最近淡々が多いので他のものも何か…!!
(やはり何をむきになっているのか自分よ。)
文字通り巨大なツリーだった。
「すごいね」
見上げるサムの吐く息が白い。
「ああ」
言いながらディーンは辺りを見回した。例によってFBIになりすましての捜査中だ。だが目当ての人影は見当たらず、コートのポケットに忍ばせたEMFも反応をしない。
(空振りだったか)
一つ息をついて帰るぞ、とサムを促すが背の高い相方は動かない。
「おい、戻るぞサム」
「うん」
返事はするが、相変わらず嬉しそうにツリーを見上げたままだ。
(そんなところは変わらねえんだな)
サムは例によって呪の再発中で今現在は夫モードだ。だが、口にはしないものの明らかにこういうイルミネーション系のものが好きらしく、黙って足に根が生えるのは通常の弟モードの時と一緒だ。
何となくおかしくなって息をつくと、気配に気が付いたのかサムがちらりと振り向いてニコリと笑う。その頬に子供の頃と同じようにえくぼが浮かんだのを見てしまい、今度こそこらえられずにディーンは笑った。
「もうちょっと見ててもいい?」
「ちょっとならな」
そう言ってしばし待つが、サムはやはり動かない。そういえばガキの頃から最後は怒鳴って帰らせたなあとディーンは思い出す。好きにさせると凍えるまで突っ立っているだろう。
だがなにせ今の格好は黒いコートを着た捜査官だ。そうそうぼーっとツリーを見上げているわけにもいかない。ターゲットがこないので今日の仕事は打ち止めだ。部屋でゆっくり飲んでもいいし、どこかのバーに繰り出す時間もある。
「おい、行くぞ」
「ディーン、見て」
しびれを切らせて声をかけるが、逆に促された。
そう、そういえば子供の頃のサムもよくこういうことがあったなあ、とディーンはそろそろ冷たくしびれてきた足の指を靴の中で動かしながら思い出す。サムがすごい!と夢中になるものを一緒に見た方が、平和的に連れ戻せることが多いのだ。やるやらないはディーンの気分と根気によるが。
見上げると白に統一された電飾が波のようにパターンを作って瞬いている。
「きれいでしょ」
「だな」
抵抗なく同意する。緊迫した状況でなければ、確かに結構な迫力の美しいツリーだった。
「ヒイラギが飾ってあるみたい」
「ツリーにか?」
「うん」
うっかり目を凝らしたのが間違いだった。
クリスマスにヒイラギ、そして夫モードのサムと来れば、1+1は2であるのと同じくらいわかりやすい答えだ。
だが(しまった)と思うときには時遅く、コート姿のサムの顔が近づいたと思ったら、唇にごく軽いキスが落とされた。
500歩譲って、普段着であったなら単なるゲイのカップルで目を背けられるくらいで済んだかもしれない。
だがしかし朝から町をウロウロして聞き込みをしていた捜査官同士だ。
暗い中でも背の高い二人は目立つのでなおさらだった。ちなみにツリーの周りは見物人で結構な混雑状態だ。
「………おい」
「ごめん。つい」
もはや騒いでも致し方ない。ツリーを見てればいいものを、ただでさえ目立つよそ者がさらに目立って周囲の視線がぐさぐさと痛い。
さすがに大人しくツリーから離れたサムをつれ、ディーンは無言で宿に帰った。
翌日のクリスマスも二人は朝から捜査を続けたが、行く先々で捜査官同士の交際について詮索されたのは言うまでもない。
メリークリスマス!(2度目)
クリスマスならなんでもえーじゃないかの一発書きなので、落ちもへったくれもございませんがすみません!
イブの夜ならみんなもう外でないで家の中か?とか見物客が多いならよそ者目立たんか?とか色々ありますがスルーで!
[26回]
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