きっかけは深刻なものというよりは、くだらないことか、あるいは普通の喧嘩が激化した感じがいいな。
チョコバー(まだ言ってる)食べちゃったとか、ジョンパパのことでサミーが文句言って兄貴が怒ったとか。
兄貴がバーン!と部屋から出たと思ったらエンジン音がして、モーテルの窓からサミーが見ると動き出すインパラ。サミーが目を剥いて
「おい!」
なんて言ったりするんだけど、そのまま行っちゃうの兄貴。
サミーはとりあえず一晩はほっといて、翌日の午後になっても帰ってこなかったらセルフォンに電話くらいはする。このへん、まだバーに飲みに行ったレベル、どっかでお泊りしてるレベルと一緒。
でも兄貴は出ないので留守電に、
「どこでなにやってんだよ」
てなメッセージ入れて切る。そーしたらしばらくしてから
「うるさい」
てなテキストだけ送られてきたりする。兄貴が口も聞きたくないのか、口をきいたら終わりだと思ってるのか(笑)は微妙な問題だからおいておこう。
あ。ちょっといつもと風向きが違うな、と思ったサミーがふと気づくと、ジョンパパの手帳が無い。
部屋から持ち出したものは他にほとんどないんだけど、手帳以外にははっきり言って捨てていけるものばかり。
ぎょっとして部屋を見回すサミー。
それからサミーは2,3日はモーテルで待機してるだろうけど、兄貴は帰ってこない。
しかし弟は1週間くらいで根気がなくなる。
「移動する」
とかテキスト入れて、モーテル引き払っちゃうな。PCの入ったナップザック抱えてヒッチハイク。
一応連絡は時々入れると思うの。
「生きてるのか?兄貴」
とか言って。
そして兄貴は弟と違うから、無愛想ながらもテキストで返事はするわけですよ。
あんまり同じ文面ばっかり返ってくるから、サムが
「死んでないなら声を入れろ」
なんて言ったら、
「生きてるに決まってんだろ」
と一言だけ言って(素直だ兄貴)切れる電話が来たりして、とりあえずサミーは「兄貴の安否」の心配はしないですむ。
そーするとさすが弟。兄貴がインパラに武器をあらかた乗せて行っちゃったので、「無理だ」って狩もあまりしなくなりそうだ。
そしてどこかの町に仮住まいしちゃって適当に過ごし始めるんだけど、町の住人といい時々サムに手伝いを頼みに来るハンターといい、サムの「兄貴の異常な行動」に全然同調しない。
ついでに「ま。でも何かあったら絶対に手は貸してくれるし」というサミの確信はすごーく妙な顔をされるに違いない。
「大人になれば兄弟だって離れてて当たり前だろ」
「いや、うちの兄貴はちょっと違って」
「そうか、まあ変わってたのがやっと普通の兄弟程度になったってことだろ」
「・・・いや、あの兄貴が変わるのは想像しづらい・・・」
「でも、現に出て行って、それぞれ別々に暮らしだしたわけだろ」
「・・・・・」
正直、自分のほうが『普通』に踏み出すのはあって当然と思っていたけど、ディーンの方から『普通の状態』に持っていかれるとは思ってもみないサムはちょっと憮然。
そのまま何もないとサミーの方からはなかなか探しに行かないんだろうけど、ちょっと何かあって、
「来てよディーン」
ってろくろく説明もせずにメッセージ入れたら、その日の夜か翌朝には、兄貴バビュッと来てるに違いない。
ご近所びっくり。
「これがアノ兄貴か」「ほんとにすぐ来た」「早かったなあ」等々
そして兄弟はどっちも相手が悪いと思ってるので、どちらも謝りはせず、でもなんか顔を緩ませながらインパラに乗り込むのでありましたとさ!
と。この辺にしておこう。
・・・・・下手したらサミーは困ったことや寂しいことがなければ1年くらい兄貴をほっときそうな気がする(涙)
でも1年後でも2年後でもサミーが「助けてくれディーン」なんて入れたら寝ないで1000キロ走破して駆けつけるんだよ・・・・・狩もきっと切り上げちゃうんだよ・・・・・・
・・・そしてサミーは「うん、兄貴はそんな感じ」とかぺろっと他人に認めちゃってドン引きされるんだよ。
たまには兄貴もバーンと出奔しちゃえ!と思ったのにあんまり兄貴の発散て感じにならなかったです。無念。
バーンと遊んで、持てて、他のハンターに頼られちゃって・・・・ってのがたまにはあってもいいはずだ。
そのモテモテ環境もあっさり捨てて弟からのコールにぶっ飛んでいくんだね。
だって俺は兄貴だから。ってなもんだ。
やっぱり変だなW兄弟!
[18回]