その1 ゾンビSDで「抱っこ」とは
えー、他のハンターに頼まれて、狩に加わる二人。
もちろん他のハンターの視線は冷たく、そんなにつんけんすんなら何で呼ぶんだ、という雰囲気。
狙いはディーンがゾンビなので、足止めするときの囮にするとか、瓦礫や落石や落とし天井や、とにかく危ない所に誰か行かなきゃいけない、というシーンで「死んでるからいいだろ。手足がつぶれても接げばいいんだろ」と、盾と言うか捨石と言うか、まあそんな感じで便利に使われる。
で、狩の終盤、壁かなにかが崩れて、足を潰され、歩けなくなるディーン。ゾンビだから出血死とかはないはずなんだけど、視界が暗くなってくる。やべえな、とか思ってるとサムがゆっくり寄って来て、瓦礫を退かして抱き上げる。
「帰るよディーン。早く手当てしないと」
「ばかやろ、おまえ、狩は・・」
「最後は『人間』だけで仕留めたいんだってさ」
人形のように運ばれながら、ぼんやりした視界の端では、ディーンを捨て駒に使ったハンターがボビーに殴られてるに違いない。
次、オフィスで「抱っこ」
秘書は「抱っこ」は言わんなあ・・・(ゾンビ兄だって言ってない)。
えー、賭けに負けたディーンは、社内の悪友から
「社長室でソファーにしどけなく横たわり、何か言われたらすっと片手を伸ばし『じゃあ、抱いていって』と言うべし」
「そして社長の反応を報告するべし」
というアホな罰ゲームを食らう。
あーあーあーーーーーと思いつつ、逃げられぬ訳があるので実行するディーン。
さすがに業務中は殺されるので、昼休みを狙う。
ソファの肘掛にどーんと足を乗せて転がっていると、社長が見つけて不審な顔。(秘書は普段さっさとランチに出る)
「どうした」
「別に」
「そうか」
「・・・・・・」
しまった。会話が途切れた。焦った秘書は社長に向けて手を伸ばし、セリフを言おうとして噛んだ。
「抱(いてい)けよ」
・・・・・・・大失敗。やり直し。
を、する間もなく、目をちょっと見開いた社長が
「いいとも」
とか圧し掛かってきて、あんぎゃーーな事態になるに違いない。
とても報告できないね、秘書よ。
ついでに
「狭かった」
とか言って社長がソファーをでかいのに買いなおして、秘書は毎日いたたまれない思いをするに違いない。
最後、幼なじみで「抱っこ」
喧嘩をした二人。
大変に深刻で、お互いにダメージを受ける。そして寂しい思いもする。
そして仲直りをした二人。
ほっとして食事したり一緒に飲んだりしながら、話題が「恋人としたいあんなことこんなこと」の話になる。
サムが
「恋人を抱き上げて寝室に入りたい」
と口を滑らせて、ディーンはゲラゲラ。
「そりゃむりだ!お前、俺とくっついた時点で無理だ!」
サムはプンスカ。
「できるよ! そのために引越しのバイトもして重いもの抱えるコツはわかったし」
と、また口を滑らせる。ディーンは目を丸くした後、目尻をくしゃっとさせて笑って、
「へえ」
とか言って両手をサムに伸ばす。
「そんならせっかく仲直りの記念だ。やってみろよサミー」
サムはびっくりして赤くなってまっかっかになって、それから鼻の穴をプフーっと膨らませて、
「う・・うん!」
とか言ってディーンに手をかける。半分くらいは冗談だったディーンはびっくりするけど、ちゃんと抱えられる。
「ね?」
とか、ちょっとよろめきながらも「どーだ!」って感じに得意そうな顔をするサムに、ディーンは
「そうだな」
とか言って、腕を回してキスしてやる。
そのまんまサムは本当にディーンを抱えて寝室まで完走すると!らっぶラブだわ。
そして翌朝、食い散らかしたテーブルの片づけでちょっと口げんか(半分照れ隠し)するに違いない。
よし!30分で3つ書けたーーーー(いったい何のリハビリだ)
[23回]