〔脳内妄想その1 S6以降兄がS1弟と会ったら〕
スタンフォードに在学するサム・ウィンチェスターのアパート。
ロースクール受験の前日に、ひょっこり兄が訪ねてきた。
「何の用?」
我ながら酷い態度だとは思ったが、サムは警戒していた。
休暇にも帰らず、電話にも出ない自分に業を煮やして連れ戻しにきたのかと思ったのだ。
だがしばらく会わないうちにすっかり大人になっていた兄は、怒る様子も傷ついた様子も無かった。
そもそもが狩に戻れといいに来たわけではなかった。
「警告だ。お前はまともな環境にいればまともな生活を送れるつもりでいるんだろうが、寄ってくる悪魔もいるからな」
そもそも「悪魔」が現実にウロウロしているという話すら、サムにとっては初耳だったが、そんな世界から足を洗ってもう4年だ。反対に兄にはこの4年の蓄積があるのだろう。
戸惑うサムにディーンは簡潔に自衛の方法を教えた。
塩と鉄。聖水。憑依した悪魔を顕わす言葉。悪魔祓いのスペル。そして憑依を避けるためのタトゥー。
「タトゥーだけはなるべく早く彫れよ」
「・・・父さんとディーンは大丈夫なの」
現金なものだが、連れ戻される心配が無くなって、やっとそんな言葉が出てくる。
そんなサムの行動さえも予想範囲内、といった余裕の態度を崩さない兄は、ちょっと眉を上げて口の端を上げた。まるで笑うように。
「今のところはな。連絡が取れなくなったらボビーに尋ねろ」
連絡先覚えてるな?という言葉に頷く。
それから。
と、初めてディーンが言いよどんだ。
「お前の見てる夢があるだろう。現実にしたくなかったら彼女にも防御は教えておけ」
「・・・どういうこと?」
顔が引きつるのが分かる。
確かに自分は見ている。天上に張り付き、血を流しながら燃えて行く恋人の姿を。
瞬間思ったことは、兄が災いを運んできたのではないかということだった。
今、ここに。
それすらも読んだかのように兄が微かに笑う。
「俺じゃねえよ」
「・・・言えよ」
「関わりたくないんじゃねえのか?」
「言えよ!!」
ディーンは少しの間逡巡したようにサムを見つめ、それから口を開いた。
・・・・・・・・・・・
ってな感じでですね、兄貴はS6以降の兄はサミーを関わらせない方向に動こうとしそうですよね。そしてS6以降の兄は、夜中に忍び込まずにちゃんとドアでピンポン押したようです。
この後ぜひぷんスカする大学生サミーの前で、悪魔をさっくりざっくり有無を言わさずやっつけるハンター振りを見せ、びっくりするサムに「気をつけろよ」とか言って一瓶の聖水をくれて去っていくんですね。
ううう、アニキ。
ディーンのアニキぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! (背景は夕日でお願いします)
で、当然ながら逆を考えますね。
・・・・・・・・・・・
〔脳内妄想その2 S6以降サミがS1兄に会ったら〕
その夜、18歳で家を飛び出して以来会っていない弟が生活するアパートメントに、ディーンはそっと忍び込んだ。
正真正銘の兄弟の家にこそこそ忍び込む理由は、まともに訪ねても弟が扉を開けない可能性が一つ。
普通の暮らしで鈍っているであろう弟のハンターとしての資質を見たいのが一つ。
だが、そこでディーンは信じられないものを見た。
「Hey、ディーン」
暗い部屋に忍び込んだとたんに、待ち構えていたように声をかけられたのも驚きだったが、それ以上に。
「サム・・・か?」
簡素な学生用のアパート。キッチンの椅子に座る影。
「僕を訪ねてきて何言ってんの」
微かに笑いを含ませた声は確かに弟なのだが、何となく影の体積が違う。
「お前、なに食ってそんなに育ったんだ」
と、サムがフッと笑う。
「大学生活で鍛えられたんだよ」
そう言ってゆっくりと立ち上がる。でかい。幅と厚みが最後に見たときの1.5倍くらいになっているんじゃないだろうか。
「行こうか」
「え」
「親父が消えたんだろ」
「なんで知ってる」
「話せば長い」
ディーンは戸惑い、だが正直嬉しさも隠せなかった。だが、床に置いていた鞄を拾い上げ、歩み寄ってきた弟の姿を外灯の中で見て驚愕する。
「サミー!?お前どうしたんだそんなに老けて」
分厚い胸板、削げた頬、薄っすら残る髭の剃り跡、濃いもみ上げ、そして太く血管の走る腕。
正確に言えば老けたというより男臭く育ったというべきなのだろうが、弟はまだ22歳のはずだ。
最後に別れた時の頬は髭が生えているのが可笑しい位の柔らかな丸みを残していた。
なにがどうなってこんなゴジラに。
ディーンの知る弟ならキーキー怒りそうな兄の暴言にも、今のサムは目くじらを立てなかった。
「そりゃ、大学生活してたからね」
ちょっと笑う顔は確かに子供の頃の面影も残していて、ディーンはホッとするような複雑な気分になる。
サムはインパラの後部座席に慣れた動作で荷物を投げ込み、助手席に座ってくる。
「・・・大学ってのも苦労が多そうだな」
自分はもしかして大学の仕組みを良く分かっていないのかもしれない。
会った瞬間からデコ全開のヘアスタイルが気になって仕方がないのだが、さすがにそれは口にするのがはばかられた。サムはまだ22歳だし、実は気にしているかもしれない。
だけど彼らの父は50を越えた今でもフサフサだ。
だからきっと大丈夫。大丈夫だぞサミー。
兄の心弟知らずで、隣に座ったサムは「ちょっとディーン腕出してよ」などと言いつつ勝手に自分の腕と比べ、「わあ、ディーンこんなに細身だったんだ」と何がおかしいのか浮かれた声を上げる。
「黙れゴジラ」
ディーンはムッとしてアクセルを踏み込んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・
てな感じですかね。この後もサミーは偉そうだし、行く先々でサミの方が年上に見られるして兄はプンプンに違いない。
でも書いてるうちにやっぱり最初の萌えポインツを見失いました。きい悔しいわママン。
そして最初の予定に無かったフサフサが妙に目に焼きつく・・・
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