見つけたりしたらめんどくさいよ。もっと平和な仕事がいい」
「じゃあホットドッグ売り」
テレビでは探偵が張り込みのためのホットドッグを買っている。
「いいアイデアだけど、ディーン料理できるの?」
「…」
できないことはないが、売り物になるかはかなり怪しい。


というわけで途中経過ははしょるが、兄弟は結局小さな酒場を始めることにしたわけだ。


・・・・・・・・・・・・


「やってみてわかったけどな」
ディーンはカウンターの中でグラスを磨きながらぶつぶつ言う。
「酒場は行くもんでやるもんじゃねえな。他人が飲んで酔っぱらってんの見ても嬉しくも楽しくもねえ」
「仕事がそんなに嬉しかったり楽しかったりするわけないだろ」
応えるサムはそっけない。
古い店を買い取ってみたものの、どうせそうそう客などこないだろうと踏んでいたのだが、世の中以外とニッチなニーズがあって結構忙しい。ただし、ディーンが期待していたような妙齢のおねーさんたちは影も形もなく、わさわさと集まるようになったのは胡散臭い客とむさ苦しい客と鬱陶しい客だった。
「すげえ嫌だ」
とまたディーンはブツブツ言いながらカウンターを拭く。
きれーなおねーちゃんが悪酔いしたら介抱してやろうだの、
きれーなおねーちゃんが変なのに絡まれたら助けねーとだの、
きれーなおねーちゃんが常連客になったら何のサービスしようかだの
とワクワク夢見ていたのに、広くもない店内を見回すと、カテゴリが女性に入る対象自体がそもそも皆無で、呼んでもいないハンターと、絶対呼んでないその手の趣味の客ばかりがぞろぞろいる。
「こいつらが揉めても絶対助けねーぞ。どっちも追い出す」
「あーそう」
サムはこの頃毎日のBGMのようになっている兄の愚痴を右から左に聞き流す。ハンターでもゲイでも、酒を飲むなら客だ。チャリンチャリンと音がする財布が集まってると思えばいいのだ。ついでにブツブツモードに入った時の兄は気を紛らわすためか昔の武器の手入れの習性か、周辺のものを黙々と延々と磨く癖があるので、店のグラスや調度類がピカピカになってちょうどいい。黙って眼を伏せてグラスを磨いている兄はビジュアル的に大変良かったりするし、そもそも静かでいい。


サムとてせっかく足を洗ったのにハンターがやたらと寄ってくるのは予想外だった。現役時代の最後の方では、
「ウィンチェスター兄弟に関われば、もれなく天使と悪魔に狙われるから、死んでも生き返るスキルがなければ近づくな」
とか言われてかなり二人は敬遠されていたのに、引退したと聞いた途端に危険度が下がったと思われたのか物見遊山的に集まってくるようになった。
(僕らはキリンでもパンダでもないぞ)
噂話の真相を聞きたがるハンターに首を振りながらサムはため息をつく。
そして似ていない兄弟二人の店というので何やら誤解をしているらしい客に、ハンターたちが面白がって「兄弟といってるがもちろんカップルだ」だの、「弟は元売れないボディビルダーだ」だの、あることないこと吹き込むから性質が悪い。不幸中の幸いとしては、ハンター達がそれぞれ勝手な作り話をするおかげで、どれも信ぴょう性がないことくらいだ。


だがしかしこの客層も悪いことばかりでもない。
店を始めるにあたって、サムは酒ばっかりを売るのはどうも体に悪いと気になって、嫌がるディーンを押し切って野菜ジュースやら貝のエキスやらも仕入れていた。だけどまあ予想通り普通の酒場の客には当初さっぱり売れず、在庫の処理に困りそうだった。
しかし、店に来る客でサムやディーンにその手の関心を持つ客には、身体や肌のメンテに気を使う者も多く、ついでに体格のいいサムが愛用しているメニューに興味を示す客も結構いた。
「貝のエキス?何に効くの」
「アルコールを飲んだ後の肝臓の負担を減らすんだ」
「へえ、そりゃ肌にもいいね。一つもらうよ」
「スムージーとかで君のお勧めのレシピあったらくれる?」
「ああ、いいけど」
「何かサプリのトッピングとかできるかな」
「プロテインとコラーゲンなら仕入れたけど」
「ワオ、それなら僕にも」
「OK」
何で僕はこんなにゲイの客と話が弾んじゃってるんだろう。
サムはスムージーを作りながらふと悩む。いや、差別は良くない。客は客だし、健康についての嗜好が合うだけだ。それにこの手の客のおかげでオーガニックの野菜を仕入れても結構はけるのだ。
「すごい筋肉だよね。ちょっと触ってもいい?」
「それはパス」
さりげなく伸びてくる手を真剣に避ける。黙々とグラス磨きに逃避する兄貴は、仕入れた野菜が残ると自分の食卓に回るという利害関係もあり、こういう時は全然助けてくれない。客商売は色々大変だった。


「通信で大学の勉強を再開して、資格とれたらここで事務所開くよ」
ある日の昼間にサムがそう言い出して、客席の椅子を直していたディーンは目を丸くした。
「ここで?」
「どうせ昼間使わないから場所が空いてるじゃないか」
それはまあそうなのだが。
「客が来ねえんじゃないのかここだと」
兄が言うことにも一理ある。なにせオフィスっぽいものは何一つなく、酒場らしいカウンターとテーブルと椅子があるだけだ。
「基本出向くスタイルにすればいいよ。それに僕の経歴だと大手のファームはどうせ相手にしてくれないしさ」
「へえ。サミーちゃんの未来計画も変わるもんだな」
「こう色々あったらさすがにね」
サムが肩をすくめて言うのに、ディーンはふうんと関心なさそうに返事をして、また椅子の修理に戻る。サムは背を向けて志願書作成に戻ったが、後ろからさっきまでなかったロックな鼻歌が聞こえてきたのに少し頬を緩めた。


昔からお勉強ができたサムの頭脳は、三十路を越えてもやっぱり出来が良かった。ほどなく本当に酒場でスムージー作りつつ、弁護士の資格も取ってしまう。

ウィンチェスター法律事務所 ㏌ BarWinchester
後ろ暗い身の上の奴カモン!特別な便宜は図らないけど、普通の客として普通の対応するぞ。

「なんだそりゃあ。普通の応対しかしねえなら、普通のとこ行くんじゃねえのか」
兄の感想はもっともだが、日の当たる場所に出にくい経歴の者にだって、普通の客として一般的なサービスを使いたいときだってあるのだ。そんなわけで弟の新しい商売も結構小口の顧客がいた。
魔物防御をガッツリしてるので、ハンターたちの間で微妙な相手を呼び出す場所として迷惑な定着をする。ただそれでも時々カウンターに人外らしい変な黒服の男がいて(安酒は口に合わないとなぜか瓶を持参している)兄弟にかみつかれていることがあるが、客たちも嗅覚が働くのかその客が来ても近づかない。
そんなこんなで小さな酒場は潰れそうで潰れず今日も兄弟はニッチだが真っ当な小市民生活を送っているのだった。


そんな感じでずっと平和に暮らすといいな、の色気のない兄弟妄想でした。

拍手[53回]

PR

お名前
タイトル
文字色
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
非公開コメント

忍者ブログ [PR]

graphics by アンの小箱 * designed by Anne