W家に居候する陰気な顔の天使は
「敬意を払え」
というわりに、なにをするわけでもなく毎日ぶらぶらしています。
しかもある日ディナーに来たお隣りにぶらぶら広げた羽根を見られてしまいました。
「大丈夫記憶を消すから。」
お隣さんの額を指先でちょん。
「…………」
「どしたキャス?」
手違いで余計なことまで消えた模様です。今回は残念なことにお隣さんがジョンにカードで負けて最高の釣り道具を譲る約束をした部分が消えました。
「天使なのになんでそう手違いが多いんだよ」
「実はガーディアンとして地上にとどまることに力の大半を…」
「意味ねーじゃん!」
お兄ちゃんは思ったことをすぐ口にしすぎるので、良くトラブルを起こします。
「………(怒)私が君達の20㍍以内にいることで君達の幸運度、守備力共に30%upしている。」
どこのカードゲームだ。
「幸運度が上がっているにしてはソフトボールもボロ負けだし、釣りの調子も悪いんだが。」
とジョン。
「私から20㍍以上離れたから効果が薄いのだろう。」
「よし!それじゃあこれからソフトボールと釣りの時にはキャスに付いてきてもらおう」
「マムも行かないのにキャスがぼーっと付いて行くのって変じゃねえ?ホモと思われるぞ」
「変だよ父さん」
芝生の上に無表情にたたずんでジョンを見つめる陰気な男を想像して息子達が止めます。
「…よし!それならキャスには姿を消して付いて来てもらおう」
「今の私に姿を消す力は無い」
「本当に意味がないね!」
末っ子は本来優しい子なのですが、必要ないのに毎食食べる天使に大して、月末近くなると当たりが厳しくなります。
しかし、ジョンはしぶとい男でした。ソフトボールを諦め切れません。木を隠すのは森の中。男を目立たなくするには男の中。
そういうわけで息子達はせっかくの日曜日に文句たらたら、天使ともども父親のソフトボール観戦に駆り出されるのでありました。
ちゃんちゃん
[9回]
PR