詳細は省くが、甦ったディーンには魂が欠けていた。
やることは大して変わらない。
部屋を散らかして、リスのように頬を膨らましながらモノを食べて、狩りをする。
そりゃそうだ。本人なんだから。
冷徹なハンターぶりも、カード詐欺やその他の違法資金調達を平然とするのも変わらない。
変化として、無駄口は減った。
(ううん、兄貴のうるさいおしゃべりは魂の担当だったのか)
サムはちょっと意表をつかれた気分になる。ずっと減って欲しかったのに素直に喜べない。
それから映画を観なくなった。映画好きも魂の担当だったらしい。
チョコバーやM&Mは同じようにやたらと食べるのに、なんだか不可解だ。
だが。何かの折りに狩りの情報が途切れた時、
「別に無理して狩りをする必要もないな」
とディーンが言い出し、サムはそれこそ仰天した。
「マムの仇も討ったし、悪魔との契約もないし。悪魔が何かしてくりゃ撃退するが、どうせ根絶やしにするのは無理なんだし」
「ちょっと待ってよディーン」
サムは慌てる。
「世の中には困ってる人がいるだろ。守らないと」
するディーンは怒りもせず、慌てもせずに言った。
「頼まれればやってもいいさ。幽霊問題ご相談くださいって広告だしたらどうだ」
その顔は嫌味でもなく、そのままの意味らしい。
「・・・信じられない。ハンター以外なにができるって言ってたのに」
「別にしないぞ。確かに他にできることもないしな」
どうも単純に魔物を追っての移動を止め、何か外から依頼があるまではいつもの調子で調達した金で暮らすだけのつもりのようだ。
「・・・僕はいやだよ。ただ違法な金で暮らすだけなんて耐えられない」
「お前の好きなまともな仕事は?」
「それこそ今さらだろ!」
怒鳴ってみても魂のない兄は、ふうんと呟くだけだ。
怒るのも傷つくのも魂の担当か。それは何だか納得だ。
感情の起伏が無いのでサムが何を言おうがしようが、喧嘩もなければ仲直りもない。
ふてたサムが一人で狩りに行こうとすると付いてくる。
「なんだよ」
眉間に皺を寄せてもディーンの表情は動かない。うざったそうな顔さえしない。
「狩があるんなら行くさ。無理に探さないだけだ」
ディーンは淡々としている。
そしていかにもやばそうな暗闇の前に立つと、自分が先に行こうとする。
「サム、下がってろ。俺が行く」
「・・・・・なんなんだよディーン。まだ弟を守るとか言うつもりか」
「それはするさ。俺の役目だ」
言われた瞬間、サムは逆上した。
「魂無いくせにそれってなんだよ!?あんたにとって僕を守るのは習慣なのか?歯磨きみたいに?」
「習慣ってのは悪いのか?」
ディーンは女と遊ぶ回数も減った。時々、いかにも欲求処理のように商売女を買うだけだ。
酒場でのナンパもしなくなった。
てっきり本能全開で遊びまくるだろうと思ったのに、兄の遊びは魂が求めていたのかと思うとサムは何となく胸が軋む。
そして自分を守るという行為が魂に関与していないという事実も。
「なんかそれって酷くないか」
狩りの場に踏み込む前だと言うのに、こともあろうに涙ぐんでしまう。男としてもハンターとしても、当然サム・ウィンチェスターとしても有り得ない失態だ。
だが、
「泣くな」
魂の無い兄は、それを咎めることもせず、まるでプログラムされた動作のように俯いた弟の頭を撫でた。
おしまい
何か色々と似たようなフレーズもありますが、まあリハビリなので。
今日中に上がったことに意義があると思うの。うん。考え込まずにさっさと書くんだ自分!