出ていった夜が終わってない彼らですが、ロースクールにサミが入る時に一緒に部屋を借りるわけです。で、ディーンは少し離れたところで仕事を見つけるんですね。
んで、引っ越しの日です。
大物の家具は配送だろうけど、雑多なアレコレはトラックでも借りて自分達で運ぶんだろうな。
そして、中の配置をあれこれするわけです。
が、鍵を開けて中に入った途端、サミーなんかはもうどっきどきなわけですね。
だってあなた。
今までまあ、ディーンの家にはパパが帰ってくることが滅多にありませんでしたが、それでもよその家だったわけですが、今日からは本当に二人っきりです。二人っきり。二人のおうち。
中に入ってドアの鍵を閉める辺りで、もうサムはどきどきしちゃって挙動不審なんじゃないかな。洗面所で、歯ブラシを放り込みながら
「こ、コップは一個でいいかな」
なんてサムがちょっと上ずった声で言っちゃったりして、
「そう言ったろうが」
とディーンに不審な顔をされる。
食器棚に最小限のグラスや皿を(きっとメアリママに余ってるのを分けてもらった)しまいながら、それが二個ずつなのにものすごく動揺したりする。
テーブルの椅子も二脚。ベッドはさすがにそれぞれの部屋に入れるけどどっちもセミダブル。
「なんか新婚家庭みたいだ」
という思考が頭の周りをフヨフヨ飛び回って止まらないサムは、
「ほらどけ」
とか
「そっち持て」
とかディーンに指示されてりして、なんともぽーっとした状態。ディーンは構わずドンドン作業を進めてて、なぜかチョコの大袋とかポルノ雑誌の束まで入れだすから、サムも少し正気に返って
「なにそれ!増えるならともかく、いきなり持ち込むわけ」
とかぎゃあぎゃあいう。
「るせー!これは俺が長年かけてセレクトした保存版なんだよ!」
とかディーンが言う。もともとは誰かに室内を万が一見られた場合に、普通のルームシェアっぽく見せるための小道具のつもりだったんだけど(そんな事態があるかどうかも不明)、ディーンの方もベッドカバーとかスリッパとかだしてくうちになんともモゾモゾしてきてしまい、わざとポルノ雑誌が見えるように運んでたりもする。(一緒の店で買ったから、まるきりお揃いだったり、色違いペア状態だったりすることに片付けながら気づくわけです)
で、一通り終わるともう向き合うしかなくって、
「大体片付いたよね」
「…そうだな」
とかキッチン辺りで向かい合ってボソボソいったりして、
「ま、よろしくな」
「うん。こちらこそよろしく」
その辺でサムがちらっとディーンをもの言いたげに見たりして、ディーンが少し笑って、
「まあきばってお勉強しろよ弁護士さん」
とか言って首に片手を回して引き寄せてキスをしてやる。サムは神妙に受けた後、
「弁護士になるとは限らないけどいい?」
とか真面目くさって言ったりする。検事とか裁判官とか…とサムとしては司法の他の職業についてどわーっと話しそうになるんだけど、ディーンに「どーでもいいから」とか止められる。
そんでもって記念すべき同居一日目にはサムが、
「一緒に入らない?」
とか照れ照れしながら風呂場を指して、ディーンを絶句させるんだな。
「…狭いだろうが」
とかディーンは反論するんだけど、
「でもせっかく一緒に住むんだし」
とかわけわからん「せっかく」に押されて一緒のバスタブを使う。
結果としては
「狭い」
「張っておいた湯がほとんど溢れて不経済」
「中では無理(何が)」
「結果二人とも寒い」
等の実に意義ある検証結果が示されて、二人は早々にバスタブを大きい奴に買い替えるに違いない。
…そんな同居のはじまりじゃないかなあと思うわけです。
[20回]