ソファーの上にはディーンの脱いだ靴下。
「ディーン」
ため息のような声でサムが言う。
「ディーン。脱いだ靴下はランドリーバッグに入れてくれ」
穏やかに言われてベッドで雑誌を読んでいたディーンは顔をしかめた。
「うるせえなあ。細かいこと気にするなよ」
「ここがディーンの部屋ならな。俺という他人がいるんだから気を使えよ」
言いながらサムはディーンが動きそうにないのを見て取ると、さっさと自分で靴下を片付けた。
「…結局お前が片付けてるんじゃないか」
ふん、とディーンが鼻を鳴らすと、不意に視界が翳った。うお。自分を兄と思っている弟がのしかかってくる。…と、鼻を軽くつままれた。
「俺は兄貴だからね。可愛い弟の面倒をみてやるんだよ。ありがたく思えよ」
しょうがないなあ、という慈愛のこもった目で見られて無性に逆上する。この野郎よりにもよってなんて気持ちの悪い呪いにかかりやがったんだ!
手を払うと、鼻から離れた手は今度は生意気にもつん、とディーンの額をつつく。これも思い切り払う。
「兄貴ぶった口をきくなよ!腹が立つ」
うん、これなら俺の腹立ちも表現しつつ、呪いによる思い込みを刺激もしない言い方のはず。とにかく兄貴ぶるサミーというのは最悪だ。この世で気色悪いもの選手権をやったらぶっちぎりの1位に違いない。
ぎりぎりと睨みつけると、サムがふふん、と笑った。
「くやしかったらお兄ちゃんをまず背丈で抜かしてみな?ディーン」
「なんだとてめえ!」
やっぱり密かに人を馬鹿にしてたなこの野郎。思わず立ち上がる。大体俺は平均男子として十分育ってるんだよ。お前が育ちすぎなんだこのゴリラ!
兄弟げんかするのは呪い上も問題ない。今までもさんざんやってきた。ストレス解消してやろうとサムのシャツの襟元をつかむ。
と、引き寄せる前にサムが自分からくっついてきた。というか腕を回してきた。そして左腕で俺の両腕をホールドしつつ、右手でぐしゃぐしゃと俺の髪を撫でる。
「冗談だ。怒るなよディーン、悪かった。」
…穏やかに笑うこいつの顎にアッパーを喰らわせるだけの怒りの持続力が欲しい。
「…なにニヤニヤしてんだよ、気色悪いな」
せめて思い切り眉をしかめる。ああ、早く呪いが解けねえかな…
「いや、こうして見下ろすと、我が弟ながらかわいいなあと思って」
汗臭い胸板にぎゅっと抱き込まれてディーンは切れた。
「もう最悪だ!耐えられないボビー!!物凄く気持ち悪い!!!!!」
バスルームに駆け込み、シャワーをひねってからボビーにヘルプコールをする。
『今、解呪の方法を探している。もう少し頑張れ』
「やたらと触ってくるし、過干渉だし、過保護なんだ…」
『それは、だめなのか。お前としては』
「だってありえねえだろ?兄弟で」
『…普通はな』
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あれ?なんか一番楽しいところに触れていないような気が…なんだっけさっきのひらめきは…(惜)すみません↓↓
[8回]