例えばゾンビな兄貴とサムの誕生日前夜
サムは困っていた。
明日はディーンの誕生日だ。もう狩もしていない生活の中で、サムとしては何と言うか、一大イベントとして扱いたい。だが、どうもディーンの方が乗り気でない。
「もう死んでるじゃねえか」
というのだ。
「今の俺だったら、ゾンビになった日なんじゃねえの」
だが、いかにサムであろうとも、ディーンが決して喜んでいない今の『ゾンビ』状態になった日を祝うほど無神経にもなれない。
「ディーンは、何かしたいこととかないの?」
ほぼ自分だけが食べた食事のテーブルを片付けながらサムは尋ねる。
「いや、別に無い」
予想通りの答が返ってきて、サムは笑いの形に口をゆがめる。
以前なら、ディーンの気持ちはどうあれ、祝う形を作るのは簡単だった。
ちょっといい料理にビール、それにパイでも並べれば明らかに非日常な祝いの席だったからだ。
とりあえずディーンが喜んで使いそうなものもいくらでも思いついた。
だが今、ディーンは大して食べもしなければ飲みもしない。
昔ならニヤニヤした雑誌にもとんと興味を示さない。
祝いたい気持ちはあっても、ディーンが喜ぶものが、今サムにはわからないのだ。
・・・・とかね!
同じ暗い系でもS6サムと兄だったら(2年目かい!)今度こそ互いに一言も触れずに過ぎるだろうな。
ディーンはバーのカウンターで酒でも飲みながら、
(ああ、誕生日か)
って思い、でもバーテンの女の子にもそれを言う気にもならずに
(また1年たっちまった)
と思いながら飲んでると。タマナシサミは、そんな兄貴の姿は目の端で捉えつつ別に構わないと。誕生日であることと、自分の状態を絡めて兄お得意の自己嫌悪にどっぷり使っていることは分かっている。
(ディーンの得意技は、わけも分からず自分を責めることだ)
とか冷静に分析されるとよろしい。
ああ、なんかしらみつぶしにやりたくなってきたけどまた日付を超えるのでこの辺で
[14回]
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