インテリアの色調はモノトーンで、直線的なデザインがいい。思考がクリアになる。
だが今、サンドーバーの営業部長ディーン・スミスは、自分好みに整えたオフィスの椅子に腰かけ、お気に入りのシルバーのペンをいらいらと弄びながら、取引先へのメールを書いては消すことを繰り返していた。
我ながら余りの効率の悪さに、休憩しようと思い始めた時、社内メール受信の通知が出る。
さては午前中に送った添付書類に不備でもあったかと、書きかけの書類を閉じて新着のそれを開いた。
「今朝のT紙に気になる記事発見。詳しくは後で。S」
ディーンは顔をしかめた。今日の散漫な思考の原因その1だ。T紙といえば誰でも知っているイロモノ紙だ。ディーンは売店に重ねられている一面のタイトルを時々目にするだけだが、いまだにUFOだのネッシーだのについて取り上げている。
いや、問題はそこではない。
思考の邪魔をする原因その2、コールセンターのサム・ウェッソンは、今ディーンがプライベートで顔を合わせるほぼ唯一の人間だ。忙しすぎて家族や友人と会うこともままならない生活のせいだ。キャリアアップのために転居したのだから仕方ないことではあるが。
先日コールセンター内で突然暴れ、備品まで壊したウェッソンは、当然ながら解雇になるところだった。が、その数日前たて続けに起きた従業員の自殺者が、二人共彼のブースの前後の席で、親しい相手だったことからストレス状況を配慮するということで、特に解雇を免れていた。
本人は辞める気満々だったようなので、会社の温情にも「フン」と鼻を鳴らしただけだったが。
サム・ウェッソンとの大して長くもない付き合いから(むしろ会ったばかりと言ってもいい)今までにわかったことは、学歴がない割りにクレバーな思考回路を持った男だということ、優しげな顔で恐ろしく短気で激情的な一面があるということ、デスクワークのくせに驚くほど鍛え上げた身体をしているということ、そして彼と夜、自宅では会わない方がいいということだ。緊急の用件があるときを除いて。
それを強制的に学ぶことに なった時のことを思い出し、ディーンは微かに身震いした。
彼を今呼ぶのはだからだ。誰が聞いているわけでもないのに、言い訳する。
ごく短い返信を送ると、5分後には軽いノックをして、サムが部屋に入って来た。何も言われないうちにドアを閉め、ご丁寧に鍵までかける。体格の良すぎる長身に、窮屈そうなサポートセンターの黄色いポロシャツを着込み、眉をひそめるディーンに口元でちょっと笑った。
「呼んでくれると思わなかった」
続く
・・人様にタッチする予定だったので、本当に適当だ・・・気力があったら続きます。