二人は調査か何かで一緒に出掛けてるんですね。その出先からの帰り際に大雪に会うわけです。
イメージは列車利用で、でももちろん大雪で列車はこない。あ、それか列車で移動してたけど途中駅で立ち往生でもいいな。で、二人で粉雪の中ホームに立ってると。
兄貴はキャメルのコートの襟とか立てて、マフラーも巻いてますね。グレーとかかな。やっぱりブラウン系かな。
滅茶苦茶寒いけど、不必要に騒がないような教育を受けてるから黙って眉をひそめる程度。
なんで車内からホームに出たかというと…そうですね、列車以外の迂回路がないか調べに、とかスマホ(メリケンではなんていうんだろう)のつながりが悪いので、つながりのいいところを探して出てきたとかでもいいかな。
でも、駅舎の中でもやっぱりつながらないんですね(さすがに駅舎の中は粉雪はまわない)
「だめか」
と小さくため息をつく長兄が、珍しく焦ってる感じなので、サムは
「急ぎの用事でもあるの?」
とか訊くわけです。そうしたらディーンは少しだけ目を見開いて、
「いや、だがお前はこの調査が終わったら大学に戻ると言ってただろう?」
と返す。サムは少し離れた大学に在学中で、休暇で実家に帰ってる間の調査だったんですね。そんでもって、長兄はサムの大学がらみのことになると、少しだけナーバスなのです。
本人はもちろん自覚ありませんが、前世(というか二人がハンターになった世界)の記憶があるサムからしたら、あの世界の記憶がどこか影響してるのかなと思ったりするんですね。
そもそもサムが大学に入る時も、ディーンは少し落ち着かなくなって、でも自分では訳が分からなくて図書室で本を読んでてもちょっと上の空で同じ個所ばっかり開いていたりしたのです。もちろん口になんか出さないし、ジョンパパやへんりーじいちゃんも気が付かない程度なんですが。(ヘンリーじいちゃんは勿論もう一つの世界を知ってますが、あの世界のW兄弟のサミーの大学進学でもめたエピソードなんか知らないので)
でもサムはヘンリーじいちゃんが過去から飛んでくるまでのハンターとしての人生と、今の人生の二つの記憶が並行してるので(薄れてはいるけど)、自覚なく動揺してる兄に、目立たない程度に気をつかうんですね。セルフォンでこまめにメッセージ送ったり、スカイプが始まったらビデオ通話で
「そっちどう?」
とか
「兄貴、あの本知ってる?」
とか何かと用事を作って連絡を取ると。あんまり他の人に見とがめられなさそうな時間に。
そんでもって、
弟「やあ、兄貴。どう、そろそろ良い人できた?」
兄『そんな暇あるか』
だの
兄「そっちこそガールフレンドはできたのか」
弟『僕は学びに来てるんだよ』
だのやってるんですね。そのくせパーティだのなんだのあると、どちらもちゃんと女性同伴で来ると。でもどちらも普段のやり取りから相手がまだド本命の相手には会ってないらしいなとか思ってたり。(そしてそのまま30越すんだなディーンは)
(大学ナーバス長兄妄想は長くなりそうだからまた今度続きを書こう。)
さて、雪の中立ち往生の二人。とにかく早く帰らねばモードになってる兄の理由が自分の大学であることを知ったサムが、
「どうも当分動かなそうだから、もう今日はどこか泊まらない?」
とか言いだすんですね。日帰りの予定だったんだきっと。それでもディーンが「そんな贅沢な」みたいな顔してると、サムが
「この雪じゃ急いで戻ったって明日の授業はないよ。それに寒いしさ」
と肩をすくめてみせたりする。ディーンはちょっとしかめつらして、
「大学に行って軟弱になったんじゃないのか?」
なんて言うんだけど、そのままつかつか駅の中の案内所に行ってさっさと宿を手配して、それから電話を借りて家に電話をかけて、ジョンパパに
「今○○の駅ですが雪で立ち往生してますので、今日は泊まります」
とか連絡を入れるわけです。サムのことはちらとも出さず、自分の考えのように言うわけです。もちろんニュースにも出ちゃうような大雪ですから、ジョンパパも「そうか」とあっさり了承。
「行くぞ、サム」
なんて言って歩きだす兄の後ろを、サムが
「うん」
とかいってついて行くわけです。で、ディーンは寒いとか言わないけど肩をすくめて寒そうにしてるのに、サムの方は肩とか丸めずに歩いてる。で、ふっと振り返ったディーンが
「そういえば、お前寒いのには強いよな」
なんて「あれ?」って顔をするんですが、サムの方が「いや、寒いよ」とかしれっと言います。
サムとしては大学に戻る前に、兄と二人で話す時間が増えてナーバス対策になるかなとかいう思いもあるわけです。
視界が悪いので、お互いくらいまでしか見えないような粉雪です。
そんでもってサムが
「ディーンと二人で外に泊まるって珍しいね」
なんてちょっと気が付いて驚くままに口走ると、ディーンは振り返りもせずに(ちらっと横くらい見るかな)
「そんな用事はそうないからな」
とか答える。サムはもう、色々色々それどころじゃない違い(悪魔の血とか天使の憑依とか終末とか)があるのはわかってる(覚えてる)けど、自分と兄の在り様の違いに、改めて何か胸の奥でもやもやするようなものを覚えるわけです。
兄弟はそうして、また粉雪のなかをざくざくと、最寄りの宿に向かって歩いて行くのです。
キャメルのコートとダークグレーのコートで、ディーンが少し先を歩いて、でも時々サムを振り返りつつ。
しかしそーゆーことは機会があるごとにたび重なるので、マンオブレターのウィンチェスター家の長男と次男は、なにがどーというわけではないんだけれども「距離は近いなあの二人は」というのが周囲の共通認識になっていくわけです。
何が楽しいのかさっぱりわからないかもしれませんが私が楽しかったのでこのまま上げます。すみません!
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