場面その1、モーテルなら
調査中の二人。ディーンは紙媒体、サムはパソコン。
ディーンは地図と資料なんかを見比べながら、新聞の日付を見て、(あ、今日誕生日か)なんて思うんだけど、誕生日に何も無いなんてウィンチェスター家では当たり前。なので何も言わない。
去年はリサとベンと一緒にパーティをした。ケーキに名前が書かれて、ベンが手書きのカードをくれたり、二人からだ、と男性用の小物をくれたりして、あとからリサに
「ベンが大人の男の人にプレゼント選ぶなんて初めてで、凄く迷ってたのよ。でも嬉しそうだった」
なんて言われて、ベンのことをしみじみ可愛いなあと思ったりした。
「こんな誕生日信じらんねえ」
と言ったら、
「そのうち飽きるわよ。バリエーションなんてないから」
とリサが横で肩をすくめて笑った。
結局あれはイレギュラー極まりない年だった。
そんなこと考えつつ、地図をにらんでると、サムが
「ディーン、このファイルパスワードがかかってる」
なんて声をかけてくる。誕生日をパスワードにしてたので、
「0124だ」
と答えると、サムは肩をすくめて
「ハッ、誕生日?分かり易すぎてリスクが高いよ」
なんて言いながら打ち込む。それから今日の日付に気づいたみたいにちら、と視線を寄こす。ディーンは無視。なにも無いのは慣れてるけど、何にも思ってない相手から、しかもサムからは何一つ言われたくなかった。サムはディーンの顔をちょっと見てるけど、結局何も言わずに作業に戻る。
地図にしるしを付けながら、昔のサムを思い出すディーン。
喧嘩した後、ぷいっと出て行った後の机に置かれていた小さな包み(中身はきっとちょっとした文具くらい)、
二人で父親を探している頃、バーで急に、
「あー、えっと、ディーン誕生日だろ?おごろっか」
と言われて、くすぐったさのあまり
「お前の(偽造)カード使うのか?俺が稼いだ金で払うのか?」
と言ったら本気で腹を立てられたこと、
これで最後だと思っていた冬の日。やたらと朝から気を使いつつ思いつく限り祝おうとして、使ってるところを隠そうとして更に挙動不審になっていたサム。ハイテンションではしゃいでみせた自分。
追憶にひたって(手が止まって)ると、サムが
「また別のパスワードがかかってる」
というので
「0502」
と言うと、
「今度は僕の誕生日?安直だね」
と肩をすくめて作業続行。そのうち結果が出たらしく、
「わかった、ディーン。ちょっと来て」
なんて呼ぶ。ディーンは見てるだけだった資料を脇に寄せながら、パスワードを二つとも変えて、二度とあの二つの数字は使うまいと心に決めるのだった・・・
ちゃんちゃん!
・・・あら?ねたのはずがなんだか途中から妙な記述に。まあいっか。
場面その2 バーなら
(S6で2つも考えるのか貴様ーーーっ! すみません、マイブームなんですお代官様、勘弁して下せえましーー)
バーで飲んでる兄弟。
ウェイトレスに「誕生月の人は1杯サービスがあるのよ」なんて言われて「へー、俺誕生日」なんてニヤニヤしてる兄。鼻で笑いながら別のウェイトレスと視線を交わしてるサム。
「ハッピーバースデイ」
チラリと見てサムが言うと、
「ありがとよ」
とディーンがそっぽを向いて言う。サムがどうでも良さそうに
「一杯おごろうか」
と言うと、
「一杯じゃなくて一晩一人になりたいね」
と兄貴。サムが、
「誕生日じゃなくてもそんなのいつでも・・」
と言いかけると、
「目は離さん」
と言い切る兄貴。なんだか険悪な雰囲気にディーンの前からウェイトレスが離れる。サムが、
「いい案がある」
ディーンが「?」と振り返ると、サムがさっき視線を交わしてたウェイトレスの腰に手をまわしながら、
「僕は一晩悪さしないで大人しく彼女といるからさ」
と、立ち上がる。きっと振り返ったディーンが
「おい」
と止めかけると、サムが
「用があったらここにかけろ」
と、コースターの番号を渡す。なんのことだと眉をしかめるディーンに、
「彼女にかけて、僕が出れば安心するだろ」
と笑ってウェイトレスと出て行く。
睨みつけつつ、諦めてふう、と息をつくディーンに、戻ってきたウェイトレスが
「ハッピーバースデイ」
とグラスに酒を注いでくれる。1フィンガーかと思ってたら3倍くらい注いでくれて、
「気前がいい店だな」
とディーンが意識して明るく感心すると、
「気を落としてるみたいだから。恋人?」
なんて言われて、
「はあ?」
となると!
最後は恋人疑惑ねたにするよりも、黙って注いで終わりの方がいいかなあ。もやもや。
どっちにしても不幸な兄貴よ。
場面その3 狩りの途中の廃屋 ってのもいいなあ!・・・・でもきりがないからやめます。
ちなみに弟が呪いの真っ最中(まだ一線越えてない)ふーふだったら、
朝、コーヒーの香りがして目を覚ますディーン。
サムは最近毎日コーヒーを淹れるので、それ自体は珍しくも無いけれど、なんだかやたらと近い。
「?」
目を開けると目の前にカップ。
カップを持ってる手から腕、肩、となぞっていくと、笑っている顔に行き着く。
「ハッピーバースデイ、ねぼすけさん」
寒いことしやがるなあ、と思いながら起き上がり、カップを受け取る。ふと、窓を見るとまだほの暗い。
「何時だ?」
「6時半」
「なんだそりゃ!? どこのじじいだお前、なにがねぼすけだよ!」
と怒ると、サムは怒らず、
「ごめん。5時に目が覚めて寝顔見てたからつい」
なんて言っちゃったりして、兄はあああああ寒いなあこいつ。とざわざわすると。
でも受け取ったコーヒーは香りが良くて美味い。弟は呪われているけど機嫌良さそうに微笑んでる。
ぼーっとしてると目尻と頬にキスされて、
「今日は狩は休んでケーキ買いに行こうよ」
なんて言われたりして、
「ケーキよりもパイがいい」
なんて言ってみたりして、いつの間にやら笑ってるディーンなのでした。
・・・・とかとか!!! おおおおお、見事に幸せ度が違うな。
うん、当日なにもできないかもだから、今月は24日まで思いついたら「兄貴、誕生日おめでとうキャンペーン」を張ることにしよう!
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