兄が狩りに戻る。
シェイプシフターの件がハンター側の惨敗で終わったこと、アルファの存在を知ったこと。
何が決め手だったのかは分からない。
だが何にせよディーンはあの家を離れた。齟齬は修正され、結果としては予測どおりだ。
サムは薄く笑った。
やっとあるべきように物事が進む。
サムの笑いに反応するように女が笑う。
その勘違いを修正する必要は感じなかった。
サムの下でうねる白い身体。
シェイプシフター狩りの前に買った女は一時間も持たずにサムを罵り飛び出して行ったが、今日の相手は良い。
サムの要求に何度でも応え、むしろ回数を重ねるごとに溶けて行く。
違いの原因はなんだ?
サムは数秒考え、ほどなく答に行き当たる。
単純なことだった。相手の反応に少し目をやり、合わせてやっているからだ。この間の相手は正直髪の長い女だったこと以外覚えていない。
相手を観察し、合わせてやる。
祖父と対する時に、その必要性を感じたことはない。
サムには目的への最短ルートが見える。それに祖父が異議を唱えることはなかった。
だが兄相手にはきっと必要になるだろう。
考えるだけで面倒そうだが、多分、この1年で“足りない”と感じ始めた自身の違和感を修正するヒントはそこにある。
シーツに広がる黒髪。
確か兄が1年暮らしたリサもこんな髪の色をしていた。この間の女もそうだった。
手を延ばして髪を撫で下ろす。またその身体が震え、なにか言いながらのけ反った。
見開かれた目はヘイゼル・グリーン。
あるべき流れに従うその色を、今は穏やかに見返してやれる。
リサの髪、ディーンの目。
兄はリサの家を離れた。明日はここへ来る。
反応を観察し、合わせること。
サムはまた自分が笑ったのを自覚する。
白い腕が強く首に絡みついた。
お前に笑ったわけじゃない。
訂正しかけて止める。
兄が来るのは明日だ。
近づいてくる黒く古い車の映像を頭の中で処理済みフォルダに放り込み、サムはもう一度目の前の身体にのしかかった。
END
3話冒頭でおねーさんにお金払いながら「次は仕事抜きで」と言われてるサミーですが、実は兄ちゃんが戻るので機嫌よかったおかげでおねーさん受けが良かったんだったらおかしいよね!
そして本人が最中に兄ちゃんのこと考えてたらさらに可笑しいよね!
・・・という、ただそれだけなんですけど。