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海外ドラマの超常現象の兄弟(SD)を中心に、頭の中にほわほわ浮かぶ楽しいことをつぶやく日記です。 二次創作、BL等に流れることも多々ありますので嫌いな方は閲覧をご遠慮くださいませ。
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暑いぞ(SD夫婦呪24)

えー、不思議なもので、先日のロボサムを書きおわった(手直し程度ですが)途端に、のんびり平和系をかける心境になりました。ふしぎだなー人の脳みそって。
しょっぱいものの次に甘いものを食べたくなる心境ですかしら。

あのでも、一応ですね、先日のロボサム没もですね、幸せなんですよロボ。だって消えずに済んだもん。ただ、兄貴も一緒に幸せになるのが、兄貴の多大なる諦めを必要とするんですよねー。だから20Pじゃ行き着かなかったんですよねー。
没な代物にも拍手やコメントありがとうございました!甘い系書く脳みそが枯渇したらまた書きますねー!

というわけで暑がっている兄弟、夫婦呪版です。








暑い。いくら夏とはいえ、殺人的に暑い。
車は砂漠地帯を走っていた。
ディーンは愛するインパラにエアコンをつける気などは世界の終わりが来ようともなかったが、窓を開けただけの車内はやはり暑い。そして黒革のシートは特に熱を集めやすい、ような気がする。
「サミー、運転替われ」
助手席でぐったりしたディーンが呻いた。ハンドルを握っていた方がまだ気が紛れる。だが、ちらりと視線を向けた弟は首をふった。
「ダメだってばディーン。この数日ろくにねてないから、危ない」
「俺がそんなヤワかよ」
そう、不幸なことに狩のために泊まっていたモーテルが大外れで、付けっぱなしのエアコンが夜中に何度も止まり、ディーンは暑くて目が覚めては、エアコンを調整して寝る、ということを繰り返していた(そして意外に図太い弟は毎日健やかにぐうぐう寝て元気だ)。
「事故るときは僕も一緒なんだぞ」
お兄様が伸ばした手を失敬にもバシッと払い除けながらサムがむっつりと言う。
「おい、サミー。お兄ちゃんのドライビングテクニックを信じないのかよ」
「信じてるよ。でも寝不足と暑さでイライラしてる相手には交代しない」
前を向いたままの弟は、テコでもハンドルを渡しそうもない。
あーあ、とディーンはシートに持たれた。熱い。ジャケットはとうに脱いでTシャツ1枚だが、愛車のシートにも汗がにじんでいる気がする。
「あっちい…」
陽は傾いてきたというのに、蒸し暑さはおさまる気配がない。光が入るようになり、眩しかったので、ディーンはサングラスをのろのろと鼻に乗せた。
「ほら」
突然額に冷たい感触が触れてディーンは目を開く。
「なんだこりゃ」
「保冷剤。気休めだけど熱中症にならないように腋にでも挟めば?」
見ると足元のクーラーボックスに入れていたらしい。飲み物の瓶と一緒に小さなパックがまだ数個見える。
「ピクニックに行く主婦かよお前」
「生活の知恵だよ」
「大学でお勉強した成果がそれか?アメリカの未来は暗いな」
憎まれ口を叩きつつ、しばし冷たい感触を味わう。
「ぐらぐらするぜ全く…」
呻いたのはほんの独り言だ。ところがそれを聞いたサムは突然路肩に車を止めた。
「気分が悪いの?ディーン」
「はあ!?」
真剣な顔で振り返られてちょっとあっけにとられる。
「この間のこともあるし、早目に宿を探そうか」
熱を測るように、手が首筋に触れてきた。心配しているらしいが却って暑いので振り払う。
「お前、まだ言ってんのかよ、しつけえぞ。暑いから触んな」
お兄様は同じネタでしつこく絡まれるのは好かないのだ。
だが。
「ああ、ごめん」
ちょっと傷ついたような表情の後に謝られてぎょっとした。
よもやまさか。
「サミー?」
「なに?」
こわごわと呼び掛けると、穏やかな表情で返される。
いや、サミーちゃん、筋金入りの弟根性溢れるお前としては、ここは「何だよ」とか言ってふて腐れて見せるところだろう。
だが願いむなしくサムは穏やかでちっともふて腐れない。嫌な予感がどんどん膨らむ。
「…運転替われ。その方が気が紛れる」
なので試しに同じ要求をしてみた。するとサムは苦笑して、
「だーめ。今日、ちゃんと睡眠とってからね」
と言いながらちょっとだけディーンの髪を撫でてきた。

だーめ。とな。
うちの弟は「だ」と「め」の間をこんな風に甘ったるく伸ばしたりしない。少なくとも兄相手には。
夫だ。何が作用したのか知らないが、いきなり変わった。
(・・・ジーザス!こんな時にかよ!?)
正直な感想はそれだ。
呪いの再発はいつ来ようが厄介なのに変わりはないのだが、ただでさえ暑さで死にそうなのにそこにキス魔でハグ魔の夫(体温高め)が加わるかと思うと、本当にめまいがしそうだった。


「寝てていいよ」
うんざりしてシートに凭れると、何を勘違いしたんだかサムが声をかけてくる。
「もう夕方だし、どっちにしても宿を探そう」
「ああ。とにかくエアコンがまともに動くとこだ。あとは何でもいい」
「そうだね」
そんな会話を交わした後は、なんとなく双方黙り込む。サングラスをかけているから、本気でディーンが眠ったと思ったのかもしれない。ディーンの方はとにかく暑い車の中で暑苦しく接近されたらたまらんと、夫に刺激を与えないように黙り込んでいた。
夫化した途端、サムの運転は妙に振動が少なくなった。速度が落ちたわけではないからブレーキングの加減だろう。ディーンは実際には寝ていないのだから不要かつ無用な気遣いなのだが、することもないので少しだけ目を閉じた。


 


「ディーン」
そっと揺すられてハッと体を起こす。いつの間にか本気で寝ていたらしい。
「着いたよ。チェックイン済ませてきたから入ろう」
「おお」
車を降りてぎょっとした。なんだここは。高級とまではいかないが、普段より格段にランクが高いホテルだ。問いただそうとするがサムは荷物を持ってスタスタと歩いて行ってしまう。
「おいサム!」
「部屋は上だよ」
ロビーに入るといきなり空調が効いている。天井も高くて効率も悪かろうに、さすがに高い宿はこんなところまでケチらない。
湿度がないと格段に楽で、ディーンは思わず感動しながらエレベーターに乗り込むサムを追った。


「おい、なんなんだよこりゃ」
部屋(やっぱりダブルだった)に入ってからディーンは改めてサムを問い詰める。どこに泊まったっていいのだが、こういう一般市民が頑張って泊まるようなホテルは、通常捜査上の必要でもない限りは使ったことがない。
「エアコンが動きゃいいって言っただろうが」
「うん、ここならホテル内どこに行っても空調ばっちりだよ」
「そりゃそうだろうが」
「プールもあるから泳いできてもいいしさ」
部屋に置かれた説明書をパラパラ見ながらサムが言う。
「プールだあ?」
「水着も貸してくれるって」


サムが開く説明書を掴んで放り投げる。
「ディーン?」
「もう一回聞くぞ。なんでいきなりこんなとこ泊まろうなんて気を起こした」
今まで気が付かなかったが、夫モードになったサムには浪費癖でもあっただろうか。だとしたら今後も注意が必要だ。たまたまだが、今は偽造カードのストックが余りない。下手な使い方はしないに越したことがなかった。
と、サムが笑う。
「宿代は大丈夫だからね。僕が貯めてた別口座を使う」
確かに普段使う偽造カードとは別に、サムがたまに入る収入をチャージしているのは知っている。だが、聞いたディーンは却って慌てた。
「ばか!お前、あれは何か買うって貯めてた奴じゃねえかよ」
確か新しいパソコンだか端末だかを買いたいと言っていたのではなかったか。カードでさっさと買えばいいだろ、というディーンに嫌そうに顔をしかめて、
『狩に必要なものは仕方ないけど、これは僕が自分の楽しみで買いたい物だから、できるだけ自分の金で買いたい』
とか言っていた。ばかばかしいこだわりだと思ったが、弟らしいとも思っていた。
それをこんなホテルの代金につかったら、正気に返った後で大後悔するんじゃないだろうか。
「いいんだよ」
だが夫モードのサムはけろりとしている。
「空調の悪い宿に当たると寝苦しいからちゃんと休みたいし」
「…毎晩平気で寝てたろうがお前」
「ディーンがだよ」
「俺かよ!?」
「今日もだるそうだったしね」
こりゃだめだ。ディーンはソファーに座り込む。正気に返った時、悲嘆にくれるサムの姿が目に浮かぶ。
なんだかあれだ。子供の頃コツコツ貯めてた小遣いを、怪しげな露店商の口上に乗せられてちゃちな玩具に使ってしまい、あとでしょげていた姿を思い出してしまった(もちろん子供の頃のディーンは、そんなサムをバーカバーカと囃して喧嘩になったのだが)。踊る磁石人形の方がまだましだ。
「それにね」
隣に座ったサムが顔を覗きこんでくる。視線を無視できなくなって振り向くと、ちょっと笑って頬にキスをされた。
「あ?」
「暑いとディーンに触れないし」
サムは満足そうにニコニコと笑うが、ディーンは頭を抱えたくなった。
これはいったい正気に返った時、どんな風に記憶されるんだろう。確かにインパラの中では思わず振り払ったサムの手も、今は気が付けば背中に回っている。
「お前はいいかもしんないけどよ…」
思考がそのまま口に出てしまうのは一般的にいって罪ではない。罪ではないが往々にしてトラブルのもとになる。


「ディーンは誰のことを心配してるの?」
静かな声で訊かれて、ディーンは一瞬固まった。だが、努めて冷静に答える。
「ちょっと後のお前だよ。明日か明後日か」
「僕はディーンとゆっくり過ごせるのが大事だって言ったよね」
「でももともとそのための金じゃねえだろうが」
「僕がいいって言ってる」
「・・・ま、いいけどよ」
話しがややこしくなるのでディーンは話を切り上げようとした。が、そうは問屋がおろさない。
「ディーンは誰のことを気にしてるの?」
もう一度訊かれる。
「だからお前だよ!」
「ディーン」
肩にそっと、だが断固とした意思をもって手がおかれ、正面から向き合わされる。
「誰か、大事な人がいるの?」
悲しんでいる。でも穏やかに話そうとしている。夫の時のサムはディーンがつっかかろうが女の子と遊ぼうが、冷静で優しく、愛情表現を惜しまない。
だが正常な状態じゃない。そして忘れる。


急にフツフツと怒りが込み上げてくる。エレンやジョーは「どっちでも変わんないわよ」というが大違いだ。普段のサムと今は違う。それぞれが好き勝手に振る舞い、その皺寄せはディーンに来るのだ。


「…だってお前、気が変わりやすいじゃねーか」
「え」
「今はいいのかもしんないけどな、後でうじゃうじゃ言うのを聞かされんのは俺なんだよ」
「言わないよ」
「言うさ!」
だってお前は消える。痒いセリフを連発し、振り払ってもハグだのキスだのベタベタ引っ付いてきて、俺がまあいいかと思い出したところで消える。呪いだから仕方ない。だがそんな奴の言うことなんかあてにできるか。


「…今までも僕は気持ちが変わって、ディーンを困らせたことがあるんだね」
考え込みながらサムが呟く。久々で忘れていたが、呪いの最中はディーンの言い切ることを信じこみやすいのは変わらないらしい。
「ああ」
「ごめん」
素直にしょげられると、ディーンの方も気まずいが、そもそもの問題は違う。
「だから、俺が気にしてんのはお前のことだ、いいな。変な勘繰りすんじゃねえ鬱陶しい」
「うん」
びしっと指差して言い渡す。と、頷いたサムがくすぐったそうに笑った。
「…なんだよ」
「さっき、ディーンは凄く心配してた」
「だから?」
「他の誰かと思うと悲しかったけど、僕のことをあんなに心配してくれたのかと思うと嬉しくて」
「…そーかよ」
「でも、もし僕があとで気が変わって後悔しててもそれは僕自身の判断だから、ディーンは放っておいてね?」
両手で頬を包まれ、額に軽く唇が触れる。
「そうしたいけどな」
どうせ俺は過保護過干渉のブラコンだ。ため息をつくと、サムが心配そう覗き込んでくる。
「気が変わった時、僕はディーンを追いかけて無理やり文句を言ったりするの?」
「いや、そこまでしねえけど」
尋ねられて戸惑う。なんでこうディーンの言葉をそのまま信じるんだろう。ある意味事実を言っているのではあるのだが。
「よかった。パソコンに明日か明後日用にメモを残しといた方がいいかと思ったよ。今の考えと、僕が自分で決めたことを思い出せるようにね」
「・・・・そこまでしなくていいだろ。そう言うなら、明日お前が喚いても俺はほっとくさ」


口は禍の元。
注意一秒怪我一生。
弟の面倒を見ろ。


突然人生の教訓が一気に頭の中を駆け巡る。
いかんいかんいかん。暑さと寝不足とが重なっていたとはいえ、やばいことになるところだった。夫モードでの決意表明文など残されて正気のサムが見たら、また「僕はおかしくなったのか」とかなんとか心配する。
今回はギリギリセーフですんだ、と、信じよう。
ディーンがまたも心の冷や汗をだらだらかいていると、気づいているのかいないのかサムは指摘せずにっこり笑う。


「じゃあ、今日はこの後どうする?」
「あ?」
「まだ夕方だから一眠りしてもいいし、早めに食事に行ってもいいし、さっきも言ったけど室内プールやスパもあるよ」
「・・・悪いが寝る」
プールやスパは正直心惹かれるが、とりあえずシャワーでもしてさっさと睡眠不足を補っておいた方がいい。そういうとサムは気にした様子もなくうなずいた。
「それがいいね。とりあえず三日部屋は取ったから、少しゆっくり休もう」
「三日!?」
「夏休みだよ。誰も僕らにバカンスなんてくれないしさ」
「………ま、いいけどな」
ディーンが辛うじて返すと、サムは満足そうにうんうんと頷いた。


 


結局その後の数日間サムは夫モードのままで過ごし、宿を出て車に乗り込んだ辺りで戻った・・・らしい。
「豪勢な宿だったなあ」
とエンジンをかけながらディーンが呟いたのに対して、
「安かったよ。ギャザリングサイトで見つけた大量キャンセル対策の格安プランだったから。モーテルより安いくらいだ」
と返してきたからだ。
「そういうのは早く言えよ!」
と怒鳴るディーンに、正気に戻った弟君は、
「別に、僕の金だったんだから言う必要ないだろ」
とむっつり返した。暑い車内はいきなり兄弟げんかの舞台になりかける。んが、さすがに思いとどまったディーンはとりあえず車を発進させた。
「…まったく、いきなりどうしたかと思ったじゃねえか」
その呟きも悪気はない。が、サムはまた反応した。
「横で一日中『エアコンがぶっ壊れるような安い宿はもう嫌だ』だの『プールがあるような豪勢な宿に泊まりてー』とか呻いてたのは誰だよ」
「…俺か?」
ディーンは心底驚いて横を見る。サムは眉間に縦ジワを寄せて頷いた。
「なんか朦朧としてるし、この間のこともあったし」
「へー・・・そりゃまあ、サンキュー」
「どういたしまして」
サムはちょっと眉を上げて応え、話しは終わったかのように窓の外に目をやる。


『どっちだろうとサムに変わりないわよ』
脳裏に呆れたようなエレンの声が浮かぶ。

「だけどなあ…」
ディーンは声に出さず口の中で呟く。何やら困ったことになった気がする。
だがもぞもぞする思考を突き詰めて考えるのはあまりにも暑くて、ディーンはそれをとりあえず棚上げしたのだった。


 


 


終わり終わり


 


まあ、相変わらずそんな感じで。
兄ちゃんは夫モードになったサムには色々言いたいことがあるようです。
別名夫やきもち編でした。期待されてたものとは違うかもですが。
宿ではそれこそあーんなことやこーんなことがあったんでしょうが、長くなるので切り上げました。涼しく過ごしている風景なんて羨ましすぎるし・・
追記:8.29 ちょっと修正しました


 


 

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