サムは変な世界に迷い込んだ。
一見して、サムがもといた世界と同じように見える。だがしかし色々と変だった。
第一になぜかディーンと夫婦だ。
日常の過ごし方は普通と大して変わらなかったので、数日気づかず、仰天した。
「・・・もう一回言ってくれる?ディーン。僕と兄貴がなんだって?」
「ふうふ」
「兄弟だよね?」
「何度も言わせんな。兄弟だけど夫婦だ」
「・・・・・・」
恐ろしい世界に来てしまった。
「おい、なんだその面は。したいっつったのはお前だろ。言っとくが俺は女の方が好きなんだからな!なのにお前がどーしてもと頼み込むから」
目の前でサムにビシッと指を突きつけているディーンは、もといた世界にいたサムの兄弟と同じ顔で同じ体格で同じような服装で、ついでにいえば眉間に皺を寄せた表情も同じようなものだった。
ああ神様。この世界の僕はどうしちゃったんですか。なんでこんなどっからどうみても普通な兄貴と結婚なんてそんな。
兄貴も兄貴だ。女の方が好きなところまではまともだ。
だけど弟に頼み込まれたくらいでそんな要求呑むなよ。
天を仰いでいるサムを、胡散臭そうな顔で見ていたディーンが、セルフォンをとりだしてどこぞに電話をかけた。
「ボビー?俺だ。サムの様子が変なんだ。ちょっと見てくれるか?」
・・・・世界が違っても何かあったときにすぐボビーに頼るところは一緒らしい。
幸いボビーはどこかのおじさんと夫婦になっているとかいうことはなく、相変わらず一人でガレージを経営していたのでサムはホッとした。
だが、
「別に変わったところはないがなあ」
「ボビーでもわからないか・・・」
「あっちに聞いてみたらどうだ?」
「キャスか?」
なぜか隣の家にはキャスとバルサザールが一緒に住んでいる。
「・・・もしかして2人も夫婦だったりするの?」
恐る恐る訊いたら、
「我々は繁殖行為を必要としない」
とよく分からない返事を返された。
どうも天界で色々ありすぎて、2人とも地上に来たままでいるらしい。
毎日なにをしているのかと思えば、ただ並んで延々と周囲の人間を見ている。
それこそじーっと。
「なにやってんの?」
と訊いたら
「人間を見守っている」
と答える。
カスティエルが身動き一つせずにいるのに対して、バルサザールはちょっとウロウロしたりするが、基本的には一緒だ。
手助けするでもなく批判するわけでもない。
完全なる傍観者だ。延々と飽きないのかと訊いたが飽きないらしい。
「ちなみにどれくらいそうして過ごしてるの」
「神が我らを作られてから」
すでに何千年これで来たなら、この先数千年もじーとしているのだろう。
動物園のワニが動くのを見張るより大変そうだ。
それからディーンがいじるラジオのようなものから、なぜかジョンの声がする。
「ダッド!?」
サムは仰天したが、ディーンは平然としている。
『そちらは変わりないか』
「ああ。そっちこそ大丈夫かダッド」
『無事だ。だが今の潜伏先が見つかりそうなので移動する。いいか、油断するなよ』
「わかった」
緊迫した様子で通信機を切るディーンに尋ねる。
「えーと・・・ダッドどこにいるんだっけ」
「天国のどっかだろ」
もしかするとこの世界では父が存命なのかと思ったが違うらしい。
「・・・・・なんで天国で潜伏すんの」
「そりゃ天使に見つかると厄介だからだろ」
よく分からないがせっかく天国に行っても潜伏先ってなんなんだ。何やってんだうちの親父は。
「まあ、どうせウィンチェスター類だからな」
「・・・??ウィンチェスター家じゃなくって?」
「違う。ウィンチェスター類」
「えーと」
聞けば天国と地獄と往復しまくったり、天使や悪魔に乗っ取られたり、逆に天使や悪魔を倒したり避けたり吹っ飛ばしたり、色々しまくったせいか、ついに「人類」のカテゴリーから外されてしまったそうな。
「ちなみに、ウィンチェスター類ってどのくらいいるの」
「なに寝ぼけてんだ。俺とお前以外いないだろーが」
「・・・・」
「ダッドも生きてりゃ入るだろうけど、天国だからな」
それは分類後即、絶滅危惧種じゃないんだろうか。
というか今後増えることありえないし。
ちなみに、ボビーが人類とウィンチェスター類の狭間で、いま微妙な位置づけでいる。
・・・・てな夢を見たんですよ。オチがないけど、まあ夢だから。
オタクって夢まで侵されていていやですねえ
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